食品業へのISO9001:2000品質マネジメントシステムの導入

記事提供:山口 博氏


 

1. ISO9001:2000品質マネージメント・システムとHACCPとの取り組み 

 ここ最近みられる食品メーカーの消費者の信頼への問題は、企業の売り手利益優先型の経営がもたらす断片的な弊害の現れとして顕著に表れているものでもあります。
食品企業は今なにをしなくてはならないのか、それは、部分的、一過的なものではなく、今後の展望を含め企業そのものの質の改善と責任、約束を社会的公共性の原点にたってマネジメントを考えていかなくてならないことを意味すると思います。
また、食品産業におけるISO9001:2000への取り組みはこれからの食品メーカーの企業体質を大きく変える影響をもつ重要なシステムであると思います。
ここでは、社会や顧客、消費者という公共性に対し、食品メーカーがどのような品質マネジメントシステムを考えてく必要があるのかを考えてみました。

2. 食品にもとめられるニーズ


現在加工食品にはJAS法をはじめ、食品アレルギー表示制度、遺伝子組替え食品に関する表示、栄養表示、危害予防のための管理など、様々な法的要求が新たに要求されております。
これらはいずれも、食品が私たちの生活の中に無くてはならない一番身近なものであり、かつ、生産物として常に消費者の権利に大きな影響を与えるものであるためです。
しかし、これら様々な要求事項を、その場その場で断片的に対応していったのでは、企業マネジメントとして非常に実際的なものにはなりません。
結果、それらの要求ニーズを表面的に考えてしまい、違反性に抵触しないための形骸化された管理に陥ってしまいます。実際的に、そうした状況では企業はいつまでたっても消費者や社会的なニーズにあった経営マネジメントを展開していく術を見出すことはできません。
これらの様々なニーズはいずれも消費者の権利、消費者が不利益を被ることがないために何をするかという前提にたったものであり、結果として公衆衛生や消費者に対する製品責任をメーカー果たしていくことができるようにしなくてはなりません。

新JAS法 遺伝子組替え食品の品質表示 いずれも消費者の権利保護の観点にたって表示基準であり、製造管理基準であり、適正な選択性に資することを目的として制度化された法的ニーズである

新JAS法
遺伝子組替え食品の品質表示
いずれも消費者の権利保護の観点にたって表示基準であり、製造管理基準であり、適正な選択性に資することを目的として制度化された法的ニーズである
生鮮食品の品質表示
加工食品の品質表示基準
有機JAS
有機食品のJAS表示制度
食品衛生法
栄養表示制度
アレルギー食品表示制度
総合衛生管理製造過程

そして、これらは同時に、これら消費者ニーズの観点にたって考えるという本質を基盤においた企業マネジメントを展開していくことができなければ、非常に大きな間違いを起こしやすい側面を持っています。

「やらなくてはならないのか・・」という考え方ではなく「なにをしなくてはならないか」ということを考えていく必要があると思います。今、明確に、そうしたマネジメントを考えていく大きな岐路にたっていると考えなくてはなりません。

3・顧客重視、消費者重視の企業マネジメントの必要性

上記のように、今までの企業論理の観点にたったマネジメントでは、これら様々なニーズについて、本質的に対応することはできません。

また、ある意味、上記にあるような法的ニーズというのは、基本的なことにすぎないと思います。

むしろ、常に顧客、消費者ニーズに目を向けたマネジメントを考えていくと、これらは食品産業にとって必然的なものであることがわかります。しかし、あらためて考えてみると、消費者ニーズは食品産業の現場の中では漠然と反面的に気が付いていた部分がたくさんあるのではないでしょうか。それが、各種法制度の中で整理されてきたのだという印象も受けます。

4・スタンダードと品質マネジメントシステム

規格やスタンダードの導入を通じ、まず、私たちはそこから客観的な“あるべき水準”を見出していく必要があります。プロセス個々にある、本来自らが負う責任と管理基準を常に見出していくことができなくてはなりません。

「この段階の管理基準はこれでいい・・」

それを決めるのは、製品責任の上でどうなのか?或いは顧客要求基準の上でどうなのか?

前段の要求ニーズを満たす上でどうなのか?

こうしたことを自社プロセスの中で常に考え更新する必要があります。

そして会社全体が要求品質を満たしていくことができる継続的な改善活動へと展開されていかなくてはなりません。目指すところは常にスタンダードの一歩先にある市場や社会へのニーズを満たしうるところにあります。

様々なスタンダードは本来そのように向き合っていくことができなければ、規格やスタンダードそのものが必ず間違った方向に一人歩きし、独自の解釈や基準に満足するだけの弊害を生みます。

食品メーカーは今、消費者や顧客の重視の考え方にたった全体のフレームとなるマネジメントシステムの中で各種ニーズを満たす技術的なスタンダードを組み入れた統合マネジメントを考えていく必要があります。

5・なぜHACCPが必要なのか?

HACCPシステムとは、食品の危害予防管理プログラムであり、常に最善の安全性を確保するためのシステムです。これをどのように実際的な企業マネジメントとしていくかが今、食品産業の場で問われているところでもあります。

HACCPシステムでは、まず、使用原材料、その調達過程にいたるプロセスからはじまり、製造加工過程、製品管理、流通の中で考えられる潜在的危害性を一つ一つ予防、防止し、特に重要な危害性に影響を及ぼす段階においては基準を定め、監視、記録、是正、検証を行うよう計画をたて、食品そのものの安全性をトータル的に管理する一連のシステムです。

このシステムの中にあっては、BSE危害についても、当然原材料の安全性において十分管理することが必然になります。アレルギー表示においても、適切な表示を行うことで、消費者の適切な選択性において十分配慮することが必要になります。

HACCPシステムを運用するこは、消費者の権利保護においてメーカー製造者がやらなくてはならない不可欠な取り組みであるといえます。

 

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