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マリー・ホープ「シリウスコネクション」荒俣宏訳

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 はい、トンデモ本です。主にエジプトにおけるシリウス信仰について考察が書かれており、以前採り上げたドゴン族に関する記述も出てきます。

 エジプト学についてはかなり参考になる部分もあるだけれども、結局は飛躍してアトランティス人や、シリウス星人との接触に結論付けられてしまう。別にアトランティス人や異星人でなくとも充分なのに、です。
 天文学的にシリウスを重視することが、どうしてシリウス星人へと繋がるのか、何度読み返してみても全く理解できないのですが、著者はロバート・テンプル「シリウス・ミステリー(邦題:知の起源―文明はシリウスから来た)」に傾倒しているらしく、そこで思考が停止してしまうらしい。
 オカルティストにとって、エジプト人がアトランティス人またはシリウス星人と接触したことは信仰にまで近いらしいですが、シリウスは連星であるため、知的生命の苗床となる地球型惑星の生まれる確率はゼロと言っていい。連星の周囲を回る惑星は軌道・引力関係が不安定になるため、地球のように安定した気候を維持することができない。周囲を回る惑星はシリウスと衝突するか、はるか遠くへ飛ばされるか、の運命です。従って、シリウス星人というのはまずあり得ないわけです。
 しかし、エジプト文明が外部からもたらされた、という考察は一考の価値があります。アトランティスがどこにあったか、実在したかはともかく、エジプトへ訪れた人々が金髪と青い眼を持った白人であれば、神々と崇められてもおかしくはない。トト神や、イシス神、オシリス神らは外部から文字や芸術、銅の文明をもたらした神様だったわけです。これはエジプトの歴史と照らし合わせてみても、そう違和感はない。日本の渡来人文明と全く同じ歴史構造です。また、日本でも素戔嗚尊を朝鮮人=渡来人とする考え方もあるそうです。
 後年、エジプトよりも敵国のヒッタイトの方が鉄器文明で優れることになり、現在では先進国に較べるとかなり立ち後れている。高度な文明が分布する地図というのは、奪ったりもたらされたりすることで、時代時代によって全く異なった様相を見せるもののようです。
 そんなわけで、“トンデモ”と“異常な飛躍”の部分さえ除けば、それなりに参考となる本です。ただし結論が飛躍しているのと、考察が薄いこともあって、“トンデモ”が無かったら、それこそ本当に問題とされないような内容ですけれど。

Posted at 2006/08/10(Thd) 23:26:44

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