組織が持続可能性の面での進捗を明らかにするために、その戦略と運用を評価することがよかろう。そのような評価の結果は、持続可能性、成長、および改善を強化する機会を示してくれるだろう。 評価をチームで行えば、一般的によりバランスのとれ完全な評価の結果が得られる。
備考:付属書AおよびBは、組織の戦略と運用を評価する手法を提供している。
5 組織を取り巻く環境
5.1 一般
すべての組織は、その規模が大きいとか小さいとか、または営利であるとか非営利であるとかに関係なく、変化が起こっている外部環境の中で運営されている。いま起こっている生のデータや情報を提供し、組織の成績を維持し向上させるような組織上の変革を決断できるようにするために組織が運営されている環境のモニタリングと分析が必要である。 企業を取り巻く環境の変化に鈍感になればその企業はおしまいになる。「KY]という言葉がはやっているが、日本全体が「KY]になっているのではないかと思うことがある。ヨーロッパのように国が違うと経済や文化が全く異なるが経済は一体になっている世界では鈍感ではいられない。アメリカのように自国が世界を牛耳っていると考える国民とは違う。アメリカ流を模範とする日本企業の「KY]を高めることが一番いま必要だと考えるがいかがなものだろうか。 朝日新聞の経済気象台の記事の一部を紹介しよう。「生きている実感をつかまえる幸福」を求めて、日本人は「手ごたえのある生活」を目指し始めたと分析し、将来、効率と合理性を価値として消費する経済から、「手ごたえ」という価値を消費する「手ごたえ経済」に向かうと予測している。さてさて、日本経済はどこに向かって行くのだろうか。企業環境の変化に敏感になる必要がある。書き留めておきたい新聞記事がもう一つある。自動車の販売代理店の社長の言葉だ。「顧客は単にモノやサービスの対価としてお金を払うのではなく、発見や驚きといった、自分の気持ちの変化にもお金を払う」。
組織の環境をモニタリングすることは、限定はしないが、通常、以下の事項に役立つであろうデータの収集と考察を含む。すなわち、
組織は、方針および戦略を形作るプロセスへの本質的なインプットとして関連する外部のデータを分析し、組織に与えるかもしれない潜在的なインパクトに関してのシナリオを提案すべきである。
データと情報は、次のようなタイプの問題を分析することができるように収集すべきである。
6 戦略、方針およびコミュニケーション
6.1 戦略的方向づけ
組織とその環境との相互関係は独自性が高い。結論的に、持続可能性のためには、組織が自身の戦略的な方向付けを策定し、展開する必要がある。
組織は、外部および内部の環境を分析して持続可能性を維持するために必要な現在および将来の組織能力を決めるべきである。戦略的な方向付けは、組織の現在の能力と現在の環境もしくは想定される将来の環境を満たすために必要となる能力とのギャップを満たすことに着目して行われるべきである。さらに、これらのギャップの理解を通じて判明したリスクと機会に基づいて組織は戦略的な方向付けを策定すべきである。組織は、環境の変化に対応することが確実にできるようにその戦略的な方向付けを見直し、必要に応じて改定するべきである。
組織環境を理解し、分析することにより、経営者は、組織のミッションとビジョン、その達成に求められる戦略的な方向付けを確立することができるようになるべきである。
ミッション(なぜ存在するのか?)とビジョン(どのようにないたいのか?)は、組織内外の分析に基づいて策定されるべきである。 組織は、社会的な環境の中で明らかな目標、もしくは目的を持つべきである。組織は、利害関係者、組織の特性および組織自身の力量への関係を理解した上でミッションとビジョンを明確にすべきである。
ミッションは、組織が利害関係者のための創造を追い求める価値を記述するべきである。
ビジョンは、組織が達成したいと望み、いつかの時点でその必要な力量を備えたい状態を表す。
組織は、持続可能性の達成に向けたミッションとビジョンを満たすための戦略を策定すべきである。これには以下の事項への配慮を行う必要があろう。すなわち、
方針と目標は、組織の望む結果を明確にするとともに、これらの結果を達成するために組織が経営資源をいかに活用すればよいかを支援する。
組織は、以下の事柄を行うための戦略に基づいて方針と目標を確立すべきである。すなわち、
組織のミッション、ビジョンおよび戦略に基づいて策定された方針は、目標を確立し見直すための枠組み(フレームワーク)を提供する。
目標は、方針を実際の運用に向けるために用いられる。すなわち、目標は、「方針を満たすためには何をなすべきか?」という質問に答えを与える。目標は、方針と一貫性がなければならないし、その達成度は測定が可能でなければならない。目標の達成は、組織の以下の事柄によい影響を与えることになる。すなわち、