内訳:
ドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟1」亀山郁夫訳:760円
村上春樹「風の歌を聴け」 講談社:400円
村上春樹「羊をめぐる冒険 上下」 講談社:1,000円
村上春樹「1973のピンボール」 講談社:210円
村上春樹「回転木馬のデッドヒート」 講談社:210円
村上春樹「ノルウェイの森 上下」 講談社:210円
村上春樹「羊男のクリスマス」絵:佐々木マキ 講談社:210円
村上春樹「海辺のカフカ 下」 新潮社:400円
森博嗣「女王の百年密室」 新潮社:820円
ニュートン11月号 燃料電池 :980円
高橋たか子「墓の話」 講談社:図書館
合計6冊 :5,200円
ドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟 1」亀山郁夫訳 光文社
文章が違うだけで、すらすら読める。
本当に挫折したものと同じ本なのかな、と疑ってしまう。もちろん文章ばかりでなく、「カラマーゾフの兄弟」の内容自体に独特のムラがあるせいもある。面白い部分、つまらない部分の波がドストエフスキー作品の中でも特別大きい。
この作品のトーンが落ちたときに難解な文章表現が登場すると、眠くてかなわないものだが、亀山郁夫訳ならば挫折しにくく、無理なく読了することも可能だろう。
行変えが少ないので、真っ黒なページにアレルギーのある人にはとっつきにくいかもしれないが、いざ言葉を追ってみれば洗練された言葉のリズムに難なく乗せられるはずである。
もう一つ、この本の親切なところ。しおりに登場人物の一覧が載っている。
特にロシア人名は父称や愛称まで覚えなければならないので、なかなか苦労させられた憶えがあります。
村上春樹「風の歌を聴け」 講談社
芸が効いていてインパクトが凄く、野心もある。他の純文学作品と較べてみると、かなり斬新なデキである。これで芥川賞取れなかったのには、どこか疑問を感じる。
後述の「羊をめぐる冒険」よりも、こちらの方が私は面白く感じた。読者が何を求めるかで、小説の面白さはそれぞれ違ったものになる。私の場合、ウィットや気の利いた言葉といったものは、あまり求めていない。
村上春樹「羊をめぐる冒険」 講談社
これは面白い。物語性が高く、読んでいて飽きない。なかなか凝った作りになっていて、野心も感じさせる。
私は何んとなく夢野久作をイメージしてしまった。もちろん、春樹の世界にグロは無いが、作者の作った陰謀の世界に、登場人物達が巻き込まれている姿は、思わずイメージを重ねてしまった。
お話としては前述の「風の歌を聴け」の続編であり、しかもドラマの足取りがかなり逸れていく部分が含まれていくので、読書中、迷子になってしまった。耳の素敵な彼女の存在も忘れてしまい、軽い記憶の混乱が発生した。これは弱点というほどのものではないが、物語を組む上では、気を付けなければならないことかもしれない。
一体何があったのか、ブックオフが久々に春樹まつり状態だったので、まとめて購入。普段、村上春樹の棚はガラガラなので、これは運がいいのかもしれない。
村上春樹・佐々木マキ「羊男のクリスマス」 講談社
これは絵本。
絵を見て話を決めると言った村上春樹に対し、佐々木マキは『灯台の近くで眠っているクジラの絵』と『等身大のテディ・ベアが女の子とたわむれている絵』を描いて送ったそうだが、それに対する回答が羊男だったのには、笑いが止まらなかった。さすが村上春樹、という気持ちにさせられる。小説でよく見掛ける、あのシニカルな比喩が頭に浮かんだ。
他の作品についてはまだ未読。春樹作品は斜め読みができない。面白いからしっかり読み込んでしまう。
森博嗣「女王の百年密室」 新潮社
メフィスト系の作品はなかなか面白いものが揃っている。この「女王の百年密室」はミステリー要素は弱いが、その分ドラマティックに仕上がっている。
別の言葉で言おう。純エンターテイメントミステリーとしては弱いのだろうが、それだけに読んで面白い。
文章の細かい部分における妙な粗さ(というよりも、投げやりさ)は、理系ということで仕方ないか。
最近の森博嗣の作品は以前までの作品と較べるとやけに評価が低いが、メフィスト賞第一回受賞者として、その登場があまりにセンセーショナルであったための反動かもしれない。こういう、手駒の斬新さで魅せる作家というのは、手駒が尽きたときには辛い運命が待っている。作者の“ひきだし”がどれだけ沢山あるかで、作家としての寿命は決まってくるかもしれない。
また、エンターテイメントは執筆する上で、作者と読者との年齢差が壁となる場合もある。森博嗣もそろそろ50歳。作家としては脂の載ってくる年齢ではあるが……
ニュートン11月号 燃料電池
冒頭はハッブル宇宙望遠鏡が捉えた映像の特集。
燃料電池の発電効率は80%もあるそうだ。現在の火力発電では35%ほど。無駄を失くすためにも、なるべく早い普及が望まれる。
現在は水素の生成に化石燃料が用いられているが、将来的には水力発電や風力発電にで生まれた電気によって水を電気分解して水素を生産。さらには(未知の)光触媒によって水から水素を分解する方法が考えられているそうだ。
そうなれば、脱化石燃料も夢ではないということになる。燃料電池そのものは、既に実用段階には入っているそうで、モニター実験まで行われているらしい。コスト面の問題が最も大きい、とのこと。
他には冥王星の話も。冥王星の衛星カロンは、冥王星の二分の一ほどの大きさもあるという。地球と月の比どころではない。不思議な星だ、と思う。
高橋たか子「墓の話」 講談社
図書館で借りた本については、こういう形で紹介しないことにしているのだが、一つのアーティクルを確保するほどのネタが無かったので。
5篇の短篇が収録されているが、1、5話はドキュメンタリー。事実が書かれているのだから仕方ないのだが、このドキュメンタリーがつまらない。泣きたくなるほどつまらない。斜め読みにしたせいか、何が書いてあったのかまったく思い出せない。
面白いのは、第3話、第4話。
第3話は墓守が見せてくれた、死んだ者のノート。そのノートには、その墓守の名前が書かれており――。
特に第4話は手紙のやり取りを扱うものだが、特殊な話であるし、文学としての芸術点も高い。
第2話は着眼点が面白いが、中だるみ気味。
少し古臭い表現やワンパターンな部分もあるのだが、物語性の豊かな作家なので、読んで面白いことは間違いない。
Posted at 2006/10/04(Wed) 21:08:02
文学・歴史・民俗学 | コメント(3) | トラックバック(0) | この記事のURL
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