注:このページに記載された内容の全部もしくはその一部を、ホームページ・オーナーの許可なく商用の目的で使用すること、またはインターネット上もしくは他の媒体で転載することを禁ずる。All Copy Right Reserved , Jan. 2008

4 持続可能性に向けての経営
 4.1 一般 

組織の持続可能性は、機会、変化、傾向、リスクに対する外部環境を自律的に監視する能力に依存している。同時に、組織は、外部環境に密着し効果的で、しかも品質マネジメント原則に基づくプロセスと整合させながら監視した結果に対応して学習し、変革し、改革する能力を保持する必要がある。今の日本企業の多くはこれを真剣に考える必要がある。海外の需要に支えられた製造業では、もはや生き残れない。国内市場が縮小している原因にはいろいろあろうが高齢化と人口減、そして労働分配率が低いことが大きい。それでも持続し続けるには金融、流通などサービス業の効率化がもっとも重要と考える。
持続可能性を勝ち得るには、組織はそのプロセスと同様に成果にも焦点を当てる必要があろう。持続可能性を追求するには利益など成果を無視することはできないと認めている。

4.2 持続可能性の本質的な特性 

持続可能性を成し遂げるための最も本質的な特性のひとつは、以下を行うことにより、組織が整合されかつ一貫した手段により経営されることである。すなわち、

  • ミッションとビジョンをはっきりと表現すること。
  • これらを達成するための戦略的な計画を策定すること。そして、
  • この戦略的な計画の実現を支援するためのシステムを実施すること。

    ミッションとビジョンを維持してゆくには、組織は、絶えることなく変革や改革を使いながらその環境を満たす努力をしなければならない。これには組織自身の状況と同等に、組織を取り巻く環境を継続して監視することが必要となる。
    持続可能性を統御する(managing)ために必要であるステップの連鎖は、よく知られている「Plan-Do-Chech-Act」のサイクルである。(著者注:日本では最後のActをよくアクションと言っているが、動詞の「Act」が正しい。)「持続可能性に向かう」とは、自律的な経営風土によって支えられ、P-D-C-Aサイクルの改善部分を強化する能力を高めるように常に試みることを意味する。
    「継続的改善」の考えを経営に当てはめれば、このような表現になるのだろう。ISO9001でのマネジメント・レビューで経営者はこの考えを実行しなければならない。これができなければ、ISOマネジメント・システムは何の役にも立たないと言いたい。

    4.3 持続可能性に向けての統御(managing) 

    持続可能性を統御するプロセスは、一般的に「Plan-Do-Chech-Act」サイクルに従うことになる。P-D-C-Aサイクルのステップと持続可能性を統御することの関係はどうなるかを示せば、以下のようになる。

    a)Plan

    1)意図

     持続可能な方法を使って組織と利害関係者のニーズを反映することに配慮して本質的な特性にかかわる戦略的な目的はあるか?

    文言が難しく理解しがたいかもしれない。しかし、企業を運営するには、顧客はもちろん種々の利害関係者の便益に配慮しないわけにはいかない。しかも、それらをマネージするための戦略を持たねばならない。出たこと勝負では経営しているとは言えないと言っているにすぎない。

    2)プロセスと構成

     本質的な特性に対する目的に焦点を当て留意するために適切で十分に明確化されたプロセスがあるか?

    非効率な縦割り行政が横行する日本では、  プロセス志向の運営とは何かがよくわからない。部門横断的に業務を運営することがいま一番必要になっている。そのためには、組織構成を変更することも必要ななるかも知れない。大いに議論し、プロセス志向の経営によってV字型回復をした日産を見習うべきだろう。

    3)経営資源

     適切な経営資源が計画され、本質的な特性を稼働させることができるようになっているか?

    日本企業の強みとされていた終身雇用はどうなったのだろうか。人的資源は長期的な視野がなければ確保できない。企業の将来は、社員によって支えられるていることをいま一度考えてほしい。

    b)Do

    1)実施

     本質的な特性にかかわるプロセスが計画したように実施されているか?プロセスは、他の組織のプロセスと特性に一貫してリンクされれいるか?

    日産の新車設計は、営業から販売まで部門横断的なグループによってなされていると聞く。ゴーン社長が来るまでは、購買部門は工場のことなど一切関知していなかったとテレビで話されていた。小さな規模の企業でも部門間には壁があることを認識したことがある。

     

    c)Check

    1)測定

     計画された結果はモニターされ測定されているか?この測定は、本質的な特性に関して有用で効率的な情報を提供しているか?

    2)検証

    プロセスと構成は計画されたように実施、もしくは変更されているか?経営資源は計画されたように配分され提供されているか?

    3)分析

     何が達成されたか?本質的な特性は組織の持続可能性に貢献しているか?改善されるには何が求められているか?

    4)学習

     この分析からどのような学習を組織は得たのか?  

    d)Act

    1)修正

     組織が当初満たしていなかった目的達成を確実にするためにどのような修正が必要とされたのか?

    2)改善

    どのような改善活動がプロセス、製品、構成およびシステム面で求められているのか?

    3)改革

     どのような改革や変化が表明されている組織のミッション、ビジョンおよび目標を達成するために求められているのか?

    持続可能性の改善の図による表現は、下の図1に示されている。

        

        

    前ページ|次ページ