工場内協力企業のISO9002認証取得

 日経新聞の報道記事を転載する。

 「メーカーの生産機能の代行会社であるアクティス(福岡市、山下祐司社長)は、日本テキサス・インスルメンツ(日本TI)の工場内で品質管理の国際規格ISO9002を取得した。アクティスは半導体製造の前工程の一部を代行しており、この部分が対象。メーカーのISO取得が相次いでいるが、他工場内で取得するのは異例。合理化のためにアウトソーシングが進む製造現場の実態を示す事例と言えそうだ。」

 この事例は、ISO9000システムを取り入れることにより、工場本体とのインターフェース業務が明確になり、アクティスと日本TIが共に業務上のメリットが大きいと思う。品質システムは、責任と権限を明確にするだけでなく、「顧客との契約の確認」の仕組みを整備・改善できる面での利点がある。さらに、お互いの信頼関係を強めるなど認証取得による効果が1−2年もすれば現れると確信する。

 2月18日付け朝日新聞にISO14001の認識度調査の結果が報道されていたので、ついでに、転載する。

 「住宅や不動産開発などに関連する企業のうち、『ISO14001』など環境管理システムの国際規格について、『知っている』企業は87%で、前年(65%)より31ポイント増えたことが、「住宅・建築 省エネルギー機構」(財団法人)が17日にまとめたアンケートで分かった。ただ、システムを導入している企業(予定を含む)は39%で前年並みにとどまった。
 環境対策の必要性は、97%が『感じている』としたものの、行動指針や社内組織つくりなど『対策を実施している』のは45%にとどまった。環境担当の実務責任者が『いる』のも43%だけだった。
 また、行政への要望としては『環境問題の相談の窓口を、厚生省や環境庁、建設省のどれかに一本化してほしい』『環境配慮にかかるコストを評価して予算を組んでほしい』などの意見が出された。
 調査は昨年暮れ、住宅メーカーや建設関連の会社、ディベロッパーなど367社を対象に実施、186社(51%)から解答を得た。」

 会社の規模がどの程度なのかが示されていないので、なんとも言えないが、コストだけでなくシステム導入には、人材や知識の不足による困難さが現れているように思う。また、行政からの配慮が足りないこともよく理解できる。まして、環境となると法規遵守のための調査は専門家が必要になる。この点はなかなか解消されないだろう。行政の支援がここでも求められる。<戻る> 

加賀屋、旅館・ホテル業界で初のISO9002取得

 加賀屋の快挙については、このページに速報として取り上げた。今朝(2月25日)の朝日新聞に、加賀屋社長の談話が広告欄に掲載された。内容は、サービス業が認証取得の意義を考えるのにたいへん役立つものである。よって、資料としても貴重なので、転載した。加賀屋社長は、ISO9000の精神を深く理解されている。その点では、認証取得だけを目的としている経営者には良き手本と言える。

 ISO取得についての狙いなどからお話しください。

 「社長になってもう20年近くになるますが、その間、私は『笑顔で気ばたらき』をモットーにし、社員にもそれを徹底してきました。お客様の立場に立って、気ばたらきし、思いやりの心で接する事が何より重要ですから。サービス業における品質は、お客様の期待に答えることだと思います。実際のサービスが、お泊まりになったお客様の期待以上であったら、その質が高いと実感していただけるはずです。そこで、あるべきサービス基準を設け、社員全員が加賀屋の考えるサービスを提供できるような体制を作り上げる必要があると考えたわけです。」

 いつごろから取り組んだのですか。

 「三年前です。ISO9000という品質保証システムに社会の関心が高まり、取得する企業が増えていくなかで、加賀屋が認証を受けられるような体制を作れば、多様化するお客様のニーズにも対応できる基盤ができるということで、社内チームを設け、進めました。また、外国のお客様の利用も増え、国際規格であるISO9000を取得することで安心感を提供できるという確信も強くなりました。」

 加賀屋さんの考えるサービスについてお伺いしたい。

 「最高のサービスは、お客様にいいサービスを提供したいという社員のやる気と、裏付けされた技術のハーモニーによって実現されるものです。サービス業では、まさに社員が商品そのものと言えます。ですからレベルのばらつきが無くサービスが提供できるよう末端の社員に至るまで、@お客様の期待に答えるA正確性Bおもてなしの心で接するCクレームゼロを目指すーという四つの目標を持たせています。
 この中で、正確性は特に重要です。例えば、モーニングコールを頼まれたのに忘れる、観光地への所要時間などの質問に答えられない、釣り銭を間違うなどのミスはいけない。ただし、正確であればすべて良しではなく、そこに相手の立場になる思いやりの心、ホスピタリティー(オーナーの注:この言葉自身に心からのおもてなしを意味がある)が必要で、この二つがサービスの柱であると思います。」

 「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」で18年間トップの座にあるというのもうなずける半面、社員のプレッシャーも相当なのでは。

 「バスガイドさんが『日本一の旅館に泊まれていいですね』などと言うものですから、お客様も期待に胸ふくらませてお出でになる。お客様の直接のお世話をさせていただく接待係をはじめ調理、売店、フロントなど650人の社員が1日2500人程度のお客様に様々な機会に接するのですから、期待道りにはいかない場合もあります。
 それでも『クレームゼロ』を目標に、年三回、大会を開いています。失敗のケースを十例ぐらい挙げて、みんなの前でやってみて、全員で議論して改善点を探す。私が直接社員と話し合う社長面談もやります。
 ともかく現場から報告されたクレームをもとに、日常業務の基本である作業やマニュアル、さらに言葉遣いなどのマナーまで膝詰めで話し合うなど、日々努力を続けているところです。こうしたことは品質管理の要ですから、徹底的に社員を教育しています。

 社員教育が日本一の秘訣ですか。

 「いえ、サービスの善し悪しを決めるのはお客様ですから、お客様の評価をできるだけ多くかつ正確に把握する体制づくりに努力しています。今では年間3万通にのぼるアンケートが集まりますが、これが加賀屋にとって大きなよりどころです。アンケートをもとに各ポジションごとの点数を付け、改善すべき点をつかみ、お客様のニーズの一歩先を行くサービスができる体制を作り上げることを心掛けています。」
 (オーナーの注:このような仕組みは、ISO9000よりも「日本経営品質賞」の方が強く打ち出されている。)

 そういうサービスの哲学はどこから来ているのですか。

 「加賀屋は創業92年、私は大学を卒業すると同時に和倉に帰り、家事を手伝っていましたから、母が女将として切り回すのを見ていました。母はお客様には一人ずつあいさつして回らないと気が済まないたちですし、お客様が『富山の地酒を飲みたい』と言われれば、昔のことですからハイヤーを酒を買いに行かせるといった具合で、心のこもったサービスを提供しようという精神にあふれていました。ある面では、”サービスの鬼”でしたね。うちには、母の心といってものが一本筋の通った遺産として残されているわけで、私はそれを受け継いだと思っています。母をはじめとする先輩たちがつくってきたものが加賀屋の背骨として伝達されてきているので、社員にも理解してもらい、継承していく努力をして欲しいと思っています。」

 これからの加賀屋はどうなりますか。

 「私としては、今回のISO9002認証取得は、さらなる品質改善への長い道のりの出発点、理想と考えるサービス提供ができる体制を作り上げていくためのスタートと考えています。お客様のニーズはさらに変化し、多様化していくでしょうから、それに対応していける柔軟な運営体制づくり、世間の常識に遅れないよう行動しながら学んでいくことのできる仕組みが求められます。
 これからどんな売り物を組み立てるか。昨年11月にオープンした別館『あえの風』は、加賀屋の持つもてなしの心を維持しながら、合理化できる部分は簡素にしてリーゾナブルな価格にしました。国内旅行のニーズの見直しに対応した新しい試みとして期待しています。」

 2年ほど前の夏に、2泊したがサービス過剰と正直思った。とくに、女将や調理の監督者がいちいち各部屋にあいさつに来た。あまりにも形式的で、かならずしもお客様に心地よいものではない。なるほど、一年に一回ほど贅沢しに来た方なら、そのようなサービスを受け入れるかもしれないが、単なる旅行者には不快までとは言わないが、煩わしいことではある。チップを弾まなくてならないのかと余分な気苦労をしなくてはならなかった。旅館では、いまでも心付けをしなくてはならないのだろうか。もしも、そうなら、10%のサービス料を取らずに、お客様に任した方が明瞭になる。個人としては、チップ制でも取り入れないと、日本のサービスの質は、先進国の中で最低になってしまうと思っている。
 団体旅行が、いまも主流であるが、将来は長期滞在型で個人旅行者が取って代わる時代がくると信じている。ならば、レーゾナブルな価格であることは当然でる。そもそも、長期滞在型の気分を味わえることが、日本人の海外旅行が盛んになった大きな理由であると思っている。昔から、旅は「命の洗濯」に行くものだった。ここからも、長期滞在型が終局のタイプとなると考えるがいかがなものだろうか。
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