全員参加の意識向上に役立つ
中小企業の経営者には、多くの苦労を経て今日の会社にしたという意識を強く出し、全員を掌握しようする人がいる。昔の苦労をしっている従業員は理解し、指示に従うかもしれないが、そんなことを知らない従業員はそっぽを向かないともかぎらない。このような従業員に愛社精神を植え付けるのに便利な仕組みがISO9000にある。それは冒頭に述べた教育の重要性を打ち出していることである。このシステムは、手順書でなにもかも縛るのではなく、教育によって仕事の仕方を従業員に教え、十分な能力や技能を身につけた人に資格認定をあたえることができるとしている。この資格認定は特殊工程に従事する人に与えるのが通常だが、この手段を上手に使うのが得策である。何故なら、規格では、特殊工程に従事する人以外に与えてはならないとは決して言っていないからだ。しかも、この制度を上手に作ると、作業工程の手順書も作らなくてもよいケースも考えられる。最低でも、簡単な手順書を作成して、資格認定をしておけば、普通の常識をもっている監査員は適合であると判断してくれる。
このことでいつも感じることを述べたい。それは、日本の経営者はもっと従業員を上手にほめる方法を学ぶべきだと思う。ほんのつまらないことでも立派な表彰状やトロフィーを従業員に贈与して、その功を労うことをしているのを経験したのは、アメリカの研究所とシンガポール工場に勤務していたときである。特に、現場での作業員は、このように表彰してもらうと仕事への愛着心を強める効果は大きいと知った。だから、わずかな費用で効果的な表彰制度をぜひ採用されることを推奨する。たとえば、ISO9000認証取得を記念にして、仕事の品質改善に大きな貢献をした従業員に「ISO9000賞」で褒章するでもいいではないか。いくらでも考えられることである。これはぜひ実践していただきたい。<戻る>
スムースな世代交替に役立つ
後継者へのバトンタッチが中小企業での一つの問題であることは前述した。これまでに幾度もISO9000はトップダウンで進めて行くシステムだと説明してきた。この特徴を上手に運用すれば、スムースな世代交替に役立つとするのがこの一文であるが、やや強引な理屈とも自分自身で思えるところがあるので、もし反論があればおしらせ願いたい。
経営者が交替するときには、どうしても社員の間で今までの仕事がどう変化するのかが最大の関心事となる。この懸念は、私自身が上司が交替する度に実際に体験してきたことなので、まず間違いないと思う。とすると、従業員の不安をすこしでも少なくする手段を考えなくてはならないことになる。そこでISO9000のシステムが導入されていれば、すべての業務が文書化されているので、仕事の仕方は少なくとも大きな変化は無いと暗黙のシグナルを従業員に伝えられる。しかも、ISO9000の導入により経営者のリーダーシップを社員の前で明確に発揮しなければならない場面が多くなり、そのような機会に品質保証システムは変わらないと説明することにより従業員の不安を少しでも和らげることができるのではないかと思っている。本当にそうなのかは実際に体験したことがないので、自信はない。このような利用はあまり推薦できないこと述べておく。<戻る>