検査、測定および試験装置の管理

あなたの仕事をチェックするために用いる装置について確信を持つ

(ホームページオーナーの感想。訳者である久米先生と中条先生には失礼ではあるが、ガイドブックのこの部分の日本語訳は読むに耐えないほど劣悪である。まったく意味不明のところもある。)

ガイドラインは、まずこの要求項目を適応しなくてよい場合を指摘することから始まっている。その例として印刷業のように、要求されている検査項目が目視検査のみならば適応しないですむとしている。しかし、製品の品質を測るための検査機器または試験装置を用いる業種では当然必要となる。そして、その装置をどのように管理、保管、使用するか、どうやってその装置の精度を必要な水準に維持するかの手順を定めることを、この章は求めている。ただし、ここでの対象機器には、検査に用いる機器のみでなく、工場に設置された計量計や温度計などの測定器も含まれるので、注意したい。さらに、ガイドラインは、やみくもにすべての装置を校正対象にしないように忠告している。特に、試験室で使われるガスボンベに設置された気圧計のように、単なる「指示目的」のためだけの測定器は、校正対象にならないとしている。ここまでの文章の意図は、校正対象機器の選定には十分に検討を加えて、品質管理上どうしても校正対象しなければならない計測機器を決定することであると思う。後から出てくるが、校正には無視できない費用がかかることも考慮されているとみる。

ISO9000で求められている校正とは、国際標準もしくは国家標準に法的に有効な関係を持ち認定された基準器を用いて、計測器の精度を保持させるための機器管理である。ところが、多くの試験計測器には、国家標準の存在しないものがある。この場合には、ラウンド・ロビンといって多くの信頼できる試験機関で同じサンプルを用いて、同じ試験法で測定した結果を分析して、正しい値(真値)にもっとも近い値を付与したものを二次標準サンプルとして採用することも出来る。化学分析にはこのような二次標準サンプルがしばしば校正に使用されている。ただし、このような標準サンプルに関しては、その素性を明らかにする文書が必要となる。ガイドラインでもこのような標準が使用出来るとしている。ところが、試験計測器を実務で使用した経験のないある監査員は、これを理解出来ず混乱が生じた経験があったので、忠告しておきたい。十分に理論武装されることを願う。また、社内標準を用いて日常的に機器の補正(キャリブレーション)が行われることがしばしばあるが、これとここでの校正とはまったく異なるので、注意したい。

さて、話しを戻すと、校正は定期的に実施されねばならないとされている。精度を保ち得る期間は機器の性能と使用頻度によって異なるので、おのおのの機器に適切な期間を設定すればよい。校正の手順書には、校正方法のみならず、校正期間を明記することが求められる。さらに、手順書のみでなく、計測機器の設置されている付近に校正済みの表示および次期校正日を明示することも求められている。当然のことながら、校正結果は記録として常に閲覧できる状態にしておくことが必要である。国家基準までのトレーサビリティを明示できる文書や証明書も同じである。

ガイドラインは、測定機器の精度に関しての忠告をしている。それは、不必要に高い精度で校正するのは無意味であるとしている。当然のことではあるが、わざわざ記載しているには、それなりの理由があってのことだろうと思う。

校正ばかりに焦点をあてていたが、測定器および試験装置(試験ソフトウェアを含む)の日常点検による保守管理に関する手順を文書化することも同時に求められている。この日常点検で校正基準からの外れが発見された場合、前回の校正日から基準外れが発見された時点までの検査・試験の結果を見直し、製品の品質検査結果に問題がないかどうかを確認する必要がある。見直しの結果、何の処置も必要でない場合もあれば、製品の回収が必要となる場合もある。これらの取扱い方は「不適合品の管理」の章に従うことになる。

ある機器類では検量線を引くための試験用ソフトウェアを使用することがあるが、その妥当性すなわち検出能力の確認が必要となる。一つの方法は、不合格品と合格品の既知のサンプルを用いて確認することである。ここでガイドラインでは、試験用ソフトウェアは径年変化がないので、定期的にこのような妥当性確認を行う必要はないとしている。たしかに、ソフトウェアそのものは劣化はないが、機器本体が故障することは起こりうるのだから、上述したように日常の補正(キャリブレーション)はかならず実施する必要があるのが正解だ。なぜ、ガイドラインでは日常の補正がいらないとしたのか理解できない。

ガイドラインは校正を社内で行うか外部機関に依頼するかのことに言及しているが、日本ではありえない状況を想定して論じているので、あまり参考にならないので省略する。ただ、複数の計測機器を使用している場合は、そのうちの一台を外部機関に校正させ、あとの機器は自社で校正をすれば経費の削減が出来るとしていることは参考になるかもしれない。

ところで、最近知ったことだが、日本中の多くの企業が、この校正に必要な基準器の購入を始めているので、生産が追い付かず注文しても入荷するのはいつになるのか不明という事態になっているらしい。このような状態で認証取得活動を進めている場合には、既に述べた「二次標準器」による校正を暫定的処置として実施してもよいと考える。監査員が不適合としても、購入できた時点で是正処置を完了することを記入した是正処置報告書を作成すれば解決できる。

最後になるが、意図のあるなしにかかわらず校正時に行った設定を狂わすようなことを他人ができないような予防手段が講じられているように忠告している。 日本では必要のないことかもしれないが、万が一のことも考えておくのも無駄ではない。


|前のペ-ジ||次のページ|