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オモシロイ!マークはあくまで私の好みです。


2002年[1][2][3]


島田荘司「龍臥亭事件・下」

御手洗の「あと君に必要なのは自信だけだ」、その言葉に「見捨てられた」と絶望する石岡。
このへん読んでいるとその卑屈ぐあいにちょっとイライラさせられるが、それでも複雑な事件の糸はなんとか石岡の手によってほぐされる。
途中「津山三十人殺し」の説明(?)がかなりのページを使い、しかも探偵役が石岡君ということもあって、事件の解決もものすごい遅延っぷりだったが、そうやって長くつきあって来た分、事件を解決できた時には「石岡君、やったじゃん!」と心から思えました。
あと、ひとつ!ラストにちょっとしたサプライズが隠されています。(シマソー愛読者なら「あっ!」と思うような人物が!)


島田荘司「龍臥亭事件・上」

御手洗潔に置いていかれ、失意の日々を送っていた石岡に依頼が来た。
自分と一緒にある山奥へ行ってほしいと頼む依頼人(女性)。そうして重い腰を上げた石岡はやがて事件に巻き込まれてゆく。
御手洗の陰で自信喪失し、自分を卑下していくばかりの石岡にめぐってきた事件はかなりの難易度。
猟奇連続殺人事件と、戦前本当にあった「津山三十人殺し」がからんで複雑な構造になっています。
石岡は無事事件解決できるのか?とハラハラしながら読みました。
女子高生に振り回され、御手洗に手紙を書き指示をあおぎ、途方に暮れながらもなんとか頑張っている石岡君はきっとこの事件で大きく前進できることでしょう。


貴志祐介「クリムゾンの迷宮」

藤木は見覚えの無い場所で目を覚ます。傍らにあるゲーム機からは「火星の迷宮へようこそ」の文字、果たしてそれがゲームの始まりだった。
エンターテイメントとしてサクサク読める、がラストでポンと突き放される感じがもったいない。手に汗握って読んできたので、ハッピーでもアンハッピーでもスッキリできるラストがあったら、もっとカタルシスを感じられ印象に残るのに。もったいないことです。


古処誠二「ルール」オモシロイ!

終戦間近のフィリピン戦線。鳴神中尉率いる小隊の敵は、アメリカ兵でもゲリラでもなく、「飢え」だった。
全然好みの内容ではないのに、その世界にものすごく引き込まれ、集中して読了してしまった。
著者の「ルール」という小説は、ある時代、ある場所で、ある状況に置かれた、ある人物の話です。これを読んでくださった方が、今さかんに繰り返されている歴史認識などを巡る「ケンカ」を滑稽に感じたならば、わたしは自分の描写力に少しは自信を持てると思います。
という言葉に「自信持ってください!」と言いたくなりました。
極限状態に置かれた人間の生への執着やプライドのあり方など、いろいろ考えさせられる。
読み終わり、自分が現代に生まれてよかったなとしみじみ思えます。


蘇部健一「動かぬ証拠」

異色ミステリ。すべての謎がラスト1ページのイラストで一目瞭然になる、という初めて読む(みる?)試みの短編集。
ミステリ自体、特にすぐれたトリックがあるわけではないし、ちょっとミステリに慣れた人ならオチも容易に想像がつくストーリィも多数。
しかし、そのオチを1枚のイラストでどう現すのかな?というおもしろみがあった。
ただ、そんな重要なイラストなんだから、もう少し絵のうまい人に描いてもらえばよかったのに・・・。


森博嗣「赤緑黒白」オモシロイ!

Vシリーズもついに10作目。今回は全身赤や緑に塗られた死体が発見され、おなじみのメンバーが巻き込まれる。
といってもオビ文の「いよいよクライマックスへ!」のとおり、今までの総括的な内容にもなっていて、読みながら過去のVシリーズを思いだし「あそこも伏線だったのか!」と驚いたり、その緻密な積み重ねに感心したり。
森博嗣氏はやはりスゴイ作家です。早く次作を読みたい。
ネタバレしそうなので、これ以上は書きませんが・・・うう〜ん、読み終わった人とあれこれ語ってみたいです。


高田崇史「QED百人一首の呪 」

百人一首の一枚を握り締め、百人一首マニアの社長が惨殺された。残された札は果たしてダイイング・メッセージなのだろうか?
刑事の友人に百人一首の謎を解くようにたきつけられ、漢方医・桑原崇が薬剤師の奈々ととともに事件に関わる。
久しぶりに読む百人一首の優美な句の数々に魅了されてしまった。昔の言葉はきれいだな。
内容も百人一首の謎さえ解ければ殺人事件も解決するとばかり、ほとんどが百人一首の歴史や詠み手や句の説明。確かに興味深くはあるのだが、途中やや食傷気味になってしまった。
が、そういう内容のわりにサクサク読めるのはストーリィ作りがうまいから?


森絵都「カラフル」オモシロイ!

ヘンテコな天使(名前はプラプラ)が、一度死んだはずの主人公に「おめでとうございます、抽選にあたりました!」と言う。
期間限定で他人の体にホームステイし、また現実界に降り立つことになった少年は、宿主をとおして再び社会に出、家族とかかわり、成長し再生していく。
ちょっとコミカル、でもジーンとするところも多数あり、ミステリ的要素も感じられ、とても楽しく読めた。
ラストはやや想像がついてしまうが、そういう予定調和も含めておもしろい!
「本の雑誌」(編集長椎名誠)1998年のベスト10の第2位だったそうです。さもありなん。
児童文学というくくりに入るようですが、もっと多くの人の目に触れればよいのに、と思う。


江國香織「泳ぐのに適切でも安全でもありません」

タイトルはアメリカで見た看板の文句だそうです。(実はしばらくの間、「泳ぐのに適切でも安全でもありません」と思っていました)
そんな「安全でも適切でもない」10編の恋愛小説集。
以前の小説より男女関係がやけに生々しく描かれているように感じた。
それだけに恋愛の良い部分も悪い部分もリアル、ちょっと変わった人々が出てくるのに不思議な現実感を感じたのはそのせいか。
しかし淡々と語られているので、感触はとてもサラリとしている。そのへんが江國香織作品。


原田宗典「おまえは世界の王様か!」

小説家を目指していた20歳の原田氏が書きためた、読後感想、演劇や映画のこと、日記などを、40歳になった原田氏が解説しつつちゃかしつつ紹介。
若いときはみんなコワイもの知らずの王様だったね、でもそんな自分が恥ずかしくも一生懸命でかわいいね、とそんな痛がゆい気分にさせる。
40歳のハラダ君のツッコミがまたおもしろい。ただちょっと保守的な意見になってしまっていて、感想などは20歳のハラダ君の方が切れ味はするどい。 


森奈津子「かっこ悪くていいじゃない」

バイセクシャルの美里は不倫をしつつも、他の女性ナナに惹かれていく。
森奈津子を読んだことがある人がこれを読めば、まぁおとなしめでちょっと暗めという印象を持つかもしれない。
と、わりと森奈津子節を抑えめにした作品。
バイセクシャルであるヒロイン美里の視点が冷静で、両性愛者という存在についてのモノローグなども納得できる部分は多数。
女が結婚するとつまらない女になる、みたいなのは悲しいけどね。


西澤保彦「異邦人」

飛行機で帰郷中、23年前にタイムスリップした「わたし」。しかも飛ばされたのは。父が殺され、迷宮入りとなる事件の起こる数日前だった。
タイムスリップというSF的な要素を盛り込みつつきちんとミステリしている、好きなタイプのストーリィだった。
ただしゃべるだけの推理合戦のような展開にならず、主人公も動き回っていたし、当時の姉の恋人で あった少女・季里子との出合いのシーンなど、この著者らしくておもしろいな、と感じた。


江國香織「とっておき作品集」

フェミナ賞を受賞した処女小説「409ラドクリフ」、異色絵本「夕闇の川のざくろ」もなど収録の他、父・江国滋氏の「香織の記録」、妹・晴子さんの「夢日記」も公開。江國香織読本?
収録された小説の数々ももちろんおもしろいが、身内の語る、エキセントリックな著者の姿は大変興味深かった。
怖い夢を見ては度々夜中姉(香織氏)に起こされる妹さんの感想(姉の夢の内容なども)や、滋氏の長女に対する暖かい眼差しのこもった記録はほんとうにおもしろくかった。


佐藤友哉「フリッカー式 鏡公彦にうってつけの殺人」

最愛の妹が自殺し、ショックを受けている兄のもとに届いたのは妹のレイプシーンを録画したビデオだった。
ミステリなのかなんなのか、主人公の家族も変(舞城作品のように?)なら、なんだかまわりも変なカンジ。なんか、こういう設定みんな好きだろ!?とかそんなふうに著者が思って書いたのだろうか?わたしにはあまり訴えるところはありませんでした。


黒田研二「笑殺魔」オモシロイ!

「私の笑顔は呪われているんです」と言って保母をやめ、笑顔を封印した女性。その彼女がいるハーフリース保育園に誘拐事件が起こる。ひょんなことから事件に巻き込まれた幼児図書の営業・次郎丸諒は事件を解決できるのか!?
素直におもしろかったです。この著者の今までの本ってなんとなく主人公に色がなくて、ちょっと物足りなかったが、次郎丸は身近でありながらちょっと個性的で親近感が持てたし、その他の登場人物も活き活きしていて全体としてとても読みやすかった。
ミステリ部分もしっかりしていたし、ラストもうまい!
この設定はこのままで終わるのはもったいない。ぜひシリーズ化してほしい作品。


貴志祐介「青の炎」

家族を守るため、17歳の少年(主人公)はある計画を実行にうつす。
読んでいる間中ワクワクしておもしろいのに、読み終わると肩すかし、というのがこの著者の本を読んで、いつも感じること。
この主人公も緻密なようでいてけっこう重要なとこがヌケてたり、それを17の少年だからで片づけてしまうのはちょっと都合が良くないか?とツッコミを入れたくなってしまう。
ちょっとクサしてしまったかもしれないが、読んでいる最中はおもしろくてサクサク読めます。おもしろい本、なんだよね、うん。


森博嗣「奥様はネットワーカ」オモシロイ!

「ダ・ヴィンチ」連載作品に最終話を加えた完結版。イラストも書き下ろししている(らしい)豪華ハードカバー。
大学の工学部を舞台に、ヒロイン・スーィジを含む、それぞれに秘密を抱えた6人の視点で物語が構成されている。
会話文などが、森氏っぽくて読んでいてニヤリとしてしまう。最後のフィナーレとか、好きです。
しかし、なんと言ってもコジマケン氏のカットの威力は偉大。登場人物はイラストのあの顔で読んでいました。


森博嗣「朽ちる散る落ちる」

Vシリーズ第9弾。土井超音波研究所の地下の密室で奇妙な死体が発見される。世界的なテロ組織の話題も出てVシリーズの謎(?)を解く鍵になる作品。
「6人の超音波科学者」、「気さくなお人形、19歳」(「地球儀のスライス」収録)は必読。
今までアソコは伏線だったのか、と新たな発見もチラホラ。このシリーズ単発のように思っていたが、この本を読んでキチッと計算されてつながっていたことに気づいた。「気さくなお人形、19歳」の纐纈さんがここでこんな出方をするとは・・・。恐れ入りました。


乙一「GOTH -リストカット事件-」オモシロイ!

変わり者の同級生・森野が拾ってきたのは、連続殺人鬼の日記だった。殺人者に興味のある「ぼく」は森野とともに、日記に書かれていた場所へ行き、まだ警察には発見されていない死体を発見する。(「暗黒系」より)
少年が主人公のミステリの場合、殺人事件が起こると、主人公は積極的に事件に関わり調査ししたあげく、謎(犯人)を暴き大団円になることが多い。しかし、ここではそうはいかない。そしてそこがこの小説の最大の魅力。
「暗黒系」「リストカット事件」「犬」「土」「記憶」「声」の5編。
著者自身が「真面目にミステリーと向き合おう」と思って書いた作品らしく、どのストーリィもオチがきいている。うまい!


J.K.ローリング「ハリーポッターと賢者の石」オモシロイ!

額に稲妻型のキズを持つハリー・ポッターは小さな頃両親と死別し、親戚の家で虐げられながら暮らしていた。そんなある日彼のもとに魔法学校からの入学許可証が届き、彼の両親が魔法使い&魔女だったときかされる。そして額のキズの理由も。
育ての叔父の悪役っぷりとか、魔法学校同級生の嫌なヤツとか、憎まれ役がいてこその主人公ハリーです。
いじめられまくっても、ハリーがけっこう冷静に淡々と生活しているのが現代風でおもしろい。
不思議な道具や魔法や異国のおやつそれにあの不思議な球を使ったゲーム「クィディッチ」わくわくして読んだ。
映画を観る前なので、存分に自分の頭の中でいろいろ想像できたし。映画版観るのが楽しみになりました。
ただ、ちょっと・・・翻訳がイマイチだった気が。
全体に古くさく感じた。図書館で読む、何十年も前に翻訳されたファンタジーのよう。
もっと、現代風に活き活きと会話しているような表現はできなかったものか・・・。
ジル・チャーチルの小説なんて主人公たちが活き活きと個性的に会話しているよ?


黒田研二「今日を忘れた明日の僕へ」オモシロイ!

事故に遭い、記憶を蓄積できなくなった主人公。
頼れるのは自分の書いた日記だけ、そんな時、親友の失踪事件が起きる。
日記を手がかりに失踪事件の真相を探ろうとするが・・・。
記憶が無い、または自分の記憶を信じられないということが、どれだけ辛いことか。
どれだけ拠り所のないことか、考えさせられる。
細密に構成されたストーリィはスリリングで読みやすい。うまいです。


浦賀和宏「浦賀和宏殺人事件」

タイトルで言っているとおり、小説家・浦賀和宏が主人公。
講談社ノベルス創刊20周年記念書き下ろし『密室本』シリーズの一冊ということで、作中の浦賀氏が悩みになやんで発表したのはYMO楽屋オチともいえる作中作ミステリ。
かなりバカバカしい部分もあるが、それすらも伏線といえる。(←ネタバレぎりぎり)
ラストのオチはわりとすぐ想像がつくものの、それでも案外おもしろく読めました。


井上夢人「あくむ」

盗聴にはまって自分を見失ってしまったり、他人の見る夢の災難が自分に降りかかってきたり、「あくむ」というタイトル通り、不思議で不気味でちょっと後味の悪い、そんな短編集。
収録作品は「ホワイトノイズ」「ブラックライト」「ブルーブラッド」「ゴールデンケージ」「インビジブルドリーム」の5編。
ショートストーリィなだけに、タイトでキレが良く後味の悪い結末があっても読後は悪くない、というちょっと矛盾した本でした。


久美沙織「グラス・キャッスル」

いろんな種類ストーリィで構成された短編集。
一言でいうのはムズカシイが、共通して思ったのは「女っぽいな」ということ。
一人称のモノローグなど、イキイキしているというより、生々しい。
女の子(女の人)のかわいいところも怖いところも、残酷なところもリアルに描ける人です。


我孫子武丸「まほろ市の殺人・夏」

新人作家君村義一に送られてきたファンレターの送り主は四方田みずきという女性だった。やがて急速に恋に落ちる二人だったが・・・。
ミステリですが、恋愛小説とも言えるそんな作品。後半の展開がちょっと早すぎて、ちょっともったいない感じがしたものの、400円文庫だから仕方ないのか・・・というか400円文庫としては十分堪能させてもらいました。


倉知淳「まほろ市の殺人・春」

「人を殺したかも知れない…」と友人・カノコに告白された美波は現場検証にカノコのマンションへ向かう。
読んでいるときは「ふむふむ」と思うものの読み終わると、ちょっとだけ気が抜けた。
サブタイトル「無節操な死人」はなかなか的を射ています。サクサクと読んで楽しむ本。


貴志祐介「天使の囀り」

ホスピス勤務の精神科医・島早苗の恋人は作家の高梨。しかしアマゾンから帰ってきた高梨は別人のように変わっていた。
ジャンルはホラー?怖かったです。メインのアレ(線虫←ネタバレ)もそうですが、 オタク青年・荻野の生活や思考などそういう人物表現の細部にもゾクッとする部分があった。
前半ちょっとダレぎみに感じていたが、読むうちにだんだん加速し、全部読み終えた時には本の厚みなど全然気にならないほど集中していた。


銀色夏生「ひょうたんから空」

「ミタカくんとわたし」の続編。ナミコとミタカのつれづれ日常小説。
ミタカはあいかわらずナミコの部屋にいりびたり、すっかり家族にもなじんでいる。
そんなある日、家出中だった父親が帰ってきた。父親の提案でひょうたんを植えはじめる家族。
ほのぼのとあたたかく、どこか可笑しい日々、ミタカとの仲はあいかわらずだけど、気持ちの良い夏の日。
ママはあいかわらず個性的だし、ミサオ&ミサオの彼女のサイドストーリィ的恋愛模様などもおもしろい。


銀色夏生「ミタカくんと私」

おさななじみのミタカくんはちょっと変なヤツ。だけど家族のように近しい関係。すっかり家族にもなじんでいる。
中学生のナミコの日々はつれづれとすぎてゆく。
日常的なストーリィだが、ミタカくんはもちろん、マイペースのママや中学生の弟ミサオなど各キャラが魅力的。
夏のにおいのする気持ちの良い小説。


岩井志麻子「邪悪な花鳥風月」

ウィークリーマンションに缶詰になった作家が眼下に見える古く木造アパートとその住人をモデルにオムニバスの小説を書く。
女の情念みたいなものがにじみでてくる短編集。
ストーリィはちゃんとしていて悪くはないが、後味が悪いので読んでるとしんどい。
わたしの好みではありませんでした。


銀色夏生「気分良く流れる」

前巻での衝撃の「むーちゃん」との離婚のあとの生活。
早くも新しい彼氏「イカさん」が登場して一緒に生活していたり、たんたんと変化してゆく日常。
そして育ってゆくあーぼう(かんちゃん)。
遠くに住んでるお友達の生活を見守っているような気分で読んでます。


銀色夏生「さようならバナナ酒」

つれづれノートシリーズ5弾。アメリカでの忙しい旅を収録。
旅行先でのセッセ(銀色さんのおにいさん)の言動がおもしろかった。
あと、食べ物がいろいろおいしそうだった。あーぼうのおやつなど。


銀色夏生「どんぐりいちごくり夕焼け」つれづれノート11

毎年楽しみにしている「つれづれノート」シリーズもついに11冊目。
今回は前回の続きで沖縄移住編かと思いきや、どんぐり荘(山の中)編でした。
カタチを微妙に変えつつ、動き続ける、家族達。イカさんとの関係も変化し、また新たな前進というかんじ。
日々の出来事を綴った中にドキリとするような鋭い事がサラっと書かれていて、そういう着眼点や、その表現する言葉にやはり詩人だなぁと感嘆。読ませる日記ってこういうのですね。


鯨統一朗「鬼のすべて」

発見された二人の女性の死体は鬼に見立てられていた。 友人を失った刑事みさとは、元刑事ハルアキと共に鬼の真実を探り、その中から事件を解決しようとする。
「鬼を探る」というテーマのもと、それぞれの登場人物が動き推理してゆく、鬼についての洞察は興味深く読むことが出来たが、その結果から導き出される推理&犯人は短絡的に感じた。
みさと含む刑事達が犯人を推理するが、わりと根拠無く容疑者を2人に絞ってしまったり「?」と思うこともあったが、その分リーダビリティは良かった。


J.R.Rトールキン「ホビットの冒険」

平和な暮らしとごちそうの好きなホビット(小人)ビルボは、魔法使いガンダルフの誘いにのせられ、竜に奪われた先祖の宝を取り戻しに行く13人のドワーフ達との冒険に乗り出す。
実は、こういう物語好きです。魔法や竜や小人の存在した世界。
本でしか体験できない世界です。「指輪物語」を読む前の肩慣らしだったのですが、早くもハマりそうな予感大。
前半はわりビルボの試練編。そして後半が竜を退治した後のビルボとドワーフ達のごたごた。
このごたごたが人間らしくて良い。宝物に目がくらんでしまうオトナの事情がリアル。
おとぎ話というだけじゃないシビアな世界も描いている。


鯨統一朗「金閣寺に密室(ひそかむろ)」

知恵者で有名な建仁寺の一休に「足利義満の死の謎を解け」という依頼が舞い込んむ。一休は金閣寺の密室を解明できるのか!?
歴史上でおなじみの「一休さん」を探偵役にした異色歴史ミステリ。
はんなりした京言葉で話すおっとりした一休の人物像が良かった。有名な逸話(「このはし渡るべからず」とか)もうまく盛り込まれていて、楽しめる。


柄刀一「殺意は幽霊館から」

竜之介のおごりで温泉にやってきた、光章(語り手)・一美(語り手の彼女)・竜之介(探偵役?)の3人は不思議な幽霊騒動に巻き込まれる。
竜之介が幽霊嫌いで、びくびくしたり気絶したり、いい味だしています。
400円文庫ということで、ボリュームはそれなりだが、その分シンプルにうまくまとまっている。謎はいまいち新鮮味が無かったが、解決編で披露される竜之介の論理的な推理には平伏しました。(理系の説明に弱い)


舞城王太郎「世界は密室でできている」

「煙か土か食い物」にチラリと登場していた探偵ルンババ12の最初の事件をルンババの友人「僕」が語る。
舞城ブンガク炸裂!今回はカバー&本文中に著者イラストが差し込まれるという大サービス。
妙な吸引力とスピード感であっとゆう間に読み終えてしまった。
グロテスクな場面が多かったわりには、さわやかなラストがしっかり決まっていた。好きこういうの。 まいった!
この著者のストーリィには生き急ぐ人が多い。激しくて大変な人生だ・・・。
「頑張れえのき、ボンバイエ!(←なしなし)」にオオウケしました。


西澤保彦「両性具有迷宮 」

バイセクシャルでお笑い百合SF小説家森奈津子氏(実在)が主人公の「なつこシリーズ」第2弾です。
なんと!白クマ状宇宙人の手違いで、股間にイチモツが生えてしまったから大はしゃぎ!
だが、そんなおり、他にも被害にあったと思われる女性が次々殺されるという連続殺人事件が起きる。
あらゆる部分でぶっ飛んでます。殺人事件ということで、実在の作家である図子慧さん、倉阪鬼一郎さん(ご本人さんも本当に肩からネコを生やしている)、野間美由紀さんなども作中に登場し、推理を進めたりしますが、実は半分以上はなつこの妄想&エッチシーンという・・・「なつこ、孤島に囚われ。」を読んだ方ならわかるはっちゃけっぷり。
しかし、これがまたおもしろい!ドロドロしてなくて楽しく笑って読めるえっちシーンです。
なつこのキャラってばステキすぎ!この人最強だわ。


図子慧「ラザロ・ラザロ」

ガンの特殊な治療法を開発して失踪した学者が、製薬会社に50億の取引を持ちかけた。上司の命令でその対応に当たることになった廣田だが・・・。
不老不死の新薬を巡る、異色ミステリー。
とても良くできています。長いだけにそれぞれの登場人物がよく描き込まれている。
特に、主人公廣田の野心や葛藤、出会った女性に対する気持ちなど、とても細密に語られており、物語にのめりこむ原動力となった。
若干、詰め込みすぎてやや散漫に感じられた部分もあるが、あちこちに張り巡らされた謎が気になりサクサク読める。他の作品も読んでみたくなった。
*ラザロとは、イエスによって、死から甦った人物の名。


銀色夏生「夕方らせん」

ふとさざ波のようにわきおこり消えてしまう感情を小説として切り取った、そんな印象の16のショートストーリー集。
懐かしい世界。知っているような未知なようなうれしいような悲しいような「あの気持ち」を思い出させてくれる。
「詩」でも「エッセイ」でもなく「小説」で表現したというところが新鮮。
中でも「若草のつむじ」がよかった。静かで淡々としていて透明で、なのに力強い。
まさに、詩人の書く小説。表現が印象的で綺麗だった。
好きな部分を抜粋します。(ちょっと長いけど)
サリはトウタに会ってから、自分の中にある穏やかな落ち着いた気持ちに気づき、いつもそれをたよりにした。
忘れかけてしまいそうな日々の中で、ふと思いかえし、流れの中に立ち止まって、「あの気持ち、あの気持ち」とつぶやくと、まわりからだんだん遠くまで、ゆっくりと波が静まっていき、間違わない方向の石が輝いて見えた。
それに足をかけ、次に飛び乗り、進んで行く。
困った時は、遠くを見よう。近くばかり見ていると、迷うことがあるから。


松尾由美「ブラック・エンジェル」

大学のサークル、「マイナーロック同好会」のメンバーが、ロックの中古CDを見つけ試聴したところ、CDから悪魔が出てきてメンバーの一人を殺してしまった。!というスゴイ殺人事件。
ミステリのようであり、SFのようであり、青春小説のようでもある。
純粋なミステリマニアとしては「悪魔」がトリックなのかそうじゃないのか?とか、それでなくても殺人の動機などを真剣に推理すればするほどはぐらかされる、でも、ちゃんとミステリしているのです。アプローチが新鮮な、不思議な世界です。
ただ、登場人物達はやや古くさく感じられた。読んでる間、栗本薫の「ぼくらの時代」を思い出した。あそこまで古くさくはないけど。


山本文緒「プラナリア」

「プラナリア」「ネイキッド」「どこかではないここ」「囚われ人のジレンマ」「あいあるあした」の6編。
この人の本を読んだ後はいつも、すこしだけ嫌な気分になる。今回の短編集もそうだった。
女の人が生々しくて嫌なヤツで、でも正直。きっと自分にもそんな部分があるからこそ嫌悪するのだと思う。
病気を盾に働こうとしない女、恋人との結婚に迷い他の男と寝てしまう女、必死にやりくりしているのに娘に避けられる主婦、どうしようもない悪路に迷い込んだ女たち、やりきれないです。
ラストも前向きに終わらないことが多いし・・・それなのにこの人の本が出ると、読んでしまう。
怖いもの見たさなのか?安全な位置にいる自分に安心したいのか・・・。
ただ、最後の「あいあるあした」はちょっとハッピーに終わってすこしだけ救われた。


近藤史恵「桜姫」

病死したと聞かされている兄、しかし笙子には兄を殺したという記憶(?)があった。
ある日「桜姫東文章」の招待状を受け取り、桜姫を演じた市川銀京に会う。銀京は兄の親友だと名乗り、兄の死の真相を探ることをもちかける、そんなおり「桜姫東文章」に出演していた子役が不審な死をとげる。「ねむりねずみ」「散りしかたみに」に続く、梨園を舞台にしたミステリ第3弾。
笙子サイドのストーリィと今泉&小菊サイドのストーリィのからみあいが、それぞれの事件に奥行きを出している。また、おなじみの山本くんも成長しており、前作を読んでいた身にはなかなかうれしい趣向も。事件そのものは地味だが、ラストではその地味さゆえの悲しみが余韻を残す。恋愛小説とも呼べるミステリ。


石持浅海「アイルランドの薔薇」オモシロイ!

アイルランドの武装勢力NCFの副議長が、スライゴーの宿屋で、殺された。
アイルランド和平を目前に控え、政治的な理由により警察への通報はできない。そんないわゆる「嵐の山荘」状態の中、泊まり客フジが事件を推理する。
まず!「嵐の山荘」状態の作り方のアイデアが秀逸。これは・・・新鮮だった。
閉ざされたホテル、限られた宿泊客、本格ミステリマニアにはたまらないお膳立て!(まるでA・クリスティの小説のよう)。紛れ込んだ殺し屋の話など細部のディティールも凝っていて、一見堅い内容のようだが、簡潔なストーリィ展開でサクサク読める。あとがきで著者はこの探偵での続編は考えていないと語っているが、是非続編を読んでみたい。


恩田陸「劫尽童女」(こうじんどうじょ)オモシロイ!

マッドサイエンティストの父により超能力を与えられた少女・伊勢崎遙。
「殺さなければ殺される!」そんな逃亡生活に疑問を抱き、自分と同じ人間はいないという孤独を宿し、様々な事件に巻き込まれながら、新たなステージへと進化する。
ストーリィは4編の中編から成り立っているが、一番重要なラストの1編が薄い感じ。
もう少し濃い内容で充実したラストを味わいたかった。
しかし、全体のストーリィ展開は好き、登場人物にも好感が持てたし、ワクワクと楽しんで読めた。
そうそう、ふと筒井康隆の七瀬シリーズを思い出した。似ているような似てないような・・・(あれも、最後すんごい展開になってたけど)


連城三紀彦「ため息の時間」

センセイ奥さんのそれぞれの愛のかたち。嘘と真実、絡みあう駆けひき、屈折した大人のラブストーリィです。
純粋なラブストーリィではあるが、「僕とはいったい誰なのか?」など、読んでいると二転三転するストーリィ展開に翻弄される。
雑誌に連載されていたらしく、その「連載」という形式を利用した文章がおもしろかった。
いきなりラストの結論を出てしみたり、「フライングしました」と簡単に前言撤回してみたり、まるでミステリー小説を読んでいるようだった。こんなに屈折した愛情表現もあるのだな、と未知の世界をかいま見た気分。


群ようこ「どにち放浪記」

新聞での覆面コラムから芸能界コラムまで。デビュー当時のエッセイなどをまとめた本。
読んでみると、けっこう昔の話題が多い。そして著者も若いせいか「怒り」に迫力がある。
この人、ほんとうに本がすきなんだなぁ、と思える箇所が多数あった。無断引用が見抜けない編集者に厳しかったりとか。
本屋で嬉々としてして働く1日体験など、おもしろい企画も盛りだくさんでした。


菅 浩江(すが・ひろえ)「夜陰譚」

幻想的な中にも、女性の持つ闇のようなものを感じさせる短編集。
「夜陰譚」「つぐない」「蟷螂の月」「贈り物」「和服継承」「白い手」「桜湯道成寺」「雪音」「美人の湯」の9編。和の雰囲気がただようホラー短編。
こういう情念というか心の闇みたいなのを見せられるのは、苦手かも。
しかし、「蟷螂の月」の幻想的な情景や「和服継承」「桜湯道成寺」で描かれる上品でしんとした和の雰囲気は美しかった。最後に収録の「美人の湯」は軽妙なタッチで読みやすい。しかし、読後には女性ならずんとくるものがあります。コワイコワイ。


鯨統一郎「タイムスリップ森鴎外」

大正11年、何者かに命を狙われた森鴎外は、偶然2002年の未来へとタイムスリップしてしまう。
女子高生にモリリンと呼ばれ、ケータイメールを使いこなし、ユニクロで服を調達。
森鴎外氏順応性ありすぎです。しかし、そこがまたカッコ良かったり。
作中にでてくる、著者お得意の歴史のミステリは、「近代文学史の有名作家について」。
・・・モリリンはこの謎を解けるのか?そして無事にもとの世界へ戻れるのか?
サクサク読めるエンターテインメント。森鴎外を身近に感じること請け合い。
しかし、難を言えば「追っかけてきた二人組についての説明がいまいちで、うまくストーリィとミックスされていなかった」←ややネタバレ
しかし、ラストの破天荒な仮説には驚かされます。
もっと、こういうシリーズ書いて欲しいなぁ。


堀田あけみ「親離れを考えたとき読む本」

親離れ、子離れを語りながら、家族との距離感を見つめ直す。そんなエッセイです。
作者が名古屋出身と言うことも関係しているのか、著者自身は一人暮らし経験者で客観的な視点を持ってはいるが、やはり読んでいて(親離れについては)「まだまだ」という印象を受けた。
名古屋の女の子って実家からそのままお嫁に行く人が大多数だそうです。
一人暮らしをするようの女の子は不良だそうです。
・・・名古屋出身じゃなくてよかった。


清涼院流水「コズミック」

メフィスト賞受賞作、良くも悪くも・・・。
清涼院流水の原点ともいえるべき作品でしょう。
「今年、1200個の密室で1200人が殺される」と密室卿という謎の人物からメッセージが届いたことから事件は幕を開ける。予告通りに殺されてゆく人々、翻弄される警察、そしてJDC(日本探偵倶楽部)。
前半はひたすら不可能と思われる密室殺人が続き、後半ものすごい(←いろんな意味で)解決編。
あっちに流されこっちに流され、ダジャレと紙一重の言葉遊びに脱力し、思いっきり広げた大風呂敷をどう畳むのか?と中盤のなかだるみに何度も挫折したくなりながら、完走(読了)した感想は(←ヤバイ、言葉あそびがうつった)
「つかれた・・・」。このストーリィにあれだけの文章量が必要なのだろうか?と思う。
こんな感想ですみません。
ただ、JDCの個性的な探偵の各特徴と推理の仕方は、おもしろかった。九十九十九の神通理気(すべてのデータがそろうと勝手に答えがうかぶ)とか犬神夜叉の不眠閃光(ずっと眠らないでいるといきなり事件の真相がひらめく)とか、もうすこしスッキリまとまっていたら、ハマってしまったかも?でも、スッキリまとめないところが清涼院流水氏なのでしょう。たぶん。



清涼院流水「トップランド1980」

「トップラン」でおなじみの藤笙造氏の1980年までの歩みが歴史的事件とともに紹介されています。
実は、それなりにおもしろく読んでしまった。・・・・不覚!
作者の作風に慣れつつある自分がちょっとイヤだったりします。
でも、歴史的事件とトップラン世界のからみがちょっとおもしろくなってきた。
ダジャレ満載のあとがきにはうんざりだけど。


アンソロジー「蜜の眠り」

女性作家&漫画家(明智抄・恩田陸・榎本ナリコ・水樹和佳子・中村うさぎ・松本侑子・島村洋子・柴田よしき・横森理香。姫野カオルコ)の短編を集めたアンソロジー。
恩田陸の短編目当てで購入したものの、そっちは「図書室の海」に収録済みの短編だった。
が、普段読まないような女性作家の作品が読め、それなりに実りはあったと思う。
一番好きだったのは、「3月9日」。なんかハッピーな気分になれました。


矢崎存美「幽霊は身元不明」

前作「幽霊は行方不明」の続編。・・・といっても1話完結の独立したストーリィなので前作を読んでなくても(忘れていても)楽しめる。
跡取り息子の記憶を取り戻して欲しいと依頼され、避暑地で守護霊の美海とともに幽霊へ聞き込み調査。鍵を握るのは記憶喪失の男に憑いた女性の霊。この霊はいったい何者なのか?
前作より読みやすくて楽しかった。ふと思ったのは、この人食事のシーンを描くのがうまくないか?ということ。
なんか食事シーンがやけに印象に残ったもので。


乙一「暗いところで待ち合わせ」オモシロイ!

盲目のヒロインはある日、一人暮らしの家の中に、他者の存在を感じた。
盲目の女性に隠れるように潜んでいたのは、近くで起きた犯罪の容疑者だった。
なんだか、不思議なストーリィ。ミステリー風味、サスペンス風味、恋愛風味、いろいろ感じられた。
読み進んでいくと、目の見えない女性と逃亡者の彼の、お互いを探るような静かな心のふれあいに、いつのまにか共鳴させられる。
このネタ・このストーリィ、乙一氏はただ者じゃありません。今後の作品にも期待できる出来だった。


イポルト・ベルナール「アメリ」

映画の「アメリ」原作。スもちろんトーリィは映画の世界そのもの。
サクサク読めるが、映画をみていないとちょっとイメージしにくい場面もあるかも。
特筆すべきはカバーや本文でカットを担当している100%ORANGEさんのイラストのすばらしさ。ストーリィにピッタリ。いい仕事してます。


島村洋子「アレの続き」

カバーにつられて購入。色使いとかデザインとか好みだったので。
エッチなことを書けとか言われて書いたものをまとめたエッセイ本?なのだろうか。
ちょっとわたしとは考え方が違うよなぁ・・・とか思いつつ読了。
スケベなこともサバサバと書かれているので、気持ちよく読めた。


有栖川有栖「幽霊刑事」オモシロイ!

タイトル通り、幽霊になってしまった刑事がいたこの素質のある相棒を使って、自分の殺人事件を捜査する。
石田衣良「エンジェル」も似たようなストーリィだったが、こっちは現世に何も干渉することができないという「縛り」付き。
相棒のキャラが良くて、他の脇役も活き活きしていた。
事件そのものはわりに地味に集結したが、テンポよく読みやすかった。


西澤保彦「夏の夜会」

法事で故郷に戻ってきた主人公は、旧友の結婚式に出席し懐かしい級友と話しているうち、幼い頃に封印した事件の記憶の蓋をあける。
記憶というものは、いかに湾曲して自分にそして他者に伝えられていくのだろう?
自分にとっての事実が100%真実とは限らないのだな、というようなことを考えた。
見たくないモノに目隠しをする脳の不思議。
級友みんながそんな目隠しつきの記憶を持ち寄るんだから、話は複雑になるわけだ。
ということで、苦手なだらだらしゃべりながら推理を働かせる、というパターンではあったがストーリィがストーリィなので、これは飽きなかった。



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