経営の品質・ゼミナール

9月24日付け「日本経済新聞」の大磯小磯欄に掲載された
「新しい経済と米国経済」の記事を引用したい。

「好調な米経済を牽引しているのは大統領でもなければ上院
議員でもましてや官僚でもない。大量の新規雇用を創出した
企業家や、痛みの伴う経営革新を決断、実行して競争力を回
復した大企業のリーダーたちだ。(省略)
雇用増に貢献したのはサービス分野の新興企業郡だ。コダッ
クをスピンオフしてマーケティング調査会社を起こしたイン
ド系経営者、給与計算などのアウトソーシング会社を作った
イタリア系起業家など。リスクを恐れぬ起業家と彼らに賭け
るリスクマネーがふんだんに世界中から供給されたことが米
国の開業ブームを支えている。
 大企業もリストラを終えて未来に向けて走っている。世界
最強の企業といわれるGMは製品やサービスの不良・欠陥率
を6シグマにおさえる大胆な品質改善運動を実行中。成功す   
れば21世紀のGMの競争力は一段と高まる。           
 新しい時代を切り開く米国経済の特徴は権限委譲(エンパ
ワーメント)。企業規模を問わず、経営者が全権を握って指
揮命令し、社員を部品のごとくあつかって利益を追求する経
営は影を潜めた。
 かわってめざましい利益を上げて成長している企業では、
リーダーはビジョンと具体的な目標を設定し、全員参加を促
す環境、道具を用意することに徹し、目標達成のハウツーは
社員の自発性、創意工夫に任される。
 その際、古い組織にいくら新しい情報通信技術を入れても
コストの高い組織になるだけ。権限委譲、分権化した組織に
新技術を入れて初めて効果的に学習できる組織になる。(以
下省略)」

 

 1995年サンデール欧州委員長の研究チームは21世紀のアジアを描く報告書をまとめた。そこに描かれた日本の将来像は、次のようなものだった。

  ◆ 普通の国  52%
  ◆ 超大国   11%
  ◆ 影の薄い国 10%

 普通の国とは、いまのドイツ、フランス、英国のように、超大国ではないが、政治・経済で一定の存在感を持つ国。決して平凡な国ではない。この結果をまとめた時期は、政治改革で選挙制度を大きく変えた直後だった。国が大きく変わるのではとの期待もあった。だから、そこそこの高い評価になった。
 それから2年あまりたったいま、報告を担当者は、「いまは普通の国と影の薄い国の中間ぐらいの道筋をたどっている。」とみている。日本はもともと国際政治では小国と云われてきた。改革が進まなければ、21世紀には経済でも米国や巨大な生産力を持つ中国のはざまで埋没してゆく。その確率が高まっているとも語っている。

 この担当者の予測は、政治制度の改革がなされなければ「影の薄い国」になるとしいているが、当然経済面での改革も視野に入れていると考えるのが妥当と推測する。ところが、いまの日本の経済活動をリードしている経営幹部からはその行く末に対応する経営理念・方針が見えてこない。ここで述べられている「日本経営品質賞」の経営理念がせめて一つのナビゲーターになればとも考えている。

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