検査・試験

物事が正しいことを確認する

ガイドラインは、検査・試験に関する要求事項は三つの段階、すなわち、購入検査・試験、工程内検査・試験、そして最終検査・試験、に分けているが、これら三つの区別はかならずしも明確でなく、極めて類似していると指摘している。なぜなら、検査・試験の基本的作業の内容は、「あるものが受け入れ可能かどうかを判定する」ことだからである。寸法を測る、化学分析をする、色を合わせる、品物を見て、それが頼んだ品物かどうかを決定するなど多くの検査・試験がある。これらの検査・試験の中から、自社の製品に当てはめることができる検査・試験はどれか、或いは顧客から求められている検査・試験は何であるかを明確にし、その検査・試験のやり方を決めねばならない。このこと自体は何らの苦労なくできると思うので、先に進める。

検査・試験のやり方が決まれば、検査・試験を行う人に担当業務についての教育・訓練を実施する必要がある。そのあと、いよいよ検査・試験をはじめることになるが、ここで中小企業では通常とは異なる形態が起こります。それは、一人の作業者で製造設備を運転して、同時に同じ人が検査・試験をしなければならいことである。これは許容できることなのかについてガイドラインは次のように述べている。すなわち、このような やり方は小人数の従業員による中小企業にとって不可欠であると受け入れている。以下に事例を引用する。
「ほんの数人の従業員しかいない小さな機械工場では、機械工は、次工程の加工ステーションに渡す前に自分の工作物に対する検査をするのが普通のやり方です。通常、作業票が工作物についていき、機械工は工作物に対する作業が完了した旨を作業票に記入し、署名します。この方法でうまくいきます。」これからも分かるように、中小企業の実態に則した手順書をつくるように示唆している。

さらに、目視検査も検査・試験の一つとして、目視検査を実施しなければならい業務分野がある。たとえば、出版業では、目で見る検証が主たる検査・試験となると例示している。しかも、簡単に出来るこのような検証方法は、部品や材料の受け入れ検査に利用できると している。有益なので本文を引用する。「単に従業員が引き渡し文書をチェックして、それに署名し、品物が引き渡されたことを確認するだけでも、何らかの形の購入検査をしている。」としている。このようなケースは、中小企業では多々あると思うので、おおいに利用すればよい。

下請負業者から材料や部品を購入する場合の受け入れ検査だが、下請負業者での品質管理の程度と提供されたデ-タを考慮して、受け入れ検査の量と内容をきめればよい。ある場合には、受け入れ検査をしないで、相手の試験成績表で受け入れを決めることでも十分であることがある。このように、合理性があれば自由に検査・試験の程度を決められることを強調したい。比較的に単純な製品を製造している中小企業では、無用な検査・試験をする必要はないことは明白である。このことをガイドラインでは、事例を挙げて説明しているが、サービス産業のことなので、省略した。

最終検査では、品質計画書(QC工程表とすればよい)、抜き取り検査計画書、検査および試験計画書、指示書などで要求されているすべての検査・試験を完了し、その結果を記録することがもとめられているとともに、記録には明確に規定された判定基準に従って合否の判定結果が記載することもあわせて必要である。この最終検査・試験が完了する前に出荷はできないことは当然である。しかし、たとえば、顧客の要求で製品を未検査のまま出荷しなければならない事態が起こりうる。この場合の処置法も手順書で定められていることが必要である。すなわち、出荷後製品が顧客先で不合格になったときには、この製品すべてを早急に回収もしくは交換ができる仕組みである。

最終検査で不合格が判明した場合は、「不適合品の管理」の手順に従って処理することになるが、工程内検査で規格はずれが生じ、設備の点検もしくは調整によって規格内に収めることができた場合は、通常の工程管理の手順で対処することも指摘している。この点は誤解されやすいので注意がいる。


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