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オモシロイ!マークはあくまで私の好みです。


2002年[1][2][3]


あかほりさとる「アベノ橋☆魔法商店街」

大阪・アベノ橋商店街。商店街の護りの像が壊されたことをきっかけに、少年サッシと少女あるみの大冒険は始まった。あかほりさとる×ガイナックスが贈る大阪弁コテコテパワフルアドベンチャー。
映像版とはまた違ったアプローチが新鮮だった。あの世界がどうしてできたのか?とかそのあたりはこの本のほうがわかりやすいかも。ただ、鶴田謙二のイラストがカバーとトビラのみってのが……。本文カットでいきなりタッチが変わるんですもの。


鯨統一郎「ふたりのシンデレラ」

私はこの事件の証人であり犯人であり、犠牲者で探偵でもある。さらにワトソン役で記録者なのに容疑者で共犯者なのだ…。劇団の合宿中に、1人が殺され、1人は重傷、1人が行方不明に。「シンデレラ」が仕掛けた驚愕の罠とは?
劇団の役柄をめぐるドロドロ、孤島&ボート、死体とけが人と失踪者、お約束のパターンですが、冒頭の句の一人8役がどんなものか?と気になりぐいぐい読んだ。
カバーのイラストがよぉぉく見ると暗示的です。


恩田陸「蛇行する川のほとり・1」

ゆるやかに蛇行する川のほとり、あの夏、あの川のほとりで、少女達に何が起きたのか?書き下ろし3部作第1弾。
従来の恩田作品らしいストーリィ、学園、浮かび上がる過去の秘密、などがノスタルジックな風景とともに語られ、読み出したらその世界に引き込まれ、1冊(1章)があっという間だった。


清涼院流水「トップランド2002 戦士エピソード」

文庫のカバーが良かったので、買ってみましたが。
もう、このシリーズは買うのやめることにします。
なぜなら「小説」が読みたいので。


本多孝好「MOMENT」

幼馴染みの葬儀屋、森野が紹介してくれた病院で清掃員として働く青年は、その病院で死を目前にした患者だけが耳にする、死ぬ前に願い事を一つだけ叶える黒衣の男の話を聞く。
一章完結の短編連作集かと思いきや、後半ちょっと意外な展開をみせてくれます。
「黒衣の男」と敵対するもう一人の仕事人の存在が象徴的な対照になっている。
死や死の近辺のことを書き、その周囲の悪意もあるのに、主人公が淡々としているせいか、辛い気持ちにはならなかった。
この著者の書く小説って好きかも、と思いました。
森野のキャラもヒロインらしくなくて、いいですね。


恩田陸「ロミオとロミオは永遠に」

日本人だけが地球に居残る近未来。エリートへの近道は「大東京学園」の卒業総代になることだった。
やっと入学した学園でアキラとシゲルを待ち受けていたのは?
「メーリさんと渡ろう、ドーバー海峡♪」が頭にとりついて離れませんでした。
勢いのあるストーリィで、先が気になってどんどん読み進めていったのですが、途中途中にある地球(日本)のサブカルチャーの解釈にニヤリとさせられる部分も多く、お話自体、彼らの受ける試験などかなり過激な内容ですが、このニヤリの部分でエンターテイメントとして成功していると思う。


森絵都「DIVE

いよいよ最終巻、オリンピック出場権は誰の手に!?
今まで登場してきた脇役達の視点で物語は進行します。
第三者から見た、知季、飛沫、要一の姿が新鮮。
終わってしまうのがもったいないくらい、気づいたらダイブの世界にのめりこんでいました。とにかく全巻をとおして、すべての人物が魅力的に描かれていて、もややできすぎな感もあるけど、おもしろい!
スポ根なんて……敬遠していた自分を反省します。


森絵都「DIVE3」

努力型天才要一のストーリィ。
父母ともにダイビングの世界の第一人者という飛び込み界のサラブレッドとして、自らも早くから頭角をあらわす要一。
そんな(実は)努力型天才要一サイドのストーリィ。
この要一という人は、ものすごくストイックで、そして十分すぎるくらいの客観性を持ち合わせている。
カッコイイというよりは、ちょっと痛々しいくらいに。
その精神力の強さには、やはりひとかどの人間になる萌芽を感じずにはいられない。ヒーローってこういう男の子だよな〜と思いました。


森絵都「DIVE2」

津軽から来た飛沫は、今までの海への飛び込みから、プールでのダイブにいろいろな葛藤を抱えていた。
そんな時コーチからスワンダイブの話をきく。
1巻ではなんとなく好きじゃなかった飛沫といキャラですが、こうやって飛沫の視点で読むと、また別の発見があり、最後にはめちゃくちゃ応援したくなっていました。


佐藤正午「彼女について知ることのすべて」

その夜わたしは人を殺しに車を走らせていた。わたしは小学校の教員で小心な一市民である…。女(遠沢めい)の愛人の殺人計画。男は断念し、女は実行する。8年後、刑期を終えて女が出所するが、男は…。
現在と八年前の過去が交互に書かれているのですが、同一の視点でもよかったような、と思った。どうしても散漫な印象になってしまうから。どちらか一方の比重を大きくして、その時代の彼らを読ませてから、過去か現在のどちらかをサラリと語ってほしかった。
おもしろいストーリィなのに、イマイチのめり込めないのは、著者の書く男の人は好きになれないから。なんだか自己弁護が多くて……。


小泉迦十「火蛾」

12世紀の中東。聖者たちの伝記録編纂を志す作家・ファリードは、取材のためアリーと名乗る男を訪ねる。男が語ったのは、姿を顕わさぬ導師と四人の修行者たちだけが住まう山で起きた殺人だった。
宗教的な話題や、押し問答が多く、そっち方面に興味がないので読んでいてとても疲れました。
ミステリという場で発表されたため、異色で目をひいたが、もう結構です。
世界の構築はとスゴイと思うのですが……。


矢崎存美「幽霊は生死不明」

シリーズ3作目。奇妙な霊視を引き受けたことから、真人と美海と咲子はある殺人事件に関わることに。美海の謎も明かされる?
ということで、避暑地の別荘に招かれたおなじみのメンバーに謎がふりかかるわけですが、今回はなんといってもラストの美海の言葉。真人との関係がわかります。でも、ネタバレ→「もしかしていつか実体になって真人の前にあらわれるのでは?」←ネタバレと思っていたので、ちょっとさみしかったです。


アンソロジー「悪夢制御装置」

短編集で収録作は「ふたり遊び」(篠田真由美)「 闇の羽音」(岡本賢一)「ラベンダー・サマー」(瀬川ことび)「 階段」(乙一)の4作、乙一狙いで買いましたが、前アンソロジー「殺人鬼の放課後」同様楽しめました。
「ふたり遊び」ちょっとゴシック風の、ラストにサプライズを持ってくるホラー。
「 闇の羽音」わりと、一般的(?)なホラー。怖いというか、映画チックだな、と。
「ラベンダー・サマー」あんなものが映っているのにそれをチャンス!と利用するという発想がウケた。
「 階段」あらすじだけならそれだけの話になってしまいそうなプロットも、乙一が表現するとこうなるのか、という乙一の力量みたいなものを感じた。
あと、彼自身の著者紹介はいつもおもしろいですね。


堀田あけみ「もういない あなた」

彼の昔の彼女、曾祖母の娘時代、自分と見知らぬ誰かのツーショット…。ふと目にした写真に写っていたのは、閉じこめられた過去。「一枚の写真」に心を揺り動かされるひとびとの心象風景を描き出す短編集。
嫌いな継母への反抗で実母の写真(それもにらみつけているようなものを)目につくところに置いたり、「幸せにしてあげたい」と思ってしまったおじさんとの間に子どもができてしまったり、と写真はあくまでも小道具でその写真がキッカケで語られるストーリィは深く切ない。


森絵都「DIVE1」オモシロイ!

学園生活を送りながらオリンピックをめざす少年ダイバーたちの話、の第1巻目。
未完の大器?知季くんのストーリィ。
オリンピックとかダイブとか、日常接しない世界なのに、主人公の男の子知季くんがリアルなせいか、スルリとその世界に入り込めた。中学生の男の子の繊細さや、一見根拠の無いように感じられる強さ、ちょっと間抜けな一生懸命さが、読んでいるといとおしくなってきます。


舞城王太郎「熊の場所」オモシロイ!
「僕がまー君の猫殺しに気づいたのは僕とまー君が二人とも十一の時、つまり同じ保育所に通っていた僕たちが一緒に西暁小学校に上がり、同じ教室で勉強し始めて五年目の頃だった。」第15回三島由紀夫賞候補作「熊の場所」、それに「バット男」「ピコーン」の3編収録。
印象に残ったのは「熊の場所」にでてきた、「恐怖を消し去るには、その源の場所に、すぐに戻らねばならない」という言葉。
熊に襲われた主人公の父親の話で、熊に襲われ危機一髪で逃れるがまたとって返す、それは「一生このまま、熊に対して感じた恐怖を抱えたまま生きていくのが嫌だったから」。父親は「その場所」に戻り、そして恐怖を克服した。
そうか!と思いました。逃げっぱなしはいけませんね。
「バット男」は恋人がバスケに夢中でかまってもらえない女が激しくて怖かった。
「ピコーン!」はどうしようもない彼氏を更正させようとする女の子の一人称小説、元気あるし、ミステリっぽくもある、そしてやはりバイオレンスです。ちなみに「ピコーン!」は閃いた音。後の「阿修羅ガール」ではシャピーン!になってました。(笑)

赤川次郎「濡羽色のマスク」

1年に一度更新の、莢香シリーズ15作目、莢香29歳です。
しっかり者の莢香は相変わらず、人に頼られ自分はなかなか幸せになれません。15年も読んで親近感わきまくりなので、こういう展開が続くと、こっちもツライです。
今回は河村メインのストーリィでしたが、人間なにがキッカケで転落するかわからないな、としみじみ。そしてなんで男ってこう弱いの!?とムズムズしてきます。弱くなるのも一つの成長の形なのだろうか……?
今回登場した里美は印象深いキャラ、もしかして再登場もあるのだろうか?


宮部みゆき「あかんべえ」オモシロイ!

深川に開店したばかりの料理屋「ふね屋」は悪い出来事が続き、客足が途絶え気味だった。一人娘おりんは、ある日幽霊を見ることができることを知り、知り合った幽霊を成仏させようと奮闘を続けるが、やがてそれはお店の存続にもかかわってくるのだった。
おりんに優しくしてしまう幽霊達が、おもしろいです。
おりんのまっすぐな心根がそうさせるのでしょう……それにおりんのおじいちゃんがまたいい味だしてます。宮部さんのかくおじいさんて毎回筋が通っていてイカしてますね。


井上夢人「クリスマスの4人」

1970年のクリスマスの夜。ある秘密を共有してしまった4人の男女。そして1980年、1990年、2000年と10毎年のクリスマスに集まり、その度に1970年の忌わしき記憶を揺り起こす出来事が起こる。
こういうの好きな設定だし、読みやすくもあったのですが、盛り上がりも盛り下がりもしませんでした。
メインの謎である「いるはずのない人物」の種明かしはイマイチ。


井上夢人「ダレカガナカニイル」

警備保障会社に勤める西岡は、ある新興宗教道場の警備にあたることになるが、そこで火事にあい、それからというもの頭にダレカが話しかけてくるようになる。
自分の正気を疑いつつ、あれやこれや検証しようとするあたりはリアルかもしれないが、こっちは本の中のSFとして読んでいるので、ややもどかしい。早くこの状況を認めて話を先にすすめてくれ!と思ったりしたが、やっぱこうしないとリアルさが増さないのかも?
ラストには驚きました。結局これは中に入っているのがダレカ?という犯人(?)当てミステリであるかもしれません。


佐藤正午「ジャンプ」

「リンゴを買って、五分で戻ってくるわ」そう言った彼女がそのまま消えてしまった。
彼女はどこに行ったのか?どんな事情で消えたのか?自分の意志で消えたのか?主人公は彼女足跡を追うのだが……。
「Y」がおもしろかったので、間をおかずこちらも読んでみた。
そして、読み出したら引き込まれてしまった。ただ、こっちの主人公の男性は、イマイチ好きになれませんでした。
「失踪」と聞くと、ミステリマニアとしては事件に巻き込まれたのか!となるが、そのようであり、そうでもなくあり。
心中のバランスというものはあやうい均衡で成り立っているようです。
ちょっとの不在が永遠の不在にもなり変わるのだなと思うと、いろいろなことを選び取るときの心構えが違ってきそう。


森博嗣「アイソパラメトリック」

写真集&ショートストーリィ集。。
おもしろかったのは、写真のキャプション。
絵だけみていると「そこらの風景」なのに、キャプションを読んでから見ると「特別な意味を持つ風景」になるのです。
物事を様々な角度から見、さらにそれを反転して説明する、みたいな…、ちょっと変わった着地の仕方がおもしろい。
ショートストーリィも、森氏独特の世界観からなっており、ジャンルも多種多様。
一日1編+1ショット、寝る前に読み、その不思議さをかみしめながら余韻を持って眠る、そんなふうに読みたい本です。


岸本葉子「マンション買って部屋づくり」

実は私は他人の部屋(間取りとかインテリア)が、とても気になるヒトなのです。
インテリア雑誌なんかも好きだし、電車に乗っていて目線にマンションがあったりすると、つい食い入るように窓越しのインテリアとか見ちゃいます。(←良くないですね)
この本もそんな「この人の作る部屋ってどんな?」という気持ちで手に取りました。
女の人が一人でマンションを買うのはすごく大変なことだけど、やっと手に入れた自分の部屋のインテリア作りはとても楽しそう。読んでる時、わたしも模様替えしたくなってウズウズしました。


戸梶圭太「なぎら☆ツイスター」

組の金を持ち逃げした舎弟のおとしまえをつけるため、群馬県の那木良へ来たエリートヤクザ桜井だが……。
とにかく笑えるドタバタコメディです。那木良の田舎ぶりを説明する描写もおかしいし、登場人物は個性的&バカ炸裂だし、「溺れる魚」をしのぐエンターテイメントっぷりが圧巻。
この人の作品てどうもゲロ&流血というシーンが多くあり、部分的に苦手だったりしたのですが、これもそういう部分はあるものの、やりすぎのあまり吹っ切れて気になりませんでした。
ああ、しかし、ほんとに……(笑)


ジル・チャーチル「風の向くまま」オモシロイ!

以前は、外国の作家のミステリーばかり読んでいたのに、今では海外の作家ではこのジル・チャーチルしか新作を読めていません。
それだけに、わたしの中でかなり注目の作家さんです。
さて、本書ですが、これは今までのジェーンシリーズとは舞台も時代も違い、1931年というちょっと過去のお話。
ニューヨークの上流階級で育った兄妹ロバートとリリーだったが、大恐慌のあおりで一転貧乏生活を強いられていた。しかし、そんな二人の前に大伯父の遺産を条件付きで相続できるという話が舞い込んでくる。
グレイス&ファェイヴァー・シリーズと銘打たれたこのお話はまだ続きそうですが、事件はちゃんと1冊で解決できるのでご安心を。クリスティのミステリを読んでいる時のような懐かしい雰囲気を味わえた。
兄妹もそれぞれ魅力的。ジェーンシリーズとまったく趣の異なるこのシリーズ、次作が楽しみです。


新井素子「ハッピー・バースデー」

理解ある優しい夫、初めて書いた小説の受賞と、順風満帆だったあきらの生活にストーカーの影がちらつきはじめた時、あきらの人生は一変するのだった。
最近とんと新作が出ないと思っていたら、どうやらこの小説がそうとうな難産だったらしいです。あとがきで難産の理由を語っていますが、新井素子さんならさもありなんという理由に苦笑。
ストーリィは「おしまいの日」に通じる?かな?
日常だったものがちょっとした出来事から破壊されていくというような展開をみせますが、本書はラスト近辺がおもしろいです。こういう決着のつけかたが実に新井素子らしい、ちょっと主人公あきらと作者がダブりました。
人間の心の中ってなにげにホラーですね。


佐藤正午「Y」オモシロイ!

アルファベットのYのように人生のある地点が分岐して2つの人生を体験できるとしたら?
そして実際に2度目の人生を体験していると訴える人物があらわれたら?
「時間を超えた究極のラブ・ストーリー」という大げさなコピーがついていましたが、内容はラブストーリィというよりはミステリに近い感じだった。静かでしっとりしていながらも、読みだすと途中でやめられないような魅力があり、すぐに虜になってしまった。
しばらくこの作家の本を読んでいなかったが、これからはもっと注目してみようと思わせるに十分な1冊だった。


東野圭吾「レイクサイド」

子供の中学受験勉強のため、姫神湖の別荘に集まった四組の親子の前に転がる死体。私が殺したと訴える妻をかばうため、夫と親たちは死体の始末を考えるが…。
複雑な事情が絡み合い、不思議な余韻を残すミステリになっている。東野圭吾という作家のミステリは、いつもヒネリがあって惹かれる部分がある。ラストよかったです。うまい!


JKローリング「ハリーポッターと秘密の部屋」オモシロイ!

超有名ファンタジーの2作目。
最悪の夏休みをすごしていたハリーのもとにへんなヤツ(ドビー)がやってきます。彼は自分を痛めつけながらハリーに学校へもどるなと忠告しますが、新学期を迎え、同級生ロンとその兄弟とともにホグワーツにもどってきたハリーはさっそく事件に巻き込まれます。

新しい先生や不思議な事件、それに前作にも増して魅力的な小物の数々、ハリーの世界はどんどん広がり、目が離せませんでした。
1巻より好みでした。話題になるだけのことはある。


島田荘司「インドネシアの恋歌」

以前文庫を持っていたのにまた図書館でハードカバー版を借りてしまいました。(タイトルが違っていたので読んだ本だと気づかなかった)
「インドネシアの恋歌」「見えない女」「一人で食事をする女」の3編とその3編を語ったエッセイ収録。
再読でしたが、やはり印象に残ったのは前回同様「見えない女」だった。雰囲気が良くて。
「一人で食事する女」ではドイツの古城の描写が良くて、本物を見たいなぁと思った。
3編とも日本人の男性と現地の美女との恋愛&謎といった共通点がある。
この延長線上が「サテンのマーメイド」?とか思ったり。



2002[1][2][3]

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