6 ISO9001とHACCP
ISO9001:2000品質マネジメントシステムを食品企業の中でどのように運用するか、このスタンダードをどのように考え、自社の企業マネジメントとしていくかは、それぞれの考え方によりますが、顧客重視、消費者の立場にたって考える企業マネジメントの質が問われている現在の食品産業においては、具体的な考え方が明確に示されております。
そして、ISO9001:2000のマネジメントシステムと向き合うとき、食品産業のマネジメントにはHACCPシステムの考え方が必然的に要求されます。
以下にISO9001:2000版品質マネジメントシステムの要求規格とHACCPシステムの適用を示す部分を簡単にまとめます。※詳細は割愛
6−1 品質マネジメントシステムと品質マニュアル
品質マネジメントシステムが規格要求事項に従って、自社のどんな目的により構築されているか、また、必要なプロセスを明確にし、文書化し、実行し維持することを宣言します。
そして、それらの手順や計画を示す品質マニュアルの文書化を構築します。
特に食品産業においては公衆衛生に対する安全品質ニーズを根底に据える必要があります。公衆衛生に対する社会的責任はメーカーの存在そのものを示すものであります。
その上で構築された品質マニュアルは、消費者や顧客重視の前提にたった品質マネジメントシステムであり、製品への責任とサービスの品質に関わる活動に適用されます。
品質マネジメントシステムは製品品質に対する消費者への責任と顧客満足に影響を与える活動全般を適切に継続的に管理することを求めるように定めていきます。
ISO9001:2000で求められている「文書化された手順」により、何を、誰よって、いつどこで行われなければならないかを記述していきます。
6−2 経営者の責任
経営者のコミットメントとして、品質マネジメントシステムの運営が消費者、顧客志向を基本においた企業マネジメントとして考えていることを明言します。
経営者はこの品質マネジメントシステムの効果的維持管理において技術的な手法、管理、資源の提供などすべてについて責任を有し、常に変化する市場環境、社会環境に適合できるよう定期的なレビューを行う責任があります。
食品産業においては、消費者の権利保護や社会的責任、顧客満足のために実行するべき活動、情報の抽出、技術的システムの導入、品質マネジメントシステムを効果的に運営していくため方法を明確にする必要があります。その中で、経営方針と同質の品質方針を定め、その方針を満たすための具体的な活動と計測可能な目標を定めていくことが必要になります。
@消費者、顧客志向・重視の考え方が基本のシステム。
Aそのための品質方針
B品質方針を達成するための品質目標
6−3 マネジメントレビューへのインプットとアウトプット
マネジメントレビューは、運営する品質マネジメントシステムを適切な状態に維持するため、どのような手段、方法により内部改善の手がかりとする方法を明確にします。
1)レビューにインプットする内容と情報
2)どのような場面でレビューを行うか。
3)予見される技術的ニーズへの対応や新たな技術要求
レビューの結果、適切な方法で品質マネジメントシステムを運営するためにどのような方法で事項させ、速やかにシステムに反映させるための方法を定める。
6−4 資源の運営管理
食品ニーズを消費者、顧客の重視の考え方にたって満たすためにどのような経営資源を提供していかなくてはならないかを明確にします。
当然、GMP(食品適正製造規範)要求事項も経営資源として考えなくてはなりません。
充実したサービス活動や社内伝達方法の一元化に必要なネットワーク環境も重要です。
1)人的資源
2)インフラストラクチャー
3)作業環境
6−5 製品実現
食品製造販売における製品の実現とは、会社の品質方針や品質目標に掲げたテーマについて品質マネジメントシステムを計画し実行し継続的改善の中で提供される製品やサービス全体の品質をどのように具現化していくかということを明確にすることです。
食品ニーズに求められる責任を製品という形に具現化し、提供する上で、トータル的にどのような計画で実行するか、その手段を具体的に定めて行きます。
製品の実現には、品質マネジメントシステムのプロセスの相互関係によって明確にされたすべてのプロセスに対し計画をします。
その方法とは、品質マネジメントシステムの全体像でもある、ニーズの抽出(インプット)から始まり、会社システムの中でPDCAを通じアウトプットされるまでの過程全体であります。
提供する製品とサービスの性質によってどのような手段を講じるかはそれぞれ異なります。
必要なプロセスをもっとも効果的な方法で計画し、実行する方法を明確にします。
特に食品産業のプロセスにおいては以下のようなことが必要になります。
6−5−1 顧客関連のプロセ
製品の実現はこの顧客とのプロセスにおいてどのような要求と約束を満たしていくかから始まります。食品においては、まず、顧客とはどの相手を指すのかということを考えなくてはなりません。一次契約取引業者のみのことを考えれば良いのかというと、そうもいえません。
食品は複雑な流通過程を経て一般小売業者、量販店を経由し、消費者へその製品が販売されます。
そして、商品そのものの評価価値は最終消費者の評価によって定められます。
食品の最終評価は連動して直接の取引顧客のニーズを満たすことにもつながります。
a. 販売メーカーとしての顧客
b. 流通業者としての顧客
このように考える必要があります。
その上で、製品に関する要求事項を明確にする方法を定めます。
aにおける販売取引上の契約確認方法、納期、要求事項、受注の方法、変更管理の方法、取引開始後の付帯サービス活動の必要性、それらをどのような方法で社内にフィードバックするのかということを考える必要があります。
bにおいて、販売後の消費者との窓口を通じて、フォローする方法を考えることも重要なプロセスであります。
必要に応じ社内において顧客への供給前にレビューすることも必要になります。
A)消費者や顧客要求事項がどの程度明快に特定されているか
B)暗黙のニーズがあるか。
C)製品もしくは、サービスは顧客要求事項をどの程度適切に満たしえるか。
D)製品サービス、責任、保証及び規制に関する自社の責務。
E)当社の提示した納期及び条件、製品仕様いついて、顧客は理解認識しているか。
6−5−2 顧客とのコミュニケーション
上記、顧客との取引の中で双方向のコミュニケーションが可能な状態を維持する必要があります。
顧客とのコミュニケーションの中で特に最近必要であると感じることは、アレルギー物質や主原料に関する情報をいち早く消費者や顧客に提示する手段、方法の必要性です。
膨大にあるこれら内在的な情報は、今、末端消費者の選択性において有用に生かされ活用されることが求められております。その中にあって、製品包装表示では明確に説明できないものも沢山あります。
このような顧客、消費者とのコミュニケーションのひとつにインターネットを通じて広く製品に関する情報を明確に利用してもらう環境を整備することも必要であります。
製品個々に使用されている原材料の明細や由来、アレルギー物質となる固体、添加物、そしてそれらの安全データシートなど明確に開示することが求められているのです。
「何も言われていないから・・」とするのは十分な顧客コミュニケーションを実行しているとはいえません。
食品産業の現場で特に目立つ傾向として、とても秘密が多すぎるのです。
製造由来の追跡性情報などは常識的なニーズであると感じています。
今回の原産地偽装問題にあっても、小売までの流通段階で消費者に不透明な部分が非常に多すぎるため誘発した間違いであったともいえます。
あたりまえに、今目の前にある食品がどのような段階を経て生産され、輸入され、どこで加工され、目の前にあるのか、消費者が追跡可能な環境が無いということがこの問題の直接的な原因であるようにも感じます。