食品業へのISO9001:2000品質マネジメントシステムの導入

記事提供:山口 博氏


6_8 製造及びサービス

製造及びサービス提供について、具体的にどういう手段、方法を通じて実行していくのか、管理方法を定めます。

食品においては安全な品質確保を前提とした、製造プロセス、出荷流通引渡しにおけるすべて工程を考え、要求されるサービス活動を適切に管理するようにします。

6_8_1 製造工程の管理

製造工程では安全な品質の確保・納期の適切化、生産活動の効率化を主軸におき、一定かつ安全な品質の確保において必要なプロセスの管理を目的とします。また、プロセスと結果が要求品質を満たしうる条件を維持しているか、定期的に検証を行う方法も含める必要があります。

管理内容
運用文書
手順
衛生標準作業
製品規格の管理
作業手順の管理
工程品質の管理

最終製品のロット管理

製造フローダイヤ
HACCP計画
生産作業手順
_工程は製造フローダイヤグラムに示される。
_作業手順は各種参照手順、計画書に基づく。
_工程管理は作業担当者により所定のシートに日々記録される。

_管理責任者はこれを日々精査する。

_最終製品はロット毎に識別され抜取り検査を行う。

_引渡時は規定(表示事項、規格)を担当者が確認し出荷する。

_工程は1ヶ月ごとに科学的な手法で検証評価する。

 このように定めておくと、全体の流れが明確になります。製造出荷移行において、製品やサービス活動に重要な影響をもつプロセスについてもどうように管理方法を明確にします。

6_8_2 製造及びサービス提供に関する妥当性確認

食品の場合、最終消費者における賞味使用時あるいは使用後において評価が明確になります。

それらは、売りっぱなしや販売者に預けっぱなしであればまるでわかりません。

「何も言われないから大丈夫なんだ」とは一方的な論理です。

段階別に、その製品が市場に出荷され、販売され、消費者にどう賞味されているのか、また、そうした部分に影響を強くもたらす工程については管理の方法、担当者に必要な資質、技術的方法を明確にしておく必要があります。

1)製品の機能性や安全性の加工に重要な影響を及ぼす工程を特定し、担当者の資格要件を明確にする。

HACCPプラン上に規定された重要管理点の工程は、結果の妥当性が安全品質において重要な意味をもつ部分であり、設備の管理維持や作業従事者の適正な資格要件により維持されるものでもあります。

これらの工程について要員の資格、不在時の代行者、検証方法(HACCP計画全体の評価)を適切な頻度で実施するなどの方法を定めておく。

2)市場における販売管理指導や情報提供によるサービス活動

実際に市場流通の中では、往々にして適切な状態で製品が管理されていないケースが多くあります。

品質表示事項とぜんぜん異なる状態で店頭販売されていたり、注意表記事項が明確に理解されていなかったり、実際に多くの消費者苦情として寄せられる製品問題は、こうした流通過程における必要な情報管理、サービスが適切に実施されないことによって生じている現状もあります。

食品は売りっぱなしでなんとかなるようなものではありません。消費者に届けられる各流通業者がお互いフォローしあってはじめて消費者に間違いの無い製品が届けられることができます。

依然、実際にあったケースとして、出荷販売した製品にカビが発生したという苦情が消費者電話に寄せられました。

流通過程をたどっていくと、荷受業者以降、中卸業者が3社介在し、小売に流れていました。

どの業者も扱った製品の状態がどうだったかわからない・・との反応でした。しかし、中間卸業者で、大量のストック品が必要な管理条件を満たさないで販売卸されているという事が判明しました。

ここでは結局「そんな細かいことをいうなら、もうお宅の商品は引き上げる」という反応でした。

こうした複雑な流通過程でいえることは、お互い、卸し利益のことばかりが先にたって、肝心の中身の質についてはまるで意識がない感覚です。これは、上流の管理を確実に下へ共鳴させていくようにする必要もあると感じます。  

6_9 識別及びトレイサビリティ

 食品において特に、プロセス内の製品識別は製品ロットを明確にする前提となります。また、工程における製品の識別は、消費者や顧客の意図しないものが間違って出荷されないようにする最低限必要な管理であるといえます。

また、識別は、問題が発生したとき、速やかに追跡可能な状態にし、問題被害の発生を最小限に制御するための必要不可欠な管理といえます。

プロセスにおいて、扱う原材料の性質や条件が異なれば、それも明確単位やロットを適切な方法で識別管理する必要もあります。ごっちゃにされていればどうしようもありません。それは乳業メーカーの食中毒問題でも明らかです。

膨大な調査時間、労力を1年費やしても、明確な答えが出てこなかった根本的原因は、こうした識別と追跡性がプロセスの中でしっかり実施されていなかったことが原因の大きな要素であると感じます。

また、出荷後、実際に問題があったとき、製品自体の識別やプロセスとの相関性が明確でなければ、被害を迅速に食い止め、必要な処置を実施することはできません。

食品においては、識別とトレイサビリティは不可欠な条件といえます。

 製品の識別
a.凍結原料_適合品は規格名、受入納入ロットを確認し識別表により指定冷凍保管庫に格納する。
b.包装資材_適合品は受入担当者の捺印後、指定の棚及び置き場へ現品票とともに収納する。
c.製造仕掛品_品名、数量、重量、加工日、保管期限及び保管管理担当者を記載した識別表により指定保管場所にて保管する。
d.最終製品_最終製品は個々の製造ロット番号或いは所定の製造日表記により識別される。

実際に、トレイサビリティについて各段階の追跡性情報体制を明確にしておく必要があります。

製品
販売流通課
試験検査
生産課
購買課
製品ロット番号
納品伝票
出荷記録    
在庫管理記録
製品試験成績書
QC管理記録
設備管理記録
製品引記録
受入調査記録
原料受払管理台帳
保管施設管理記録

 また原材料の管理では使用ロットと製品ロットの整合性や、アレルギーやBSE危害についてのトレースが可能なように整備する必要があります。

製品ロット
主原料
原産地由来情報
原産地証明
副原料
配合品の由来と製造管理記録
配合物質の特定
食品添加物
複合添加物品及び製造由来
包装材
安全データ及び検査証明
 

6_10_1 検査測定機器の選択

 製造工程及び製品保管、流通及び製品品管理で使用される検査測定機器は種類別に精度要求を明確にする。

工程検査
要求精度
計量機類
1_10g単位 誤差1g以内
温度計
標準温度計誤差1.0℃以内

6_10_2 検査測定機器の精度管理と校正

 使用する検査測定は適切な頻度、要領でその精度管理と保守管理を実施します。

精度の適切な維持管理について日々の使用や定期的に必要な方法を明確にします。

また、それら点検管理内容は記録し、精度管理の状態をシール票などで明示するような必要もあります。

それら一連の精度管理の状態は連続的に前段の製品の追跡性情報にトレースできるようにする必要があります。

管理部門
検査目的
種 類
点検・校正の方法
生産部門
製品及び配合品重量計量
計量機
日常管理:JIS検定分銅にて使用時に精度点検を行う
定期検定:製造から3年毎に計量検定所の検定受検
温度管理各種
温度計
標準温度計にて3ヶ月毎に点検する
金属異物の探知
金属探知機
メーカーによる保守管理(1年毎)
検査部門
製品試験検査
標準温度計
PH測定機
外部検定依頼(3年毎)
外部校正サービス(3年毎)
購買部門
重量の計量
計量機
JIS検定分銅にて使用時に精度点検を行う
庫内温度の測定
温度計
標準温度計にて3ヶ月毎に点検する
販売部
温度チェック
温度計
標準温度計にて3ヶ月毎に点検する