病院のISO取得進む
「病院や診療所などのISO(国際標準化機構)認証取得を支援する任意団体、ヘルスケアISO研究会(東京・渋谷、松田紘一郎・代表世話人)が発足した。ISO活動を医療機関の経営合理化やサービス向上の手法と位置づけ、病院経営者や医療関連企業からの参加を促す考えだ。
同研究会は松田氏ら医療経営コンサルタント約10人が中心となり旗揚げした。主に品質管理のISO9000シリーズについて、事例研究や海外視察、認証取得ノウハウを
盛り込んだパソコンの販売などを計画している。会員が一定数に達した段階で組織を法人化する。」
上記の記事は、日経新聞2月15日付けのものである。風邪気味なので、わたしは土曜日に病院に出かけた。だが、受付の女性の対応があまりにも悪く、気分を害したので、別の病院に行った。患者は、病院にとっては「お客様」であることの意識があまりにも低すぎたからだ。患者に対して「診てやる」と思っているとしか思えなかった。最近の病院経営が非常に困難になっていることは、医者の息子が言っていた。だから、いまから開業医など考えられないそうだ。当然である。高額な費用を払わせる医療制度と粗末な診療内容、しかも「顧客指向」は一切考慮されていない経営そのものが破綻していることは自明である。だから、医療経営にISO規格の仕組みとマネージメント・システムの採用はかならず改善への道を示すと主張したい。
このように病院も「顧客指向」の経営がいま求められていると私的意見を述べてたのが、2月15日だった。ところが、全く同じ考えに基づいてすでに実践されている病院のことが、朝日新聞(2月18日)で紹介された。また、すでにここで紹介した武田病院検診センターのことも「病院が変わるー経営の視点から」の中で記事となっていた。同じ思いをしている方いるとわかり、なんだか感激してしまった。ISO14001の取得を考えられている方にはたいへん参考になるので、その記事の一部を転載した。
「吉田氏(注:経営の建て直しのために、警備サービス会社、セコムから派遣された方)が理事長に着任した1992年当時、久我山病院は年間5億円の赤字を出し、累計赤字は15億円に膨れ上がっていた。吉田氏らがみた病院は『お客さんである患者より医者の方が偉い世界』だった。改革は、あいさつの励行や廊下のごみ拾いから始まり、勤務医には患者を紹介してくれる近くの開業医へあいさつ回りを命じた。
(途中略)
病院の変化は、かってなら医療収入に直接結び付きそうもない環境問題への取り組みでも広がっている。
武田病院グループの検診センターは昨年12月、国内の病院で初めて環境管理の国際規格『ISO14001』の認証を得た。小倉第一病院(北九州市)は、残飯を有機肥料に変えるため、敷地内に生ゴミ処理機を設置。リース資金は職員の通勤手当を50%カットしてひねり出した。6月には、環境を重視した病院経営マニュアルを文書化して出版する。他の病院との差別化を図り、患者を呼び込もうという狙いだ。
こうした病院に共通するのは、患者を「顧客」と考え、経営効率の向上もねらう視点だ。『院長先生』が病院を運営する時代は終わりつつある。」
では、他日ここで記載した日経新聞の記事を転載したい。
医療法人康生会(京都市)の武田病院検診センターは、環境管理の国際規格「ISO14001」を取得した。康生会によると、医療関連施設で同認証をするのは極めて珍しいという。検診センターだけでなく、グループ内の病院において、医療廃棄物の適正処理などへの効果を見込んでいる。
昨年三月、検診センター内に看護、検査、放射線、事務という四部門の代表で構成する環境専門部会を設け、取得の準備を進めてきた。」
この報道を読んで感じたことが二三ある。まず、一年足らずで取得されたことは賞賛したい。とくに、検診センターと言えども大変多忙な職場であろうにもこれほど短期間にシステム構築と実施を完成させたのには驚きを感じた。次は、エイズやB型肝炎などの感染源の大きなものは、病院からの廃棄物であるとされている。だから徹底した管理が求められる。この意味からも、認証取得は意義が大きい。ニューヨーク州の海岸に医療廃棄物が大量に放棄され、しばらく楽しみな釣りに行けなくなったことを思い出した。
日本の病院の施設や制度についてコメントしたい。日本の病院は近代的な設備を多く装備してコスト依存型になっている。一方、米国の個人医師は自宅を診療所にしているのも多いが、高額所得者が患者である。一般人には、ショッピング・モールのように異なった専門医師が一つの診療所に入り、高額な医療機器は共同で使うことでコスト低減に対処している。このようなシステムをとるには、理由がある。それは保険制度である。日本のように、国や企業が医療費を負担するのではなく、本人が全額支払いをした後、民間の医療保険会社から医療費の還付をしてもらうのが一般化している。保険会社は、医療機関が適切な費用になっているかを厳格にチェックしているので、医師は日本のような高額医療費を請求できない。まして、大阪の安田病院のような24億円もの不正請求などは絶対に起こり得ない。ことさように、医療に限らずいろいろな分野での日本のシステムを国際標準に変える必要性は高い。ISO規格は、そのための第一歩かもしれない。