Mr. & Mrs.Smith〜Mr. & Mrs. スミス

 ブラット・ピット、アンジェリーナ・ジョリーの二大スターの主演で、この作品での共演をキッカケに公私共にホットな話題を振りまいているだけあって、作品そのものよりも主演の2人の言動に注目が行きがちになっていますが、ハリウッド映画らしい痛快ラブアクションという印象をトレイラーを観て感じてていたので、非常に期待していた作品でした


 一目惚れで電撃結婚しスミス夫妻となった2人は、お互いに秘密にしていることがあった。それは2人共凄腕の暗殺者であったこと。直感的な行動で任務を遂行するMr.スミス、綿密な計画を立てて任務を遂行するMrs.スミス。そのことがバレないようジョンは建築業者、ジェーンはプログラマーと職業を偽り、5〜6年間も隠し続け穏やかな結婚生活を過ごしていたが、ある日お互い同じターゲットを暗殺するという任務を受けお互いの正体を知ってしまったのであった。正体がバレたらその相手を48時間以内に始末しなければならない…というのがこの世界のルール。2人はこの時を境にして、命を懸けた壮絶なバトルを繰り広げるのであった。

 という話で、設定からして無理ありまくりです(笑)。だって、お互いいくら愛し合っているからって、凄腕の暗殺者同士お互いの素性に約6年間も気付かないだなんて在り得ない。あんな生活していて、本当の仕事を隠せるわけがない。第一、出会いからしてツッコミ満載。一般人が一人旅なんて来られないようなコロンビアの危険な地域に、観光客ぽく一人で来ているだなんて怪しいだろ!特に女性のジェーンが一人で来ているだなんて、「同業者か?」てフツー疑うもんだと思うんだけど、一目惚れしちゃったみたいだから関係なかったようだ(笑)。そして、お互いの正体がバレた以降は、壮絶な夫婦喧嘩っていうか、とにかく銃乱射&肉弾戦と男女の戦いとは思えないくらい過激な方向まっしぐら!なんですが、派手にやっている割には大きな怪我を負っていなうというはお約束。閑静な住宅街で乱撃しまくっているんだから、近隣住人ならもっと早く警察に通報しないか?とか、最後の乱撃シーンなんてビジュアル的には痛快!だけど、「実際こんな上手く2人でいかないだろー」て感じでしたからね。
 とにかくツッコミたい放題なんですが、あらゆる矛盾点を主演2人のスターオーラでカバーしてます。なんていうか、2人のパブリックイメージを最大限に活かしている作品ですな。たぶん、この2人の主演じゃなければB級作品以下になっていたと思われます。そう思うくらい、「ブラットとアンジーの2人による2人のための作品」て感じでした。2人してとんでもない格好になることもあるんだけど、なんか常にスタイリッシュでカッコ良かったわ〜。特にアンジェリーナ・ジョリーはブラピよりも男前なシーンが多かったなぁ。


 冒頭は夫婦揃ってカウンセリングを受けているシーンから登場するんだけど、「結婚して何年目?」という質問で夫婦の意見が食い違っていたり(正確にはジョンの方がしっかり覚えていない)、セックスの回数を素直に言えなかったり、倦怠期を迎えている夫婦ぽい感じの2人の関係が強調されていました。しかし、だからこそ、お互いの正体を知った後の2人の関係がより「愛」に対してリアルになってきて面白いのです。

 お互いの正体がバレて、良い夫婦を演じながらもお互い虎視眈々と始末することを考えているという様は非常に面白かったです。特に、正体バレた初日のディナーなんて最高。刃物を上手く取り合ったり、食事しながら相手の出方を見ていたり、スリリングだけどコミカルで最高だったなぁ。そして、部屋を破壊しまくりながらも派手に撃ち合ったり殴りあったりしたけど、やっぱりお互いが本気で愛し合っていたと確信するやいなや、情熱的な夫婦になっちゃうだなんていかにもハリウッド映画です。
 しかし48時間以内に始末できなかったので、お互い自分達の組織から命を狙われるハメになり、2人は協力して自分達が始末されない道を模索するが、そこでお互いが同じターゲットを指示され殺し合いになったのは、お互いの組織が仕組んだ罠だという事実を知る。この理由がまた強引なんだよね〜。敵対する組織同士が相手の凄腕の殺し屋を自分とこの凄腕に始末させちゃおうっていう理由じゃなくて、2人が夫婦であることを知ったお互いの組織が、自分達の秘密が2人によって相手方へ漏れるのを恐れて2人いっぺんに始末しちゃえ!ってことになったらしい。つーか、2人が夫婦になって5,6年なのに、気付くの遅っ!…て感じですな。

 お互いを雇っていた2つの組織から命を狙われることになった2人は、お互い一緒に生きていくことを誓い協力し合って追ってを全滅させ、円満な夫婦として再スタートを切りハッピーエンドになりましたが、自分達を始末しようとした大元は潰してないし、な〜んか強引な終わり方でしたね。まぁ、続編を狙おうと思えば十分に作れる雰囲気でしたが…。


 ストーリーのことを考えちゃうと、「う〜ん」とやや消化不良な感じがしますが、お気楽に観られる痛快アクションとして捉えると非常に観やすい作品でした。展開としては、お互いの正体がバレでお互い平静を装いながら始末しようと虎視眈々と狙っている前半の方が面白かったけど、恋愛面で見るとお互い本当に愛していることを確信した後半の方が人間味あって良かった。
 正直言って、2人がお互いを殺し合おうとする展開が終始続くと思っていたので、後半の展開はちょっとだけ意外だったんですが、2人が同じベットで寝ているよりも、武器持って絡み合っている方がセクシーでドキドキ感のある雰囲気だったので、非常に過激な恋愛アクションだと認識しました。ある意味、愛に正直な2人の話かもしれませんね。




 …で、こっからミーハー語り。

 主演のブラピは『TROY』に比べて非常にソフトな雰囲気になっていましたが、やはり時代劇(コスプレ)よりも現代劇の方がハマっているなぁって痛感しました。ブラピて現代顔ですね。カーステレオをフルボリュームでガンガンに鳴らしながらノリノリで暗殺現場までやって来る姿とかカッコよかったもん。あと、「直感で動く」という役柄も、ブラピにはハマリ役だったなぁ。

 しかし、ジェーンに比べて、正体がバレた段階から「愛していたのに…」と本当に愛していたことを表明したり、結婚式には本当の親を呼んでいたり、寄りを戻した後に嘘を吐いていたこを次々とジェーンに告白したり、凄腕の殺し屋とはいえ人間味がとてもありました。あと、ジェーンが近所の奥さんの赤ちゃんを抱かされて戸惑っている姿を見て、「やっぱウチにも赤ちゃん欲しいな」て表情をしてみせた姿にはキュンときてしまった。

 正体がバレる前後に限らず、終始ジェーンに尻に敷かれているような感じで、非常に母性本能をくすぐられるキャラクターでした。トレイラーを初めて観たときは、「このヘアスタイルなの〜?」なんて思っていたんですが、あのヘアスタイルも含めてカッコよく&可愛く見えてしまったから不思議だ。
 特に、カーチェスしながらジェーンに色々と真実を告白している時、「実は結婚は2回目なんだ」と告白したら、ジェーンが本気で怒って急ブレーキかけてきて見事に転がった姿は最高でした。


 アンジェリーナ・ジョリーは『トゥームレイダー』の印象が強かったんですが、相変わらず逞しく男前な女性でした。内紛があちこちで勃発している危険地域に一人旅に来ていること自体在り得なくて、ターゲットを始末に来たという方がよっぽど一般的にも納得でけいるというのに、ジョンの眼には謎めいた旅人と映ってしまうくらい魔性の魅力がありましたな。
 それに女性ばかりのジェーンの組織は(大ボスは男のようだけど声のみだったし)、なんかいかにも!って感じのアマゾネス集団で迫力ありました。

 ジェーンの方がギリギリまで本性を隠すというか本当の気持ちをはぐらかしたりしていて、素直じゃないというか暗殺者に徹していたけど、ジョンを始末できたと思った夜に泣きながらシャンパンを飲んだり、ジョンから「(俺を)撃てよ」と言われて「撃てるわけないじゃない」と涙目で叫んだりしていたシーンが、強がっていた分、女らしく見えて意地らしく感じました。
 あと、先にも書いたけど、ジョンが6年間自分を騙していたことよりも(これはお互い様だけど)、結婚が2回目だと知って、緊迫したカーチェイスの最中だというのに急ブレーキ踏んでヒステリーを起こしながらジョンを叩きまくった姿は女らしかったです。だって、それ以外は沈着冷静で計算高くて、男前過ぎるんだもん。キーマンを2人で拉致してジョンが尋問している時に、答えをはぐらかそうとしたキーマンを電話機で「オラッ!」と殴った姿には惚れ惚れしましたわ。

 ジョンは今まで始末した人数を60人くらいと言っていたけど、ジェーンは5倍以上の人数を言ってのけていたから、本当に凄腕の暗殺者なんだろうね。まぁ、その割には、何度かジョンにターゲット横取りされていたみたいだけど…。

 ジェーン役は当初ニコール・キッドマンに決まっていたけど、彼女が降板してアンジェリーナ・ジョリーになったというのは有名な話ですが、このジェーンがニコールだったら、全く違う展開の話になっていたんじゃ?て思ってしまう。それくらい、アンジェリーナのジェーン役はハマッいてたし、彼女以外では考えられないキャラクターだった。




 まぁ、色々ツッコミ満載で話的には矛盾しまくりなんだけど、2人がカッコよくて幸せならまっ、いっか〜!という気分にさせる作品でしたね。これって、ある意味凄い。なんか、ブラピとアンジーのハリウッドスターの存在感を見せつけられた作品でした。正に2人じゃなければ成り立たなかった作品ですな!



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