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4 持続可能性に向けての経営
 4.4 持続可能性の評価 

組織が持続可能性の面での進捗を明らかにするために、その戦略と運用を評価することがよかろう。そのような評価の結果は、持続可能性、成長、および改善を強化する機会を示してくれるだろう。

 評価をチームで行えば、一般的によりバランスのとれ完全な評価の結果が得られる。

備考:付属書AおよびBは、組織の戦略と運用を評価する手法を提供している。

5 組織を取り巻く環境
 5.1 一般 

すべての組織は、その規模が大きいとか小さいとか、または営利であるとか非営利であるとかに関係なく、変化が起こっている外部環境の中で運営されている。いま起こっている生のデータや情報を提供し、組織の成績を維持し向上させるような組織上の変革を決断できるようにするために組織が運営されている環境のモニタリングと分析が必要である。

企業を取り巻く環境の変化に鈍感になればその企業はおしまいになる。「KY]という言葉がはやっているが、日本全体が「KY]になっているのではないかと思うことがある。ヨーロッパのように国が違うと経済や文化が全く異なるが経済は一体になっている世界では鈍感ではいられない。アメリカのように自国が世界を牛耳っていると考える国民とは違う。アメリカ流を模範とする日本企業の「KY]を高めることが一番いま必要だと考えるがいかがなものだろうか。

朝日新聞の経済気象台の記事の一部を紹介しよう。「生きている実感をつかまえる幸福」を求めて、日本人は「手ごたえのある生活」を目指し始めたと分析し、将来、効率と合理性を価値として消費する経済から、「手ごたえ」という価値を消費する「手ごたえ経済」に向かうと予測している。さてさて、日本経済はどこに向かって行くのだろうか。企業環境の変化に敏感になる必要がある。書き留めておきたい新聞記事がもう一つある。自動車の販売代理店の社長の言葉だ。「顧客は単にモノやサービスの対価としてお金を払うのではなく、発見や驚きといった、自分の気持ちの変化にもお金を払う」。

 5.2 モニタリング 
 

組織の環境をモニタリングすることは、限定はしないが、通常、以下の事項に役立つであろうデータの収集と考察を含む。すなわち、

  • 明らかにされた利害関係者(株主、管理職、社員、顧客、パートナーと社会を含む)の現在と未来の期待とニーズを明確にし理解すること
  • 代替品もしくは競合品の出現の脅威と機会につての認識
  • 組織が出現するであろうと考えられる新規市場・製品の機会に対する脅威と機会につての評価
  • 現在の顧客の傾向、ニーズおよび期待の理解
  • 法律および規制上の要求事項とその変化への認識を得ること
  • 労働市場と従業員利害関係者への影響の理解
  • 社会経済の潮流と組織の活動範囲での地域文化の側面を理解する
  • 新規の技術的変革を見張る
  • 現在の組織上およびプロセスの能力を理解する
  • 特に自社内で使っているプロセスに類似している主要なプロセスに対して他社で行われている優れた外部実践の明確化と学習(ベンチマーキングのことを示唆している)

     5.3 分析 
     

    組織は、方針および戦略を形作るプロセスへの本質的なインプットとして関連する外部のデータを分析し、組織に与えるかもしれない潜在的なインパクトに関してのシナリオを提案すべきである。  

    データと情報は、次のようなタイプの問題を分析することができるように収集すべきである。  

  • 明らかにされた利害関係者は彼らのニーズと期待を計画したように満たされたかどうかどのように考えているか?
  • いかにして顧客と明らかにされた利害関係者のニーズと期待が時とともに形成されているか?
  • 組織の現存する製品のどのような機能が顧客に対してもっとも大きな価値を現時点で提供しているか?
  • 顧客と明らかにされた利害関係者の変化するニーズと期待にこたえるために組織に促している製品は何か?
  • 組織の現製品のマージンや市場は中長期的にどのように展開するのか?
  • どのような新しい市場や機会が出現する可能性があるのか?
  • どのようなリスクが出てくる可能性があるのか?
  • 組織に影響を与えることになる法的および規制の環境でどのような変化が予測されているのか?
  • 中長期的にどのような競合環境が生まれてくるのか?
  • 組織が選択した市場に対しどのような特異な特性を提示できるのか?

    6 戦略、方針およびコミュニケーション
     6.1 戦略的方向づけ
     

    組織とその環境との相互関係は独自性が高い。結論的に、持続可能性のためには、組織が自身の戦略的な方向付けを策定し、展開する必要がある。     

    組織は、外部および内部の環境を分析して持続可能性を維持するために必要な現在および将来の組織能力を決めるべきである。戦略的な方向付けは、組織の現在の能力と現在の環境もしくは想定される将来の環境を満たすために必要となる能力とのギャップを満たすことに着目して行われるべきである。さらに、これらのギャップの理解を通じて判明したリスクと機会に基づいて組織は戦略的な方向付けを策定すべきである。組織は、環境の変化に対応することが確実にできるようにその戦略的な方向付けを見直し、必要に応じて改定するべきである。

     6.2 ミッションとビジョン
        

    組織環境を理解し、分析することにより、経営者は、組織のミッションとビジョン、その達成に求められる戦略的な方向付けを確立することができるようになるべきである。     

    ミッション(なぜ存在するのか?)とビジョン(どのようにないたいのか?)は、組織内外の分析に基づいて策定されるべきである。         

    組織は、社会的な環境の中で明らかな目標、もしくは目的を持つべきである。組織は、利害関係者、組織の特性および組織自身の力量への関係を理解した上でミッションとビジョンを明確にすべきである。     

    ミッションは、組織が利害関係者のための創造を追い求める価値を記述するべきである。     

    ビジョンは、組織が達成したいと望み、いつかの時点でその必要な力量を備えたい状態を表す。

     6.3 戦略の側面
        

    組織は、持続可能性の達成に向けたミッションとビジョンを満たすための戦略を策定すべきである。これには以下の事項への配慮を行う必要があろう。すなわち、

        

  • 動向を含む外的環境     
  • 利害関係者のニーズと期待     
  • 組織の能力と経営資源     
  • 過去から学習した事柄

     6.4 方針と目標
     

    方針と目標は、組織の望む結果を明確にするとともに、これらの結果を達成するために組織が経営資源をいかに活用すればよいかを支援する。

    組織は、以下の事柄を行うための戦略に基づいて方針と目標を確立すべきである。すなわち、

        

  • 組織の向うべき方向を示す     
  • 関連するすべての利害関係者に計画が確実に伝達される     
  • 方針と目標は持続可能性を目指していることを保証する

        

    組織のミッション、ビジョンおよび戦略に基づいて策定された方針は、目標を確立し見直すための枠組み(フレームワーク)を提供する。     

    目標は、方針を実際の運用に向けるために用いられる。すなわち、目標は、「方針を満たすためには何をなすべきか?」という質問に答えを与える。目標は、方針と一貫性がなければならないし、その達成度は測定が可能でなければならない。目標の達成は、組織の以下の事柄によい影響を与えることになる。すなわち、

        

  • 製品     
  • 運営面での効果     
  • 財務的な成績     
  • 利害関係者の満足、信任、忠誠   

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