経営者の責任

品質方針

品質に対する責務

経営者は自分の企業の品質方針を定め、文書化することが求められている。品質方針とは、ものとサービスの「品質」に対する企業の姿勢である。すなわち、品質に関する顧客と自身の事業のかかわりについて全従業員が達成する目標を定めたものである。たとえば、「藤沢製作所は、卓越した製品の品質とサービスを顧客に提供する。」などであり、この品質方針に関しては大企業のそれと変わらないと考えてよい。さらに、この品質方針を社員を含む人々に理解しやすいように、所定期間に達成すべき品質目標を明確にして文書化することが求められている。この品質目標は曖昧なものでなく、自社の社員や顧客にとってなにが大切かが明確になっているものである。たとえば、顧客満足度の向上、返品率、顧客苦情数などである。

この品質方針は組織の全てのレベルで理解され、実施され、維持されている必要があるので、品質方針書に会社のオーナーが署名したものを会議室などに掲示する方法が一つである。当然のことながら、社員全員が品質方針が何で、自分達の役割は何かを理解していることが大切である。

組織

だれが何に責任をもつか?

中小企業では従業員数が少なく、いくつかの業務を兼務するのが一般である。したがって、責任と権限を共有することが多くの企業で見られる。ところが、この章では品質に何らかの影響を及ぼす作業を管理し、実施および検証(内部監査)する全ての社員の責任、権限および相互関係は明確に文書化されていること求めている。これに対し、ガイドラインでは、それらを文書にするときには、実状さえ的確に反映しおればよいのだとしている。しかも中小企業の実状を配慮し融通性をもたせることを示唆し、簡単な組織図で責任と権限をはっきりさせることもよしとしている。

経営資源

何が必要なのか?

ここでの経営資源とは、要員と設備のことである。顧客の要求した納期にあわせて納品できるだけの要員と設備を確保することを要求している。要員の確保にしろ設備の更新にしろ、これは中小企業での一番難しい問題であるのに、何を言っているのかと反発されるでしょう。そこで、規格は要員の教育・訓練、臨時雇い或いは業務の一部を下請けに出すによってこの問題を解決するように示唆している。これはすでにどんな中小企業でも日常的に行われていることなので、とくに参考とはならない。だから、実情を説明できれば問題はない。ただ一つ注意しなくてはならないことは、品質保証活動が正当に実施されていることを検証するために、内部監査員が組織の規模に応じただけ教育・訓練により養成されていることをここで要求していることである。

品質管理責任者

品質システムの面倒をみるのはだれか?

この要求事項の意味することは、全社的な立場から品質システムそのものや実施状態を管理・維持する責任をだれか権限のある人に任命することである。品質管理に関する知識がある人がいればよいが、いない場合には適当な人を選び、内部監査のセミナーにでも出席させればよい。任命書(辞令)が発行されているかを監査時にチェックされるのでかならず任命書を保管しておくこと。

経営者の見直し

品質システムは機能しているか?

定期的に品質システムを見直すことがここで要求されている。システム自体が妥当で効果があることを確認出来るほど充分な状況であるならば、年1回の見直しでもよいとしているが、現存の品質システムに変更が必要な場合は、”より繁雑に”見直しを行う必要があるとしている。しかし、この見直しの頻度は品質マニュアルに記載されるので、変更するには手続きが繁雑になる。よって、年2回とし、必要に応じて見直すとしておくのが簡便と思う。議事録はかならず作成する必要がある。しかも、経営者は、品質もしくは品質システムに関連する改善命令を品質管理責任者を含む管理職に対して文書で発行しなくてはならない。
さて、ここで見直しの対象となる事項は何かだが、ガイドラインでは次のようなものだとしている。
  品質問題と適応した処置策
  顧客の苦情
  システムの運用状況、そして目標達成度合
  内部品質監査(外部もあればその内容)の報告書
  改善ないし変更すべき領域
  未解決の問題点と処置策
  品質方針と達成目標の妥当性
  教育・訓練の必要性
  設備、作業環境および保守に関わる問題
このように、広範囲な事項を討議するのが「マネージメント・レビュー」(経営者の見直し会議)である。当然ながら、品質計画のみならず事業計画にも見直しがいる場合も生じる。


|目次||次のページ|