Quality Management System 品質マネジメントシステムーISO9001:2015



8.4 外部から提供されるプロセス、製品とサービスの管理
8.4.1 一般


組織は,外部から提供されるプロセス,製品及びサービスが,要求事項に適合していることを確実にしなければならない。

組織は,次の場合には,外部から提供されるプロセス,製品およびサービスに適用される管理を決定しなければならない。
 a) 外部提供者からの製品およびサービスは組織自身の製品およびサービスへ組み込まれることが意図されている;
 b) 製品及びサービスが,組織に代わって,外部提供者から直接顧客に提供される;
 c) プロセス、あるいはプロセスの一部が,組織の決定の結果として,外部提供者から提供される。

組織は,要求事項に従ってプロセス、あるいは製品・サービスを提供する外部提供者の能力に基づいて,外部提供者の評価,選択,パフォーマンスの監視,および再評価を行うための基準(criteria)を決定し,適用しなければならない。組織は,これらの活動、並びにその評価によって生じる必要となる処置について文書化された情報を保持しなければならない。

解説:
現行規格は、外部供給者の管理については購買品の管理の一つとして供給者の評価を求める程度にとどまり、サプライチェーンやファブレス(EMS)が拡大している現代の企業環境に対応できていない。それを反映して、現行規格の”購買”を再編成して大幅に強化を図った。

急速に普及したアウトソーシング(改訂された規格では、外部供給者に変更された)であるが、外部供給者との関係は高度に発達して、”企業が複数のパートナーと提携し、他の企業とお互いを知る段階にあったり、契約関係にあるのはごく普通のことである”、”ジョイント・ベンチャーのような継続的な協力関係を保ち、生産、在庫、計画などのデータ共有、ほかのマシンにある情報や複数のアプリケーションへの相互アクセスも含む”(ネットワーク戦略論 ハーバードビジネスレビューより引用)まで発展している企業もある。当然ながら、外部供給者による製品とサービスの管理はもちろん、外部から購入する部品やサービスは自社の製品とサービスの品質に強い影響を与える。したがって、自社のプロセスと同じように厳重な管理が求められる。なお、”製品およびサービスが、組織に代わって外部供給者によって顧客(複数)に直接提供される”は、新規の要求事項であり、ファブレス企業は自社と同じシステムとしての管理が必要になる。また、関連企業、ジョイントベンチャー、外注先との関係も適切な管理が、次の条項のように求められた。



8.4.2 管理の方式と範囲


組織は,外部から提供されるプロセス,製品およびサービスが,適合した製品およびサービスを一貫して顧客に納入する組織の能力に対し悪い影響を及ぼさないことを確実にしなければならない。
 
組織は、次のことを行わなければならない。
 a) 外部から提供されるプロセスが,組織の品質マネジメントシステムの管理の範囲内にとどまることを確実にする;
 b) 外部提供者へ適用することを意図した管理とともに,結果として生じるアウトプットへ適用することを意図した管理の両方を明確に定める;
 c) 次の事項を考慮に入れる:
  1) 外部から提供されるプロセス,製品及びサービスが,顧客および適用される法令と規制上の要求事項を一貫して満たす組織の能力に与える潜在的な影響;
  2) 外部提供者によって適用された管理の有効さ;
 d) 外部から提供されるプロセス,製品およびサービスが要求事項を満たすことを確実にするために必要となる検証、もしくはその他の活動を明確に決める。


解説:


外部供給者に関する付属書の説明によると、外部供給者から購入するすべての形態を対象にした要求事項であることがわかる。供給者からの購入、関連会社との協定、組織の業務や機能の外注化、その他の手段によって外部から提供されたものが対象になるとしている。外部供給者の管理にはリスクベースのアプローチをとるように示唆している。”外部から提供される製品とサービスの潜在的影響を考慮する”がそれである。重層化した産業構造と近年急速に発達したサプライチェーンを考えると当然のことである。

ところで、CD案での易しい文言と大きく異なり、DIS案では難解な用語と構文を使った条項に変身させている。しかも、CD案では、外部供給者の管理範囲を決めるのはリスクと潜在的な影響を明確にするとしていたが、用語”リスク”は切除されている。外部供給者の選定には外部供給者の社会的責任にも配慮されなけれならないにも関わらず言及されていない。やはり後進国には不利になると判断し強制することを避けたのだろう。だが、規格が要求していなくとも、ここでは当然ながらリスク評価は実施されるべきである。

設計・販売部門は自社で行い、製品の製造は外部委託するビジネスモデルはいまや一般的になった。電話での問い合わせサービスを提供するコールセンターなどに見られるようにサービス提供の分野においてもアウトソーシングは拡大し、多様化している。この現実に対し規格は、多くのことを規定しているように見えるが、外部供給者も品質マネジメントシステムの一部として組み入れる要求事項であり基本的なことは何も変わっていない。現行規格の条項4.1の備考3では、 ”アウトソースされたプロセスに対する管理を確実に行うことが、すべての顧客、法令および規制上の要求事項への適合性に対する責任から組織が逃れ られることにはならない”としている。これに対応できているならば何らの障害も生じない。


8.4.3 外部供給者への情報


組織は,外部提供者に伝達する前に,要求事項が妥当であることを確実にしなければならない。

組織は,次の事項に関する要求事項を,外部提供者に伝達しなければならない。
 a) 提供されるべきプロセス,製品およびサービス;
 b) 次の事項についての承認:
  1) 製品およびサービス;
  2) 方法,プロセスおよび設備;
  3) 製品およびサービスのリリース;
 c) 必要とされる資格を含めて,人びとの力量;
 d) 組織と外部供給者との相互作用
 e) 組織によって適用される外部提供者のパフォーマンスの管理およびモニタリンング;
 f) 組織、もしくはその顧客が、外部提供者の施設での実施を意図している検証、もしくは妥当性確認活動。


解説:


この条項は、現行規格の条項 ”7.4.2 購買情報”に相当するが、外部委託生産の普及が進み複雑化している現状を反映し、要求内容を充実し、理解し易く改良している。自社の品質マネジメントシステムと外部供給者との擦り合わせを行う、外部供給者の納入実績をモニターし管理することを外部供給者に伝えるなどがそれである。外部供給者との良好な互恵関係を保つことなしに自社の製品とサービスの品質を確保することは不可能に近いのが現実である。これを考えれば、この程度の情報を外部供給者に伝達することは当然の要求事項であろう。