早朝というよりもまだ深夜のうちからクラクションや木箱を投げ落とすような音で安眠できない。ホテルの隣が中央卸売市場で地方からの産物が運び込まれているのだろう。
晴れ渡ったナポリの市街を抜け石窟の都市マテーラへ向かう。マテーラの街は凝灰岩の岩山の斜面を切り抜いて住宅が作られている町だ。今は不衛生な住宅から住民が移住し実際に住んでいる家は少なく、レストランや店舗などに改装されて使われているところもある。昼食はそんな石窟の一つ、入り口の階段を降りていくと眼前に石窟住居群が広がる。店も同様に石窟の中にある。一番奥の席に座るとさらに奥の穴からカビくさい冷たい風が流れてきた。食事を終えて町の中を見学する。岩壁の上に建てられた教会があり、断崖のはるか下を流れる川はまるでグランドキャニオンのようだ。町を一巡して次の観光地アルベルベッロを目指す。
アルベルベッロは石を積み上げた三角錐の屋根でできた建物が並ぶ町だ。町の中心に近づくにつれそういった建物が道路沿いに見える。町の中心部、世界遺産に登録されている箇所では町並みすべてが石でできた三角錐の屋根が連なっている。町は２つの地区に分かれ住宅街と商業地になっている。住宅街の中は建物の形は一風変わっているのもの人通りや車の通行も少なく閑静な町といった感じだが、一方商業地は中を商店にして甘みの強い黒ワインなどを売っている。南イタリア特産のトマトをためしに乾燥トマトを買う。料理や酒のつまみという触れ込みにつられて買ってみた。夜試しに食べてみたら塩分が強くて一切れでビールが１本飲めてしまいそうだ。クリスマスのシーズン（キリストの誕生日までではなく復活の日までがクリスマスだそうだ）だけという道の真ん中に赤いカーペットが敷かれた道を歩きで気のよさそうなおじさんがやっているとある商店で小さなグラッパを買う。ワインを蒸留した食後酒で、ホテルの冷蔵庫のビールやウイスキーが割高でコンビニもないので道中の寝酒用に買う。店主のおじさんがいろいろ勧めてくれる。菓子やワインや味付けグラッパなど、極めつけは最後に出されたカフェ味のグラッパ（甘みとアルコール度数の高さで目が回りそうになる）。
ホテルはアルベルベッロから少し離れたファザーノの町。本館と離れに分かれたつくりをしている。部屋に入るとなんとなくがら～んとしたつくりをしている。夕食も鉄骨がむき出しの飾り気のない宴会場みたいなところで食べる。団体客だけでなく少人数の客も居るので多分ここがレストランなのだろうなと思いつつもホテルのレストランのイメージとは程遠い。翌朝表の看板を見ると４星となっている。何を基準に星をつけているのかさっぱりわからない。この思いは最終日まで続くことになる。