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5,6月に買った本(漏れ分)「志ん朝の落語2」「世界名画の旅5」

 前回のリストから、「志ん朝の落語2」と「世界名画の旅5 ヨーロッパ北部編」2冊が抜け落ちていた。まずはこの二つについて書いておく。

「志ん朝の落語2」 ちくま文庫

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 落語本で嬉しいのは、一つの噺が比較的長く収録されていること。普通、落語といえば、噺は途中までで終わるのである。壮大な『怪談牡丹燈籠』はもちろんのこと、「居酒屋」のような小品でも時間の都合などから、噺の途中でサゲが来る。もちろんそれはそれで愉しめるのだが、やはり噺は最後まで知っておきたいものである。ただし、その噺家の一番長いところまでで、噺そのものの最後まで収録されているわけではないのだが。
 また、解説も有用である。何んといっても、古典落語には言葉の壁がある。現代人にとってはやはり解説が無いと、どうしても理解に苦しむ場面が出てくる。
 今回の本では「唐茄子屋政談」の噺が気になって購入した。普通、高座で噺をする時には、このうちの“政談”の部分はそっくりカットしてしまう。落語にはネタバレという概念が無いので(同じ噺を何度聞いても愉しいのが落語である)、一つあらすじを紹介してみる。
 道楽が原因で勘当された若旦那が、餓えの苦しみから身投げをしようとしたところを親戚の伯父に助けられる。勘当を解くために、伯父は若旦那に唐茄子(かぼちゃ)屋をさせるわけだが、若旦那は往来のど真ん中でへたばってしまう。運良く通りがかった江戸っ子のお蔭で唐茄子はほとんど捌けてしまう。どうにか残り二つになったのだが、売り声が巧くできない。
 そこで、人のいないところで売り声の練習をはじめたのだが、そこは吉原田圃。女とのやりとりを一人でぶつぶつやりながら「えェ、唐茄子屋、唐茄子ー!」ってひどい稽古があるもんで。
 普通は、ここで終わりである。しかしまだ続きがある。この若旦那、ようやく売り声の練習を終え、誓願時店の貧乏長屋を通り過ぎたとき、一人の女から唐茄子を一つ買って貰う。若旦那は唐茄子を一つおまけする代わりに弁当を食べようするのだが、その女の5、6になる息子がそれを見て、ご飯を食べたい、と言ってきかない。そこで若旦那、男の子に弁当をあげてしまう。
 女から話を聞くに、元は武士だが、上役の過ちを正そうとしたがために浪人になってしまい、親類を頼って今は小間物の旅商いをやっている。しかしこのところは商売が巧くいかないのか、送金がぷつり途絶えてしまった。そのことを聞いて若旦那、唐茄子の売り上げをすっかり女と男の子にくれてしまった。
 逃げるように伯父の家に引き返した若旦那だが、伯父からは売り上げ金を遊びに使ったのだろう、と疑われる。そこで再び貧乏長屋を訪れたのだが、長屋中の者が集まってどうも様子がおかしい。話を聞くと、あの女が梁にぶら下がって首つりをしていたのだという。
 幸いまだ息がある。そんなことになった理由を問うと、こうである。若旦那にお金を返そうと追いかけた女だが、運悪く大家に出くわした。その大家は若旦那から貰った金をそのまま奪ってしまったのである。どうにかして店賃は納めますから――と頼んでも戸を閉めてしまって聞いてくれない。さらに戸の前ですがるり続けたが無駄である。そこで申し訳なく、首を吊ったらしい。
 それを聞くやいなや、若旦那は大家の許に乗り込む。すると、大家はちょうど飯を食べているところであった。若旦那が剣幕をあげても平然としている大家に対し、若旦那は薬缶を投げつける。
 その後、この件は奉行所の知るところとなり、大家はきつい裁きを受けたという。

 他に「子別れ・下」「井戸の茶碗」「刀屋」「百年目」「おかめ団子」「火事息子」「佃祭」「柳田格之進」「文七元結」の噺が収められている。

「世界名画の旅5 ヨーロッパ北部編」 朝日新聞日曜版

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 北欧・ロシアなどの絵画と、町の光景が取材されている。
 レンブラント、ムンク、フェルメール、ドレスデンらの他、ネロとパトラッシュの銅像も紹介されている。あくまで現在の視点から見ているところが、この本の面白いところだろうか。

Posted at 2006/07/05(Wed) 22:26:50

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