受賞作:中山智幸「さりぎわの歩き方」
参考作:桑井朋子「退行する日々」
金欠なので立ち読みで済ませてきたのだが、どちらの作品もつまらなかった。
受賞作「さりぎわの歩き方」は読後にタイトルすら思い出せないほど没個性な作品で、見るべきところは無し。“今更”とも言えるくらいの『春樹クローン』。しかも内容は面白くない。新しい名詞が出てくるだけで、実質サザエさん的話と言ってもいい。読者と書き手の馴れ合いがなければ成立しない世界だ。春樹体で話がつまらないというのは致命的(何しろ、村上春樹は少なくとも話は面白い)で、とてもじゃないが長く作家をやれる人じゃない。
参考作の「退行する日々」は最後の『字虫』のところだけが面白かったが、他は読むに堪えなかった。『字虫』とは言霊が具現化して文字のが虫に変じたものらしい。作中の言葉に『もっと心を込めて書け』ってあったと思うが、辻原登氏の作品にも似たような科白があったような気がする。家出少年へ向けて『精魂込めて手紙を書け』と。一言抜いてみただけでも、プロ作家とアマチュアの差は歴然としているが。
前回は受賞作が無く、『とにかく受賞作を』という審査員の気持ちが伝わってきたような気がする。
Posted at 2005/11/25(Fri) 18:43:56
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