I teie nei e mea rahi no'ano'a

文学・芸術など創作方面を中心に、国内外の歴史・時事問題も含めた文化評論weblog

負けた、と思った一瞬

 勝ち組、敗け組という分類が世間では流行っているらしい。
 そこで私が心底「負けた」と思った一瞬について記しておく。

 もう十年近くも昔のことだが、コンビニでアルバイトをしていた頃、二人の男女が手を繋いで入ってきた。これ自体は全く珍しいことではないが、二人共聴覚障害者で、恐らくは近くの聾学校の生徒同士と思われた。
 別にそれも珍しいことではない。しかし男の方の醜さは筆舌に尽くしがたいほど。ゴリラ顔で顔中余すところなくクレーターに覆われ、でぶでぶと肥っている。また恐らくは小児麻痺のために装具無しでは歩くことが出来ない。
 一方、女性の方が……驚くほど美しいのである。聴覚障害者のために補聴器を付けているが、あの無粋な補聴器すら美しさを引き立てるための道具に見えるほど。
 美しい黒髪はクセ一つ無く、真っ直ぐに腰まで下がっている。まったく岡本奈月とタメを張れるくらいの美髪である。少しやせ形で眼は切れ長。唇は薄すぎない程度に上品に収まっている。白い肌にはほくろ一つ見えなかった。全くあの女性に較べれば、イマドキのアイドルなど、上戸彩だろうが黒川芽以だろうが、たかお〜だろうが、皆ザコと断言出来る。(笑)
 しかもこちらに微笑みかける時には『白目あるんですか?』と尋きたくなるくらいの、紀子さまにも匹敵せんばかりのスマイル。ほんの二、三度しか見たことがないのに、今でもはっきりと思い出せる。
 きっと男は見た目は悪くとも、性格は良いのだろう――という想像は大きな間違いである。彼は性格もまた最悪で(笑)、買い物の時、わざと聞こえるように、口の中でこそこそと悪態をついているような陰険な輩である――あるいは本人は声に出しているつもりは無いのかもしれないが。もちろんお金は投げてよこす。(笑)
 以前男が母親と二人で入ってきた時は、男が私を指さして手話をした後に、思いっきり母親の方が手話をやりながら『やっぱりロン毛なんてダメね』とか言っていた。もちそんその中でロン毛なのは私一人である。(笑)
 例の女性の買い物が終わったあと、男が大急ぎで引き寄せて、こちらには解らない手話で、二人がこそこそやりとりをしているのを見ると、何か言われているように当時の私が思ったのも、無理はなかったと思う。

 もしかすると二人は結婚したかもしれない。一方で、私は恐らく九割九分九厘九毛九糸くらいの確率で、恋愛一つ成就もできず、生涯独身のままだろう。もちろん異性と手を繋いでコンビニへ入るなど、あり得ない。そう思うだけで、なんだかもう、悔しくて悔しくて。(笑)

 ああ、負け組、負け組、負け組……。

Posted at 2006/02/26(Sun) 08:25:44

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