I teie nei e mea rahi no'ano'a

文学・芸術など創作方面を中心に、国内外の歴史・時事問題も含めた文化評論weblog

ナドルイフ

cafe MAYAKOVSKY;
Da51. Laceration and Histeria
Da52. Some troubles

「カラマーゾフの兄弟 第二部」もついに校了のようです。
 村上春樹は「カラマーゾフの兄弟」を4回読んだそうなので、私も亀山郁夫訳で4回読破に挑んでみたいと思います。これを期に、新潮版以外の訳に触れてみるのもいいかもしれない。

 しかし『ナドルイフ』という言葉は深遠ですね。英訳にある『Laceration』を辞書で調べてみると――


  • 引き裂くこと
  • ひどく傷つけること
  • 裂傷
  • 裂け口

 という訳語が出てきました。ナドルイフは原義的には疵を意味し、そこから派生して「うわずり」のような言葉が出てくるのでしょう。
 その上で「ヒステリー」と訳すのは、意味を二重三重にかみ砕いているので、本当に勇気が要ることだと。
 結論となった「錯乱」であっても飛躍があり、かなり挑戦的です。

 このサイトでは、ときどき英語圏のニュースをかみ砕いて紹介することがありますが、重訳のニュースを嫌っているのは、これも関係しています。
 もし私が『Laceration』という単語のみを与えられていたら、せいぜい《トラウマ(疵という意味)》か《痛み》としか訳せません。
 しかし『ナドルイフ』という単語は破裂と訳されるくらい、疵そのものを意味し、むしろ精神的疵の方に重心があるわけです。だから私の訳では全く用をなさないばかりか、見当違いの方向へ行く可能性があります。

 以前私が訳に苦しんだのはドイツ語からの重訳で「back-sheet」という訳があてがわれていたこと。直訳すれば後部座席となるのですが、もちろん口語なので、暗喩が隠されています。
 この意味ですが、場面場面によって全く異なります。漠然と「後ろ」くらいの意味で捉えれば失敗しません。
 しかし特にセックス関係する場合は、直訳では意味が通じませんし、穿ちすぎても誤訳をする可能性があります。

関連:
毎日新聞書評・今週の本棚;大岡玲・評 『光文社古典新訳文庫』

Posted at 2006/10/14(Sat) 05:52:53

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