1 適用範囲
1.1 一般
本国際規格は、品質マネジメントシステムのための要求事項を明記する。そこで、組織は以下の事柄を行うことになる。
a)顧客並びに適用される法令および規制上の要求事項を充たす製品をいつも提供する能力を証明することが必要となる。 備考1:本国際規格においては、「製品」という言葉は顧客、あるいは製品の実現プロセスに向けた、または求められた産物に適用される。これは、購買を含め製品実現プロセスから産出されるいかなる予期されたアウトプットにも適用される。
備考2:法令および規制上の要求事項は、法的要求事項と表現されることもある。
b)システムの継続的改善のためのプロセス、および顧客並びに適用される法令および規制上の要求事項に従うことの保証を含めて、システムの効果的活用を行い顧客満足を高めることを目標にする。
製品だけでなく、法令および規制上の要求事項を順守する企業に対しての要求事項を明確にする内容となっている。日本企業は法令順守ということでいつまでも後進国と同じような意識を持つのではなく、先進国の企業としての振る舞いをしてほしい。法令違反をするような企業に認証を与えることのないように監査機関が力量を高めることも必要かもしれない。経営者の品格もここで問われている。さて、備考2で表現されている「法令および規制上の要求事項」という用語はISO14001でも採用され、両立性を高めている。
1.2 適用
本国際規格のすべての要求事項は汎用性があり、 また、タイプ、規模および提供される製品に関係なくすべての組織に適用されるように意図されている。
組織および製品の性格による理由で本国際規格の要求事項のいずれかが適用できない場合には、除外することも考えられる。
除外された場合には、これらの除外が第7章の範囲に入る要求事項に限定されないこと、また、そのような除外が顧客と法令および規制上の要求事項を充たすための組織の能力、もしくは責任に影響を与えない限り、本国際規格へ準拠していることの権利を請求できない。
「法令および規制上の要求事項」という文言が加わっただけで、内容としては何らの変更はない。適用の除外が第7章の範囲に入る要求事項に限定されていることも変わりない。
2 引用規格
以下に引用した文書は、本文書の適用には不可欠のものである。発行年度がある引用規格では、引用された版だけが適用される。発行年度がない引用規格では、引用文書(修正を含めて)の最新版が適用される。
ISO9000:2005 品質マネジメントシステムー基本および用語
2005年版のISO9000用語集が採用された。
3 用語および定義
本国際規格のためには、ISO9000に定められた用語および定義を適用する。
本国際規格の文言のすべてにわたって、用語「製品」が出てきたならばいつでも、それは「サービス」の意味もありうる。
製品にはサービスも含まれることは以前から決まっていた。サービス業が品質マネジメントシステムを採用することが流行となっている。それだけでなく、製品設計などのサービスが外注されることが増えているので、品質マネジメントシステムによって管理することの重大性が増している。
4 品質マネジメントシステム
4.1 一般的要求事項
組織は、品質マネジメントシステムんを確立し、文書化し、実践し、維持管理するとともに、本品質マネジメントシステムに従ってその効果を継続的に改善すること。
組織は、以下の事柄を行うこと。
a)品質マネジメントシステムおよび組織全体への適用のために必要なプロセスを決める。
b)これらのプロセスの連鎖と相互作用を明確にする。
c)これらのプロセスの運用と管理が効果的であることを確実にするために必要な判断基準と手段を決める。
d)これらのプロセスの運用とモニタリングのために必要な経営資源と情報が利用できることを確実にする。
e)これらのプロセスをモニターし、(適用可能な場合)測定し、分析する。そして、
f)これらのプロセスの計画された結果と継続的改善を達成するために必要な行動を実行する。
これらのプロセスは本国際規格の要求事項に従って組織により運営管理されること。
製品の適合性に影響を与えるプロセスをアウトソースすることを組織が選択したならば、組織はそのようなプロセスの管理を確実にすること。これらのプロセスに適用される管理のタイプと程度は品質マネジメントシステムの中で明確にすること。
備考1:上で言及している品質マネジメントシステムに要求されるプロセスには、マネジメント活動、経営資源の提供、製品実現、および測定、分析、改善のためのプロセスを含む。
備考2:アウトソースされたプロセスは、組織の品質マネジメントシステムに必要なるものの一つとして明確にされるが、組織にとっては外部にあたる関係者によって実行されることが選択されたプロセスである。
備考3:アウトソースプロセス適用されるべき管理のタイプと性質は、以下のような要因によって影響を受ける。
a)要求事項に適合する製品を提供する組織の能力についてのアウトソースプロセスの潜在的な影響力
b)共有されるプロセスの管理の度合い
c)必要なる管理を7.4項の適用を通じて達成する能力
アウトソースプロセスの管理を確実に行ったからといっても、すべての顧客、法令および規制上の要求事項への適合性に対する責任から組織は逃れられない。
設計・販売部門だけ自社で行い製品の製造は外部委託するビジネスモデルはいまや一般的に行われている。電話での問い合わせサービスなどに見られるようにアウトソーシングは拡大し、多様化している。この現実に対し規格は、備考で多くのことを規制しているように見えるが、品質マネジメントシステムに組み入れることを求めている基本的なことは何も変わっていない。ただ、備考2によって、アウトソースプロセスとは何かということの理解はしやすくなった。備考3は、購買プロセス(7.4項)を適用することで、アウトソースされた製品やサービスの適合性を確保する手段も採用できるとしている。下請けによる製品・サービスを購買品として管理することもその性質によっては選択できる。そして、最後にアウトソーシングしたからといっても製品に関する企業責任は逃れないと明確にされている。食品の安全にかかわることが社会問題化したが、まさにこのような事態を想定した規格文言である。外部プロセスを管理せず、ただ購入して販売するという安直な管理体制は見直されて当然のことではある。国際規格には関係なく、「企業の良心」というものをいま一度考えなおす必要があるのではなかろうか。