顧客支給品の管理

あなたの顧客からの支給品を管理すること

ここで言う顧客から支給された原料、部品、機器などの例として、ガイドラインは次のものを挙げている。すなわち、測定のために支給された計測器、工具、顧客から提供される教育・訓練のための部屋などである。とすれば、やはりそれらの検証、保管および維持の管理に関する手順を定めることは必要になろう。

だが、ガイドラインは、支給品の取扱いについて注目すべき助言をしてくれている。それは、受け入れ検査(4.10章)、取扱い、保管、包装、保存及び引き渡し(4.15章)の手順を引用しておけば良しとしている。まったく同感で、あらためてこの章の手順を作成することは不要となる。中小企業では、繁雑なシステムを構築することは出来うる限り避けるべきと考える。
ただし、 「紛失、損傷、またはその他の理由で使用に適さない支給品は、記録され、顧客に報告すること」だけは付け加える必要がある。

製品の識別及びトレ-サビリティ-

得たものの履歴を知ること

中小企業といえども製品の識別、すなわち、部品番号、ジョブ番号、バーコード、色別容器の使用などの中から適切な方法を採用しているので、手順は現行のものを文書化すればすむことである。ただ、 製造から包装および出荷までの全ての段階で、図面、製品仕様書、その他の文書で製品を識別出来るような管理方法を採用しているかと問われると頭をかくことになるかもしれない。何故かというと、多品種少量生産で強みのある中小企業では、一台の設備で製品の切り替えを繁雑に行うことがあるからである。だすると、識別管理は不完全にならざるをえない。これを克服するよい手段はあるかというと「ない」が答えである。当面出来ることといえば記録を確実に実施することと半製品の取扱いに注意するしかないだろう。

トレ-サビリティ-とは、製品の履歴を使用原料まで遡ることが出来るようにすることである。規模にかかわらず、多くの企業で使用されている方法は、タグを付けることや個々の製品あるいはバッチに固有の識別記号(ロット番号など)を付けコンピュ-タ-によって追跡できるようにするなどである。難しいことかもしれないが、やるしかない。

考えてみれば、製品の識別及びトレ-サビリティ-はPL法にも関連し、事業が重大な事態に陥らないため、すなわち、危機管理の観点からも最良の方法を見付け出すしかなかろう。<戻る>

工程管理

どのように管理するか?

この要求事項は、品質に影響を及ぼす工程をいかに管理するかに関するものです。その管理の手段として採用されているのは、図面、生産スケジュール、作業指示書などを使って対応しているのが一般である。当然ながら、一連の工程管理についての手順書の作成がもとめられているが、規格には「手順書がなければ品質に有害な影響を及ぼす可能性のあるものについて」手順書の作成を求めているのであって、すべての作業の手順書を作る必要はない。ガイドラインでは、有能な作業者ならば当然知っているような細かいことまで手順書に書く必要はないとしている。たとえば、訓練を受けたフォークリフト運転手に対してどのように操作するかを文書で示すようなことはまったく必要はないということである。さらに、新しく入社してきたり、臨時に採用した作業者にフォークリフトを運転させたいならば、訓練をすればよいことであって、手順書や作業指示書を作成することは必要ない。ただし、荷物の積み方、取扱い上の制約や日常の保守については、その詳細を手順にすることはあるかもしれないとしている。このような事例から言えることは、中小企業では旋盤工のように十年以上もの長い経験者がいる場合には、旋盤操作につての資格を会社が認定をすればよいのであって、その操作法の詳細はいらない。

設備の日常点検や作業環境の整備についての手順書を作る必要がある場合が多いが、主要な製造設備(特に計器類)や排気施設の使用など作業環境のうち重要なもののみを対象にして作成すれば良い。特に、顧客からの要望に基ずく設備の調整や法令によって規制されているものは手順書として文書化しなければならいかも知れない。

工程管理項目は、作業指示書などの記載するのが通常行われている方法であるので、とくに問題は生じないが、作業中の製品のできばえを調べる必要がある場合は、形や色を示す写真、図解やチャートを利用するのも良しとしている。立派な手順書を作るのが目的ではなく、工程管理を間違いなく、簡単に出来るように工夫すればよい。

また、設備の部品の劣化や治具の摩耗によって製品の品質が左右され、部品や治具を 作業途中で取り替えなければならないような場合の手順は明確に規定する必要がある。スポット溶接作業の場合が良い例で、溶接棒を定期的に取り替えないと良好な溶接ができないので、溶接棒がどの程度短くなったら取り替えるか手順書で明確化する。

訓練や経験によって作業者の資格認定の仕組みを作っておけば詳細な作業手順書は必要としない便利な方法があると前述したが、「特殊工程」に分類される作業は資格認定が強制的に必要となる。規格では、 公的な資格もしくは社内資格がなければ作業できない工程を特殊工程と言う。個人の資格認定の一例は溶接である。このような特殊工程を含む企業では、これら特殊工程に従事する要員を訓練し、その資格を文書で認定しておくことが必要である。


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