I teie nei e mea rahi no'ano'a

文学・芸術など創作方面を中心に、国内外の歴史・時事問題も含めた文化評論weblog

ネットで話題の漫画・イラスト盗作問題について

togetter;トレパク問題に対するプロの漫画家、イラストレーターの意見【盗作】


 話題となっているのは模写やトレスの是非ではありません。模写もトレスもただの技法であり、自分で用意した素材を模写したりトレスするのであれば問題ないです。
 問題となっているのは盗作行為。
 もちろん模写であっても著作権を侵害しています。複製というくくりに、模写かどうかトレスかどうかという区別はありません。透かしてトレスしようが、マス目を使って模写しようが、コピー機を使おうが、全て等しく複製です。
 トレスをしてもトレス元と似ても似つかない場合は複製に当たりません。これは手書きの贋札事件と同じことす。
 精巧な手描きの贋札は作れば、もちろん犯罪です。使わなくても作っただけで赤瀬川事件よろしく逮捕されます。一方で、お札を複製しても似ても似つかない場合は違法になりません。
 複製とは精巧であるかどうかが重要な問題です他人の創作物を複製し、それを改変して自作物として商業的販売を行うことは、極めて悪質な著作権侵害です。


 私は著作権法なんて正直なくても良いとは常々思っていますが、それは個々人のモラルあってのことです。金銭を一切受け取らないファン活動として公開したなら、権利を侵害していてもまだ許容される余地はあると思いますが、商業や同人で生活の糧とすることは、ただの盗み行為に過ぎません(これは二次創作についてではありません。他人の写真や絵から無断で模写することについてです)
 『訴えられなければ何をしてもいい』などとモラルが崩壊してしまえば、法や機関によって管理されなければ仕方ないということになってしまいます。
 そんな息苦しい環境で創作したいですか? いやですよね。そのためにもモラルは守られなければなりません。


○渦中の人々


マサオ氏
朝目新聞にてパロディ絵を描き、pixivへ移住し同様にパロディ絵を投稿、挑発的なネタが受けてトップランカーとなる。ヤングキングにて『石田とあさくら』連載中。騒動以降、連載中の漫画の絵柄・内容が突然変わったことも話題となっている。
参考:
yahoo知恵袋;pixivで活躍しているイラストレーター「マサオ」さんが今執拗に叩かれているのです...


東山翔氏
コミックLOにて成人向けロリータ漫画を、つぼみにて百合漫画を連載中でしたが、騒動以降調査中のため休載となっています。
参考:
togetter;東山翔(showhigashiyama)さんの模写についての定義


宮田蒼氏
原画アニメーター。ピンナップから盗作を行い、解雇



○主な盗作擁護意見と反証


トレスも盗作もやっていない
 →もしも潔白であるならば、または配信で同じような絵を1枚描いてみせるだけで終わります。プロならファンサービスにもなります。
 技法を他人に公開するのは抵抗があるという方もいらっしゃるかもしれませんが、そもそも独特の線を引ける人であれば、盗作疑惑など持ち上がりません


素晴らしい作品なのだから盗作も許すべき。
 →素晴らしい作品になったのは盗作したからであって、実力で描いても凡百な作品にしかなりません。ましてや一度トレスで楽することを憶えてしまうと、自力で描くことが難しくなってしまいます。


嫉妬だ
 →個人の嫉妬で作家が潰せるのなら、とっくの昔に多くの作家が消えているでしょう。ネットスクラムで消された作家なんて今まで聞いたことがありません。故手塚治虫御大のような形での嫉妬はあるかもしれませんが。


絵も描けない奴がガタガタ言うな
 →絵を描けようが描けまいが関係ありません。ましてやなけなしのお金を払った購入者からクレームが来たときに、この言葉を返すのでしょうか?


タイミングが悪質だ。出る杭は潰すのか
 →ただ第三者からトレス検証されただけで揺らぐような問題であれば、遅かれ早かれ問題となっていたことかと思います。
 いずれの件にしてもトレス疑惑というのは、以前から出ていたのですが、誰も取り上げようとしなかったようです。それが単行本発売等の話題と一緒に出てきて火がついたのでしょう。
 極論するならば、盗作を行ったとしてもその人が無名であれば誰からも全く相手にされません。有名になれば問題となります。その違いです。出る杭が潰されるのではなく、地面に埋まっていた黒い杭が出てくることで明るみになった、というところでしょうか。


当事者でもない第三者が検証するな
 →購入者であれば立派な当事者です。まがい物を売りつけられたのですから。
また、無関係だからと目をつぶっていては社会の自浄作用が働きません。万引きも痴漢も強姦も全て非親告罪ですが、それらを無関係だからと目をつぶっていればおかしなことになりますね。


匿名の鎧を着て卑怯だ
 →この発言をした人は権力の鎧を着ていたりするところが実に皮肉ですが……。
匿名の場というのは偉い人、立場のある人でも、自身の立場を抜きで自由に発言できる場です。その逆も然り。
 そのため、匿名の総意などというものはどこにも存在しません。匿名を攻撃するというのは、壁に向かって拳を振りかざすようなもので、最悪手です。自分が怪我をするだけです。特に社会的立場のある人が行う場合、その匿名の場に自分自身や自分の直近の部下がいたなんて笑い話になってしまいます。


○なぜ盗作を行うのか


デジタル時代になって重ねることが容易になった
 →アナログであればトレス台を利用するのですが、レイヤーの概念がなかった時代は、ラップにトレスして画面に貼り付けてなぞるくらいしか方法がありませんでした。
 しかしレイヤーの登場以降、そのような作業にわずらわされることなく、コピー&ペーストしてから拡大縮小回転を行うことで、自分の絵に他人の絵を組み合わせることが可能となりました。それをなぞれば簡単に絵を盗むことができます。
 さらにフォトショップなどを使えば、写真をそのままイラスト風に加工して使うことができます。これをフォトレタッチといいます。


絵を描けることがステータスになった
 →漫画家やイラストレーターへの志望者がここ近年で大変増えました。それにより、上手な絵を描けることで、昔よりも多くの尊敬を集めることができるようになりました。しかし、訓練して絵の技術を身につけるのは大変なことです。
 トレスすれば簡単に尊敬を集めることができます。虚栄心ですけれども。


○やってもいいトレス・模写


使用許諾を得た素材をトレス・レタッチ
 →フリー素材であっても、ライセンスにより商用が禁止されている場合があります。
 ライセンスというのは非常に難しい問題も孕んでいて、過去にダイナフォントを使用した同人作家がライセンス違反で訴えられています。
 フォントの場合は著作ではないため意匠権となりますが、無断でトレスして公開すると意匠権侵害となります。素材というものは、お金も払って一見自由に使用できるように思えても、使用方法が制限されていることが多いです。
 因みに商業では写植しますので、著者側で勝手にフォントを使用することは禁止されています。使ってはならないフォントというのはかなりありますから。


自分で撮影した写真をトレス
 →建物の場合は事前に撮影許可を得ないとならない場合があります。軍や自衛隊、公共の施設は撮影はもちろん、創作に使用できない場合があります。違反すると罰金を取られることがあります。


poser等3Dの利用
 →絵への転用が認められている3D素材、もしくは自分でモデリングした3Dを使用する方法があります。しかしパースやアタリを取るまでにしておかないと、絵の個性が死にます。これは商業作家としては致命的です。

関連:
wikipedia;松文館裁判
wikipedia;千円札裁判

Posted at 2012/06/16(Sat) 21:52:44

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