ISO9001修正のなかみはなんなの? |
国際規格の採用はどのようになされるかの説明と規格化のためのプロセスが説明されている。また、国際規格の準備作業は、国際標準化機構の中で構成された技術委員会によって一般的に実施されると説明されている。この規格文書の一部は特許権の対象となる可能性があることが条件となっていることを述べている。もし特許権を明らかにしなければならないようなことになったとしてもISOは責任を負うことはないと注意書きされている。
序文
0.1 一般
品質マネジメントシステムの採用は、組織の戦略的な決定であること。組織のビジネス環境、その環境の変化、もしくはその環境の変化に関連したリスク、組織の変化するニーズ、組織特有の目標、組織が提供する製品、組織が採用しているプロセス、組織の規模と組織上の構成によって、組織の品質マネジメントシステムの設計と実行に影響を与える。品質マネジメントシステムの構成面で画一性を求めたり、あるいは文書を画一的にすることを暗示する意図はない。
この規格で明示されている品質マネジメントシステムの要求事項は、製品の要求事項を補足するものではない。「備考」として符号が付けられている情報は、関連した要求事項の理解、もしくは明白にするための指針である。
この国際規格は、顧客、製品に適用される法的および規制上の要求事項、そして組織そのものの要求事項を満たす組織の能力を評価するために審査機関を含め内部および外部関係者によって利用できる。
ISO9000およびISO9004で述べられている品質マネジメントの原則は、この国際規格を策定する際に配慮されている。
規格を適用できるのは国や地方自治体の「法的および規制上の要求事項」を満たす企業であることが強調されている。また、「製品に適用される」法的および規制上の要求事項の文言が付けられいっそう明快になった。法律や規制違反を行う不祥事が続いているが、認証を取得したならば、経営者はいっそう襟を出さす必要がある。
0.2 プロセスアプローチ
本国際規格は、顧客の要求事項を充たすことによって顧客満足を高めるために、品質マネジメントシステムを構築し、実践し、その効果を向上させているならばプロセスアプローチの採用を奨励する。
組織を効果的に機能させるためには、多数の連結された活動を明らかにし、管理する必要がある。経営資源を利用しながらインプットをアウトプットに変換することができるように管理された活動は、ある種のプロセスとして考えられる。一つのプロセスからのアウトプットが次のプロセスのインプットとなることはよくあることである。
組織内のプロセスを明確化することと相互作用とともに、これらのプロセスを一つのシステムとして適用すること、その上で望ましいアウトプットを産出するための運営管理が「プロセスアプローチ」と呼ばれる。
プロセスを進行させながらコントロールを行い、これらのプロセスの組み合わせと相互作用の全部と同様に、プロセスシステム内の個別のプロセス間の連結すべてにわたって前もってことに備えることができることがプロセスアプローチの利点である。
品質マネジメントシステムの範囲内で利用される時には、このようなアプローチは以下の事項についてその重要性を強調している。
プロセス志向の品質マネジメントシステムモデルは、第4章から第8章までに表現されているプロセスのつながりを図示した図1に示されている。この図では、インプットを明確に示す上で顧客が重要な役割を果たすことを示している。顧客満足のモニタリングは、組織が顧客の要求事項を充足したかどうかについての顧客の受け止め方に関する情報の評価を求めている。図1に示されているモデルは本国際規格のすべての要求事項を網羅しているが、詳細な階層のプロセスは示されていない。
備考 加えるに、「Plan-Do-Check-Act(PDCA)」として知られている手法は、すべてのプロセスに適用できる。PDCAは次のように簡略して記述できる。
Plan:顧客の要求事項と組織の方針に従って期待された結果を実現するために必要な目標とプロセスを確立すること。
Do:プロセスを実行すること。
Check:製品、目標、および製品に対する要求事項に対してモニターし、測定し、結果を報告すること
Act:プロセスの成果を恒常的に改善するための行動を起こすこと。
優良な製品やサービスを産出するためにこのプロセスアプローチが最大に利用されることを期待して、品質マネジメントシステムとして体系づけられたプロセスアプローチの定義について微細な変更がなされている。また、プロセスアプローチを採用したならば、決して忘れてはならない重要なことは何かが列挙されている。これらのことをきちんと実行しないとISO9001の効果は表れない。なお、図1のプロセスモデルは掲載することは省略する。ここで指摘しておきたいのは、規格では「action」ではなく「Act」(動詞)であることだ。多くの日本の品質管理にかかわる人が「アクション」と言っているが間違いだ。時に耳障りになるので訂正してほしい。デミング博士も憂いているのではなかろうか。
0.3 ISO9004との関係
現行版のISO9004は、ISO9001との整合性を保つために策定された。両方の規格は、会い互いに補って完全になるようになっているだけでなく、独自に利用することもできる。
ISO9001は、組織の内部的な適用のために、あるいは認証のために、あるいは契約の目的のために品質マネジメントシステムの要求事項として何をなすべきかをはっきりと書いている。顧客と適用される法的または規制上の要求事項を満たす上での品質マネジメントシステムの効果に焦点を合わせている。
ISO9004は、特に組織の持続可能な成功を目指すための運営管理の面でISO9001比べより幅広い品質マネジメントシステムの目標に対する指針である。ISO9004は、組織の全般的な業績を体系的かつ継続的に追及する上で経営者トップがISO9001の便益を拡大させたいと望んでいる組織に対してのガイドとして推薦できる。しかしながらISO9004は認証取得や契約締結を有利にすることを目的にはしていない。
この条項は変更されていないが、本ホームページで解説しているようにISO9004は大幅に変更される予定だ。もっとも現在のCD版は最終的に大きく変更されると思う。なぜなら、文言が成熟していない。英語文章の間違いもある。最先端の経営手法にも言及しているが、はたしてそれが国際規格としてふさわしいのかという疑問もある。いずれにしても、発刊はISO9001より大幅に遅れるのでまだ時間がある。予定は2009年だ。大いに議論していただきたいと思っている。
0.4 他のマネジメントシステムとの両立性
本国際規格を策定する際には、ユーザーコミュニティの便益のために二つの規格の両立性を強化する目的でISO14001:2004の条項を取り入れる配慮がなされた。
本規格は、環境マネジメント、職業健康と安全マネジメント、財務マネジメント、およびリスクマネジメント独特の要求事項のような他のマネジメントシステムに特化した要求事項は含まれていない。しかしながら、本国際規格は、組織の品質マネジメントシステムと関連のマネジメントシステムの要求事項との連携、もしくは統合を組織が実施できるにしている。本国際規格の要求事項に応じる一つの品質マネジメントシステムを確立する目的で組織が現有のマネジメントシステム(複数も可)を採用することも可能である。
「ISO14001:2004の条項を取り入れる配慮がなされた」という文言があるように環境マネジメントシステムとの両立性に大きな配慮がなされている。よって、同じ意味をもつ用語や文言はできるだけ統一するように今回の規格は作成されている。ISO14001:2004のときにも同じことが行われ、聞くところによると規格作成に携わった委員たちはISO9001との両立性を高めるために大変大きなプレッシャーを受けたようだ。非公式な情報ではあるが、いずれ将来は、品質と環境の規格は統合されると言われている。まさに今回その布石が打たれたと言える。