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文学・芸術など創作方面を中心に、国内外の歴史・時事問題も含めた文化評論weblog

第101回文學界新人賞



 受賞作:中山智幸「さりぎわの歩き方」
 参考作:桑井朋子「退行する日々」

 金欠なので立ち読みで済ませてきたのだが、どちらの作品もつまらなかった。
 受賞作「さりぎわの歩き方」は読後にタイトルすら思い出せないほど没個性な作品で、見るべきところは無し。“今更”とも言えるくらいの『春樹クローン』。しかも内容は面白くない。新しい名詞が出てくるだけで、実質サザエさん的話と言ってもいい。読者と書き手の馴れ合いがなければ成立しない世界だ。春樹体で話がつまらないというのは致命的(何しろ、村上春樹は少なくとも話は面白い)で、とてもじゃないが長く作家をやれる人じゃない。
 参考作の「退行する日々」は最後の『字虫』のところだけが面白かったが、他は読むに堪えなかった。『字虫』とは言霊が具現化して文字のが虫に変じたものらしい。作中の言葉に『もっと心を込めて書け』ってあったと思うが、辻原登氏の作品にも似たような科白があったような気がする。家出少年へ向けて『精魂込めて手紙を書け』と。一言抜いてみただけでも、プロ作家とアマチュアの差は歴然としているが。
 
 前回は受賞作が無く、『とにかく受賞作を』という審査員の気持ちが伝わってきたような気がする。

Posted at 2005/11/25(Fri) 18:43:56

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この記事へのコメント

>『字虫』とは言霊が具現化して文字のが虫に変じたものらしい。
最近TVアニメで「蟲師」だったかというアニメをやっているのですが、まるでそのアニメ(とはいえ漫画原作)に出てきそうな虫ですね。「蟲師」はなかなか文学的・日本的な幻想物語で面白いのですが、「字虫」というのは僕はあまりピンとくるものが無いなぁ。

Posted by ス at 2005/11/25(Fri) 23:50:13

ああ、誤字発見……。よりによって引用箇所。(笑)
「退行する日々」は73歳の老婆が書いたそうで、見るに堪えないのはそこらへんの“老醜”もあるのかも。
 ――だとすると手書きでしょうから、パソコンで書いたものよりは言霊が宿っているかも。私も手書きで小説書きたいですわぁ(しかし握力がー)。
>蟲師
 なんかポスターだけは見たことがありんす。それだけ見ても面白そうだなぁ、と思ったけど。ナウシカとか色々連想したっすよ。(笑) ぇろパロで淫蟲ってありそうだなぁ、と思ったのはナイショ。多分実際にあるでしょうけど……(今の時代、片っ端から同人作家が食い物にしてますし)。

Posted by 紫陽 at 2005/11/26(Sat) 17:14:53

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