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x51.org;人類逆進化説 ― “四足歩行する家族”を巡って議論に

 発表当初、周囲から猛攻撃を受けるのはカオス学やウェーゲナーの大陸移動説などを見ても、科学の世界では極々よくある風景。相当有力なコネがあれば別だが、大抵の“新説”または“珍説”は袋だたきに遭うのが一種の通過儀礼のようである。――尤も、そのような烈しい議論の応酬がよりよい研究結果を生むのであって、何もかもがスムーズな議論というのは、あまり成長を見ないようである。

x51.org;人類逆進化説 ― "四足歩行する家族"を巡って議論に
 
 さて、これはなかなか面白い。人間はなまじ精神活動が発達している分、奇行は片っ端から“精神障害”と片づけられてしまいがちだが、記事を読んでみると実にありそうな話だと感じた。一見すると、放置児または社会的隔離児にありがちな精神的・身体的障害にも思えるが、写真を見る限りは一般的な社会と隣り合った生活をしており、あまり考えられない。また、19人という大家族であり、仮に親から放置されていたとしても、子供同士で多人数の人間関係を維持できる環境にあり、単純に精神障害であるとはあまり考えにくい(実際、一人っ子の多い先進国なら重度の精神障害を与えるような放置の仕方をしても、大家族の貧困家庭の場合は発病しにくい)
 また、精神障害ならば一個人に拘わるものであって、それが一家族に集中しているのは、遺伝的可能性を高めていると思う。例えばダウン症は、一見精神障害のようにしか見えないが、実際には染色体の異常が原因。ウィリアム症候群なども一見すれば精神障害だが、やはり遺伝病である。
 他生物と人間との遺伝情報を引き比べると、人間は蠅と大差無いそうだ。ほんの些細な違いが、蠅であるか人間であるか、を分断しているらしい。
 現代では、ダーウィン式の進化論よりも、突然変異説の方が圧倒的に支持されている。ミッシング・リンク――中間種の痕跡が見つからないなどの理由が大きい。キリンの頸の長さなど、中間種が生き残ることさえ難しい例は考えてみるまでもない。ある日突然新しい種が生まれたのだ、と考える方が自然な例が非常に多いから。

 ただし、リンク先で挙げられている二足歩行は、遺伝により自動的に可能となるのではなく、実際には“習得”することで人間は身につけることが出来るものである。
 もちろん“原始歩行”というものがあり、生後間もない赤ん坊を地面すれすれに抱き上げると、歩行を始めるというものはある。しかしそれは生育の途中で一旦すっかり忘れてしまって、ハイハイから段階的に習得していかなければ二足歩行が可能とはならない。社会的隔離児など習得が不可能な状態だったり、周囲で正しい二足歩行を実演してくれる者がいなければ、決して正しい二足歩行には辿り着けない(なら、先天的盲目の人はどうなるのだろうか)
 社会的隔離児は、身体的・精神的に二歳程度でも実年齢は六歳くらいであったり、生育が予め定められたものでなく、後天的な要因が非常に大きいことを示す。そうした事例に触れていると、遺伝というものを見失いがちになる。人間の生得的と思われていた行動は、訓練によって出来るようになり、遺伝的要因とは違うのではないか、と。
 例えば、人に飼われている犬が突然二足歩行を始めたり、あたかも言葉に似たようなものを発声したりするというが、それらは別に遺伝的に決められていたことではない。しかしペットが“本当に”二足歩行で生活をしたり、言葉を話したりすることはない。あくまで擬似的なレベルに留められるのは、遺伝的に組み込まれていないからである。
 もしこの研究が極端な後天説によって反駁されているとしたら、それは最も初歩的なことを忘れた議論だと言っていいと思う。

――後天的遺伝変異の可能性について
 動物や人間の一生のうちにも、遺伝子は一定のものではなく、変異していくという(尤も、そうでなければダーウィニズム自体が成り立たないが)。強い心的トラウマによって精神病を発病した者同士が結婚すると、子供もまた同様の精神病を発病しやすい性質になるという(もちろん、あくまで環境のせいだとする説もあるが)。両親の精神的・身体的特徴が子供に受け継がれていくためには、遺伝子も少しずつ変異しなければならないのである。
 記事にある患者らが、極度の精神的打撃によって、二足歩行を司る部分の遺伝子が壊れてしまった可能性は全く否定は出来ないと思う。もしそうだとすると、考え方を根本から180度変えなくてはならくなる。もはや、わけが解らなくなってしまうが。

 さて。あんまり“トンデモ科学”の肩を持ちすぎるのもどうかと思うが、科学の分野とはめいめいが自分の領域で勝手なことを言い合っているばかりの世界だ。ほとんどの科学者は既成の知識、広く証明済みの知識を暗記して、ただ並べ立てるだけだが、本当の科学者に最も必要なのは創造力である。まして現代科学を形作っているのは、それこそ“トンデモ科学”であり、トンデモトンデモと何んでもかんでも排斥していては、現代科学は全く進展しない。むしろ“トンデモ”でない科学は今更やる必要も、意味もない。昨日までのトンデモが今日の常識となるのは、現代科学では日常的な光景である。そのことだけは忘れないでおきたい。

Posted at 2006/03/01(Wed) 22:31:41

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この記事へのコメント

 

X51からトラバで来ました.
Tan氏の論文,その後もでているようです.
アブストラクトしか見ることができなかったのですが,
その後別の四足歩行をする少年に関しての論文も出したようです.
彼の場合,親族にそのような行為をするものはおらず,
精神知能面での問題もなく,著者は同シンドロームとは
結論づけなかったようですが.

Posted by X51WristWalker at 2007/03/04(Sun) 19:44:48

 

コメントありがとうございます。風邪で一週間ほど惚けていました。

 人間の歩行は遺伝子に組み込まれたものといいますし、精神的に問題がないとすればやはり遺伝上の問題と考えるのが自然でしょうね。
 とにかくわからないことが多すぎますし、間違った先入観を抱いたり、決めつけたりしないように、自分でも気を付けていきたいです。
 論文はぐぐってみます。情報ありがとうございます。

Posted by 紫陽 at 2007/03/09(Fri) 13:47:31

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