0.1 序文 一般 |
品質マネジメントシステムの採用は,パフォーマンス全体を改善し,持続可能な発展への取組みのための安定した基盤を提供するのに役立ち得る,組織の戦略上の決定である。
組織は,この規格に基づいて品質マネジメントシステムを実施することで,次のような便益を得る可能性がある。
a) 顧客要求事項及び適用される法令・規制要求事項を満たした製品及びサービスを一貫して提供できる。
b) 顧客満足を向上させる機会を増やす。
c) 組織の状況及び目標に関連したリスク及び機会に取り組む。
d) 規定された品質マネジメントシステム要求事項への適合を実証できる。
内部及び外部の関係者がこの規格を使用することができる。
この規格は,次の事項の必要性を示すことを意図したものではない。
ー異なる品質マネジメントシステムの構造を画一化する。
ー文書化をこの規格の箇条の構造と一致させる。
ーこの規格の特定の用語を組織内で使用する。
この規格で規定する品質マネジメントシステム要求事項は,製品及びサービスに関する要求事項を補完するものである。
この規格は,Plan-Do-Check-Act(PDCA)サイクル及びリスクに基づく考え方を組み込んだ,プロセスアプローチを採用している。組織は,プロセスアプローチによって,組織のプロセス及びそれらの相互作用を計画することができる。
組織は,PDCAサイクルによって,組織のプロセスに適切な資源が与えられ,マネジメントされることを確実にし,かつ,改善の機会が特定され,取り組まれることを確実にすることができる。
組織は,リスクに基づく考え方によって,自身のプロセス及び品質マネジメントシステムで,計画した結果から乖離することを引き起こす可能性のある要因を明確にすることができ,好ましくない影響を最小限に抑えるための予防的管理を実施することができ,機会が生じたときにそれを最大限に利用することができる(A.4参照)。
ますます活動的で複雑になる環境において,一貫して要求事項を満たし,将来のニーズ及び期待に取り組むことは,組織にとって容易ではない。組織は,この目標を達成するために,修正及び継続的改善に加えて,飛躍的な変化,革新,組織再編など様々な改善の形を採用する必要があることを見出すだろう。
この規格では,次のような表現形式を使用している。
ー“しなければならない”(shall)は,要求事項を示し,
ー“することが望ましい”(should)は,推奨を示し,
ー“してもよい”(may)は,許容を示し,
ー“することができる”,“できる”,“し得る”など(can)は,可能性又は実現能力を示す。
“注記”に記載されている情報は,関連する要求事項の内容を理解するための,又は明確にするための手引である。
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解説: |
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規格は序文から読むことと常に語っている。今回の規格改定での重要なポイントがここで明示されている。
組織のパーフォマンスを向上させ、持続可能性を高めることを一義的な目的とした品質マネジメントシステムを構築するための規格であるとしている。そのために、顧客重視のマネジメントに徹することを求めている。内部と外部の利害関係者の要望に耳を傾け、それを満たすことを目的としたマネジメントシステムを提唱している。
ただし、 今回の規格は、品質マネジメントシステムの画一性を求めていないとし、ましてや規格の条項に沿ったシステムは必要など一切ない。組織に使い勝手のよい効果的な品質マネジメントシステムにするには、規格の用語にこだわることなく、組織が日常的に使っている用語を用いる文書を構築することが重要だとしている。
PDCAサイクルを活用することによる継続的改善を実現するためにマネジメント原則の一つであるプロセスアプローチを採用していることを宣言している。さらに、現行規格の予防処置に代わり改善を強化するために”リスクベースの考え方”を導入したことが記述されれいる。グローバリゼーションの進展に伴って厳しくなるばかりの組織を取り巻く環境も”リスクベースの考え方”の導入の背景にある。特に、リスクへの対処はサプライチェーンマネジメントに不可欠であることは、いまや常識となっている。
”継続的改善に加えて,飛躍的な変化,革新,組織再編など様々な改善の形採用する必要がある”とし、さらに高度なマネジメントシステムへの飛躍を示唆している。今回の規格改定に当たって、”今後25年間は有効な規格にしたい”とISO事務局が報道していたが、その強い意図がこの序文に謳われている。
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