I teie nei e mea rahi no'ano'a

文学・芸術など創作方面を中心に、国内外の歴史・時事問題も含めた文化評論weblog

7,8月に買った本


内訳:
唐代伝奇 明治書院           :1,050円
アガサ・クリスティー「アクナーテン」早川:630円
スティーブンソン「二つの薔薇」     :420円
スティーブンソン「宝島」新潮      :540円
ニュートンムック 相対性理論      :1,995円
ニュートン9月号 惑星科学の最前線   :980円
ニュートン10月号 周期表        :980円
合計6冊                :6,595円 


toudai.jpg


「唐代伝奇」内田泉之助・乾一夫訳 波出石実編 明治書院
 中国における小説の出発点とでもいうべきか。それまでも確かに物語は存在したが、あくまで民話や実体験であったり、あるいは実用的であったりした。しかし“伝奇”は違う。全く実用性がなく、しかも内容は空想の産物に過ぎない。
 しかし、それこそが小説であり、後に数多くの有名作家達が下敷きとすることになるのである。

----(追記)----
 思わず知識で語ってしまったが、しかしよく考えてみれば、これは歪曲された歴史であろう。
 物語の発生を考えてみれば、容易である。以前ドゴン神話を採り上げたことがあったが、神話も昔話も、皆素朴な作り話である。中国だけが例外のはずがない。
 孔子が「怪=怪奇現象」「力=暴力」「乱=性交」「神=宗教」を嫌ったために、儒教が中国で広まったとき、空想による物語が一度抹殺されてしまった可能性がある。

 知識は危険なものでもある。
--------------

hutatu.jpg


「二つの薔薇」スティーブンソン 中村徳三郎訳
 原題は「The Black Arrow」――そのまま直訳するなら「黒き矢」。こちらの方が普通に格好良い。
 しかしこの作品、訳文がまずい。岩波はたまにこういうことがあるので、怖い。旧字体というのはともかく、ごく一般的な用法なら回避できる部分で妙な言い廻しをして、同じ助詞がずらずらっと並びがち。原文と引き比べてみても、そんな奇妙な言葉遣いになるはずはないのだけれど。これは時代もあるのかもしれない。昔の翻訳は必要以上にべらんめ調が多いものである。(笑) 私は海外文学といえば、すぐにべらんめ調が思い浮かんでしまう。これはちょっと変な気がする。
 現代でこそ、解りやすい言葉を用いるようになったが、ほんの数十年前までは難しい表現を用いるのが一般的だった。特に翻訳家や小説家の出番が少なく、主に学者が訳していた。人間は模倣する生き物なので、海外の名作を読み込んでいる人ほど言葉遣いがおかしいこともあるくらいである。(笑) 高校生くらいで簡素・流麗な文体を持つ人は、よっぽど要領がいいか、現代小説しか読んでいないのかもしれない。新井素子がバカを「莫迦」と書いたりしていたが(恐らく太宰治の影響)、そういう可愛らしさがないと、信頼できない。読書経験はどうしても文章から滲み出てくるものである。
 話が逸れたが、他に登場人物の名前で、明らかにダニエルと書かなきゃならないところ(何しろ、ディックがオリヴァの手紙をダニエルへ届ける場面で、オリヴァはその場にいないのだから)がオリヴァになっていたり、なんだか杜撰。

 既にスティーブンソンの作品は著作権が切れて公共物となっているので、自分で翻訳しようか。それを適当に設置しておけば、データベースとして必要な人の役に立つかもしれないし。

takara.jpg


「宝島」スティーブンソン 佐々木直次郎・稲沢秀夫訳
 一方で「宝島」の悩みは、必要以上に簡単にされすぎること。子供の知能を見くびりすぎているのか、言葉遣いを変えすぎたり、難しい部分をカットしたりあまりに簡単な翻訳が出ているが、やりすぎは良くない。親が我が子をみくびってどうするよ、と思うけど。
 元々子供向けの雑誌に掲載されていた作品で、原作に忠実であるのが基本。このくらいで充分だと思うが、それで通用しないなら、人間の知能が退化しているということになる。ある程度完成された文章を読むのでなければ、読書なんて何んの意味もない。
 ただし、スティーブンソン自身は子供向けのつもりで書いたわけではないし、子供向けの作家と見られることをいやがっていたらしい。

akhnaton.jpg


「アクナーテン」アガサ・クリスティー 中村妙子訳
 戯曲。表題だが「イクナーテン」または「アクナートン」の読みが一般的ではないか、と思う。何しろ綴りが「Akhnaton」なので、英語読みをするならば、どう見ても「アクナートン」が正しい。
(なんか自信無くなってきたので。古代エジプト語でももう少し勉強しますか)

akhnaton2.jpg


 アマルナ・ミステリーはとにかく謎だらけで面白い。小説家の入り込む余地は、今でも充分にある。ただ、科白がちょっと芝居臭すぎることが難点か……。


soutai.jpg


ニュートンムック 相対性理論
 カテゴリ違いだが、例によってこちらで紹介する。これ以上解りやすい相対性理論本は、恐らく他に存在しないと思う。さすがに計算は書かれていないが、かといって厄介な部分が伏せられているというわけでもないので、入門用には最適。

soutai2.jpg


 相対性理論も、図で示されれば、ニュートン力学よりも理に適った、ずっと解りやすいものである。

soutai3.jpg

newton0609.jpg


ニュートン9月号 惑星科学の最前線
 すっかりニュートン読者にさせられたような気がする。どうするかいつも迷うのだが、結局興味が優って買わされてしまう。解りやすいイラストによって感覚的に理解できるのが、何よりも楽で良いのである。
 また、文章とはその性質上“勘違い”を起こしやすいものだが、そういったアクシデントも、この雑誌では極力起こらないように努力されている。
 さて、内容についてだが、大体このような感じである。

newton0609_2.jpg


 月は地球にとって大きすぎる衛星であり、一体どうやって生まれたのか未だに完全決着とはいかない模様。最も近い天体のことすらまともに解らないのが宇宙科学の現状である。
 他に、ガス惑星はなぜガスを纏うことができたのか――など。火星と木星の間には隔てた壁は何んだったのか。火星と木星の間は小惑星帯になっているが、そこを境にして太陽系の内側は岩石惑星、外側はガス惑星、と区別されている。また、境界となっている小惑星群が惑星へと成長しない理由は? などなど、考えると不思議はつきない。

 なお、今回は仮説や通説は書かれているが、明確な答えが書いてあるわけではない。

newton10.jpg


ニュートン10月号 周期表
 巨大周期表でかすぎ!

newton10_2.jpg


 身近にあるものについて色々知ることができる。1g辺りの単価も書かれているので、ちょっとしたトリビアにも使えそう。
 永久磁石(ネオジム、他)など、人の周囲にはよく知らない物質が当たり前のように存在している。HDDの記憶媒体にはルテニウムなど。その正体を知ると、なんだか少しすっきりしたような、不思議な気分になる。

newton10_1.jpg


Posted at 2006/09/10(Sun) 18:39:34

文学・歴史・民俗学 | コメント(2) | トラックバック(0) | この記事のURL

この記事のトラックバックURL ->

↑ページの先頭へ

この記事へのトラックバック

「7,8月に買った本」へのトラックバックのRSS

この記事へのコメント

唐代伝奇
「怪力乱神を語らず」とか言うし、詩文は紀元前からもてはやされてた訳で、
唐代でようやく、と言うのならば、また儒教かっ!って感じ。

そんな、蒼天航路好きで儒教嫌いの戯言。
まぁ、よく知らないんだけどね…。どんどん馬鹿になってるからw

Posted by ありま at 2006/09/11(Mon) 16:50:22

フィッシング詐欺

なるほど、そう言われてみればそうですよね。一旦葬り去られる形で、歴史が歪曲されていたのでしょうな。そして私はまんまと釣られたわけだ!
 これからは儒教も歴史学者も信頼しないことにしよう。(笑)

>どんどんばかに
ああ、それって私もだわ。(笑)

Posted by 紫陽 at 2006/09/11(Mon) 18:28:48

名前

E-mail(※スパムトラップですでの何も書かないでください)

コメント


コメント本文以外は全て入力不要です。

7,8月に買った本へのコメントのRSS