ISO9000品質システム構築のステップは?

これでなければならないと確定されたステップはない。そこで、「中小企業のためのガイドライン」(ISO事務局発行)の付属書を参考にしたステップを示す。しかし、これは単なる一例として挙げただけでこれが唯一のそして最善の方法ではないと示唆していることを伝えておく。以下がその9ステップである。なお、原文そのままではなく、理解し易いように要約であり、書き換えている。

1. 経営者は、自分たちの企業が行っている主要な業務活動はなにかを書き出す。たとえば、製造業なら製品は単品なのか多品種なのか、部品なのか完成品なのかなど何でもよい。
2. これで自分の企業に最も適したISO9000規格を選ぶ準備ができたわけです。書き出した主要な事業活動のリストを見て、その中に設計・開発に関連するものがあるかどうかを確かめてください。あれば、ISO9001である。もし設計を行っていず製品規格あるいは仕様書に照らして製造しているだけなら、ISO9002を選択することになる。
3. 関連するすべての従業員を巻き込んで、各々が責任をもっている業務のプロセスを追って書き出す作業を開始する。業務を実施するのはだれか、結果を確認するのはだれか、その業務をいつ、どこでするのかをきちんと整理することになる。ここで注意しなければならないことが、いくつかある。それは、ある一定の技能がいる仕事をしている場合には、業務の詳細を記述するよりも資格認定を引用するだけで十分であることだ。また反対に、臨時従業員によって行われる作業ならより詳細なものが必要になる場合がある。しかし、最も重要なことは文書を単純にすることである。
4. この段階では、管理監督する立場にある人が書き出した業務の内容を整理することである。ここで整理された文書は品質システムの手順書になる。したがって、ある書式を使って、今後の改訂・追加・削除などが簡単に出来るように作成するのが一般に行われている手順書の作成だ。
5. これからは、品質管理責任者が責任をもって行う作業になる。すなわち、ISO9000の規格で求められている項目に照らして、でき上がった手順書が要求項目全部を満たしているかを判断することになる。もしも、ある要求項目が満たされていないと判断された場合には、手順書に付け加えるか、新しく作成する必要がある。企業の活動内容によっては、作成の必要の無いものもある、たとえば顧客支給品の管理である。
6. いよいよ出来上がった手順書に基づいて作業を行う実施段階に入る。しかし、あくまで手順書で指示されたとうりに業務ができるかどうかを試す実施である。したがって、現実を反映させるために従業員がすべて参画することになる。そうすることによって、品質システムは、すべての従業員にとって無関係な文書とはならなくなる。そこで、注意点がいくつかある。不必要な文書、書式をつくらないこと。現在おこなわれていること以外に、こうしたい、こうすればよいと思って書き加えないことが肝要である。また、現行の書式に署名する欄を設けるとか、現行の書式をすこし拡張するだけで良い場合があるので、新たに書式を増やすことはできるだけ避けるべきである。問題が起こったとき、良い提案がされたとき、またはなんらかの処置を顧客や従業員がもとめているときには、かならず記録を残すことをこの段階で始めることである。最後になるが、手順書を変更・追加・削除することがかならずおこるが、承認された手順書を使う訓練もここで行うのが最適である。
7. 品質システムを業務運営上に関連するものとして、単純で機能的に仕上げるのが、この段階である。自分の役割と責任を認識できるものになっているかを再確認すること。品質システムは、業務がどのように、いつ、どこで、場合によってはなぜおこなわれたか、業務の管理は規定どうりにおこなわれているかを記述したものであるから、だれでもいつでも利用できるようにする。言葉もなるだけ平易で誰にでも理解出来るのがよい。重要なことは、品質システムどうりに業務が行われていることを証明するには文書しかないことを明確にすること。
8. 品質システムのさらなる改善の段階である。この段階で行うことは、品質システムが業務および製品品質の向上・改善に役立つことに焦点を合わせて改良を行う ことが主たる目的となる。とくに、製品品質の改善をこの段階、すなわち、ISO9000導入の初期に進めると効果のある。このときに改善活動を同時平行で進めることは、顧客に対する信頼感を高めることができるに違いない。
9. 新しい品質システムの導入によって、業務と製品品質は変わってくるはずだ。その変化を確実に視野にいれ、コストの低減を可能にする領域を明らかにすることもできるはずだ。たとえば、従来から行われていた検査工程あるいは工数を減らすことを考えて見ることも出来るだろう。導入による最大の効果を期待するなら、品質管理目標を達成するために、ISO9000の要求事項に対する理解をさらに深めることによって、いま作り上げた品質システムを単純化し、重要なプロセスの改善に役立てることも出来る可能性がある。

私見であるが、このステップを忠実に守っていたら、20ー30名規模の企業でもたいへんな時間を費やさなければならないと思う。なぜなら、このような 作業をこなす人がいないのが悩みであるのではないだろうか。よって、自然にコンサルタントに頼ることになっているのが、実情ではないかと推測している。しかし、手順書を業務にあわせて作成することが出来るコンサルタントがいるのかどうかは大きな疑問である。このような事情に配慮して、「コンサルタントの活用」についての注意事項が、このガイドラインにも記載されたと推測する。 コンサルタントの活用に関する解説もあわせて熟読していただきたい。<戻る>

ISO9000品質システムのKey Pointをまとめられないか?

品質管理を実施していない企業は日本ではないが、ISO9000品質システムの特異性は次のようにまとめる事が出来る。

1。品質に影響する全ての仕事に対する手順を確立し、文書化しなければならない。一般の企業では、手順はあるが文書化されていないか、文書があってもばらばらで統一されていない場合が多い。また、日本の企業では口頭で仕事を指示することが多いが、ISO9000では文書による指示、命令、実施の記録が要求される。
2。文書化された手順書は経営者もしくは上位の管理責任者が承認しなければならない。手順書はしばしば改訂されるが、その度に承認が必要となる。
3。社員は忠実に手順書に従って仕事をする。手順書に記載されていない方法、すなわち、自己流で仕事を決して実施してはならない。
4。手順書で記録を求めている場合は必ず記録を残し、保存する。
5。不適合品(不良品)ははっきりと識別できるように、何らかの方法で製品と区別する。また、不適合品の発生原因を明確にし、再発防止のための是正処置を実施し、記録に残す。
6。品質システムの教育訓練を全員に実施し、必ず記録する。
7。特殊工程に従事する人には資格認定が必要で、記録されていなけれ ばならない。
8。内部監査を定期的に実施し、記録に残す。
9。監査結果は経営者に報告されなけばならない。
10。不適合品の発生や監査結果の報告により、経営者は品質システムを見直すことが必要である。
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ISO9000と全社的品質管理活動(TQC)と融和出来るか?

出来る。TQCは各社まちまちの方法で実施されているが、ISO9000に基ずく品質システムを構築することでTQCを国際的基準まで引き上げられると考える。日本の企業が実施しているTQCの基本的思想は、品質は全ての利害関係者が求めているもので、次工程はお客様のつもりで仕事をし、内外とのコミニュケーションを良くし協力的な態度に徹することと要約出来る。この思想は何らISO9000と矛盾するものではない。むしろ、TQCとISO9000を統合し、TQM(Total Quality Mangement)に品質管理活動を格上げしようと考えている企業もあるようだが、これも一つのやり方ではないかと考える。いずれにしろ、ISO9000の認証を取得しても、TQCをやめることも、その必要性もないことは確かである。ただ、Top-Downのアプローチに変わり、経営者の品質に対する責任が重くなることは避けられない。この点だけはTQCの本来の姿と異なるかもしれない。これが私の意見だが、飯塚悦功先生の”ISO9000とTQCの再構築”(日科技連)にTQCの専門家からの意見が詳しく述べられているので参考にされるとよい。<戻る>


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