アナキスト、アナーキスト、アナルシスト[Anarchist]、及びソシアリストについて、私が知っている範囲で列挙してみました。詳しい人物と詳しくない人物の差があまりにも大きすぎますので、全てにおいて短く、軽くまとめてみました。
アナキズムとは――
アナキズムとは無政府主義と訳されていますが、現在においてはそれ以上の意味で使われています。アナキズムとは、個を愛することであり、全体主義を認めないことであり、そして美しき相互扶助の観念を愛することであり、つまりは人間愛でもあるのです。
・日本のアナキスト
大杉栄 1885-1923
「自叙伝」
クロポトキンの「相互扶助論」の翻訳etc...。
香川県亀山市出身。東京外国語学校仏語科卒。
日本で最も愛されているアナキストの一人であろう。それがたとい女性絡みである日陰茶屋事件や葉山事件などで有名であるとしても(これを題材にした映画もあります)。
1908年の赤旗事件で投獄される。その間に大逆事件が起きて幸徳秋水らが処刑されたが、大杉栄は獄中にあったため死を免れた。大正元年『近代思想』、ついで月刊『平民新聞』を創刊。
文化学院創立者の西村伊作の弟に当たる大石七分の元で生活をしていたこともある。
最終的には憲兵大尉甘粕正彦らによって虐殺され、井戸に放り込まれた(甘粕事件)。今でもその井戸には、彼の死を悼んで集まってくる人がいるという。
なお、東静岡の方にお墓があるという。紹介しているサイトもありますので、ご覧になってみれば。静岡市東部の歴史散歩という項目だったかと。
『僕は精神が好きだ』『美は乱調にあり』『はじめに行為ありき』などは名言。
幸徳秋水(平民新聞記者・社会主義、無政府主義者)1871-1911
「社会主義神髄」etc..
高知県中村市出身。本名、伝次郎。
中江兆民に師事し、万朝報の記者として活動、その後平民新聞を創刊し、大逆事件の際、処刑される。
文化学院創立者の西村伊作の叔父に当たる、医者の大石誠之助とは知己だった。大石誠之助は活動家というわけではなかったのだが、幸徳秋水に活動資金を与えていたという名目で、共に1910年の大逆事件で死刑となる。
大逆事件そのものも、どうにも当局側のでっちあげであった可能性が高い。まあ、所詮は弾圧事件なのだ、真実性があるはずがないのも当然か。しかしそれにしても恣意的すぎる。
四万十川で有名な中村に、お墓がある。
・イギリスのアナキスト
ウィリアム・ゴドウィン(アナキストの祖と言われている)
「政治的正義」etc...
ところで、多くの人は彼の名よりも、彼の娘の名を知っていることだろう。彼の娘は「フランケンシュタイン」の作者である、メアリ・シェリーなのだ。
・ドイツのアナキスト
マックス・シュティルナー(スチルネル)(哲学者・アナキズム先駆者)1806-1856
「唯一者とその所有」etc..
シュティルナーの教育論に関しては一読の価値があります。特に日本のような教育制度の国家にとってはいい警句となるでしょう。
・フランスのアナキスト
ピエール=ジョセフ・プルードン(無政府主義社会主義者)1809-1865
「財産とは何か」etc...
・ロシアのアナキスト
ピョートル=アレクセイ・クロポトキン 1842-1921
「叛逆者の言葉」「相互扶助論」「麺麭の略取」etc..
ミハイル=アレクサンドロヰチ・バクーニン 1814-1876
「神と国家」etc...
・中国思想について(オマケ)
老子(春秋戦国時代の諸子百家の一)
老子の『小国寡民』という思想に関連して、権力の無き国家についても語られていて、それはつまりアナキズムの考えと通じるところがある。
さらに、この小国寡民の思想を元に書かれたのが、陶淵明の「桃花源記」であると云われている。
・キーワードリスト
相互扶助――ダーウィンの「種の起源」も参照されたし。
文化学院――西村伊作が自分の娘の為に設立した学院。儒教の思想が蔓延っていた当時、この学校は余りにも新しかった。なお、戦時中は真っ先に閉鎖され、西村伊作は逮捕。学院は捕虜収容所となる。現在でも当時の建物が残っており、また学校としても再開している。文化学院のWEBサイトはこちら。
万朝報――正しくはよろずちょうほう。また、まんちょうほうという呼び方もある(らしい)。日刊新聞。
平民新聞――社会主義週刊新聞。1903年に創刊され、1905年に廃刊。1907年に日刊として再刊したが、政府の弾圧により三ヶ月で廃刊。(広辞苑第四版より一部引用)
色々とまとめあげているサイトは他にも多いが、情報源が違うのか知らないが、少し違った感じになったかも知れない。ネット上で得た情報に関してはなるべく嫌ってみた。ただし、墓所関係はネット経由。
参考資料:
大杉栄自叙伝(中公文庫)――――――――――――――――――入手可
大杉榮語録(岩波現代文庫)―――――――――――――――――入手可
クロポトキン 大杉栄訳「相互扶助論」(同時代社)――――――入手可
近藤富江「文壇資料『本郷菊富士ホテル』」(講談社)
西村伊作自伝「我に益あり」(紀元社)
田中修司「西村伊作の楽しき住家」(はる書房)――――――――入手可
日本の名著「大杉栄」(中央公論社)
日本の名著「幸徳秋水」(中央公論社)
世界の名著「プルードン、バクーニン、クロポトキン」(中央公論社)
D・ゲラン編 長谷川進訳「アナキズムアンソロジー『神もなく主人もなく』」(河出書房)
G・ウドコック著 白井厚訳「アナキズムI・II」(紀伊国屋)―入手可(復刊)
アンリ・アルヴォン著 左近毅訳「アナーキズム」(白水社)――入手可
アナキズム叢書「クロポトキンI」(三一書房新社)
(入手可のものは、出版社に在庫があるという意味)
|