ISO規格修正要求

9月20日付け「朝日新聞」での報道によると、9月23日から始まるスイス・ジュネーブで開かれる国際標準化機構(ISO)の総会で、22カ国がISO規格の修正を求めることになったとしている。調べてみると、他紙には一切報道されていないので、知らない方もいると思われる。よって、内容の中でぜひ認識していただきたいことを掲載する。

「日本、アメリカ、オーストラリアなどアジア太平洋地区の22カ国が工業製品などの国際規格であるISO規格(ISO9000を含むすべての規格と考えられる)の中に欧州に有利に決めらているものがあるとして、規格の大幅な修正を求める。通産省はこの中で、技術的に古いものや欧州だけで通用しているものが国際規格といるとして、40項目の規格修正を提案する。(省略)また、漢字のISO規格が日・中・韓の事態の違いを反映していないことから問題が生じているという。(省略)国際規格つくりが欧州主導になったのは、日米などの取組みが遅れたこともある。このため、通産省は今後、ISOの運営に積極的にかかわっていく方針で、今回の総会で日本規格協会の青木朗・参与が、日本人として初めてISOの副会長に選出される見とうしだ。」

このホームページでは、国際標準化機構(ISO)に関する解説が一切されていない。この機会に、簡単に説明する。本部機構はスイス・ジュネーブにあり、非政府機関で、国際連合およびその関連機関と国連専門機関の詰問機関でもある。重要なことは、現在加入している国は120カ国で、ISOでの投票は一国一票であることと、欧州連合(EU)は18票を持ち規格の採択には有利な立場にあることである。したがって、このたびの総会でどの程度修正が採択されるかが焦点となる。いずれにしても、今回の総会の動きは重要なので、情報の収集に心掛けるつもりだ。

この動きが、中小企業にとってどんな影響があるのかと懸念を持つ方もいらっしゃると思うので、簡単に説明をしておく。これから取得を目指す中小企業は、出来る限り「軽い」品質システムを構築しておくことが最善の策と指摘したい。なぜなら、現在の規格は、日本語には馴染まない言葉が使われていることによる弊害がある。良い例が、外国での中小企業の品質システムが単純であることである。理解に苦しむ要求事項に対しては、安全策としてどうしても余分な仕組みをつくることになる。しかも、「軽い」品質システムの上に「サブ・システム」を徐々に付け加えていくことはできるが、大きな品質システムを一旦採用すると、省略は難しくなる。また、せっかくの社員の努力も無駄になりかねないからだ。<戻る>

日本型経営

先週は、福島県の磐梯山を登っていたので、お休みでした。今週は、「日本経営品質賞」のページを開くことが出来たので、短いお話を掲載します。このジョークは、何年か前にアメリカで流行ったそうです。この話の出所は、もと働いていた会社の退職者同士のメーリング・リストです。

ある戦争が終結する間際に、三人の捕虜がソ連兵に捕らえられた。それぞれは、ドイツ人、日本人とアメリカ人の将校だった。

「誠に不憫ではあるが、あなた方は銃殺されることになった。銃殺は直ちに行われるが、その前に、最後に告げておきたいことがあれば、各人に3分間だけスピーチすることが許されている。」と、ソ連兵が三人の将校に告げた。
「ドイツ人のあなたはなにを話されますか?」と、ソ連兵は尋ねた。
「私は、ドイツ国歌を歌いたい。」
「ミスター・ジャパン、あなたは何をスピーチしますか?」
「私は、日本型経営に関する話がしたい。」
これを聞いたアメリカ将校は叫んだ。
「おれを一番に射殺してくれ!」

  「日本のバブル絶頂期、多くの人が『世界に冠たる日本式経営』と信じた。現在は米国企業に対する賞賛がしきりである。」と日経の「大磯小磯」で述べられている。これを手のひらかえしと云うのでしょうか。

そして、日本型の品質管理も限界が出てきてる。それを示す新聞記事(日経産業新聞)を読んでいただきたい。

「ソニーは、米モトローラなどが考案した品質・サービスの業務改善運動(シックスシグマ=6σ)を世界規模で導入する。生産現場だけでなく、設計、本社管理部門などを含め経営効率を抜本的に改革する。6σは専任担当者がトップダウンで進めるシステム。従来型の日本的品質管理が限界に来たと判断。国内大手企業としては初めて導入する。 <戻る>

「危機管理」ISO規格に

11月24日付け日経新聞の報道記事は、次のとうりだ。98年度中には新規格がJIS化される方針を打ち出した。

通産省・工業技術院は企業不祥事や地震などの天災、海外でのテロ活動などで企業活動にかかわるリスク(危機)の影響を最小限に抑える際の指針となる国際的な「危機管理システム規格」を策定する。24日に東京で開く国際標準化機構(ISO)の作業部会に国際規格化を提案する。規格そのものに法的規制はないが、欧米と比べて危機管理意識が低い日本企業の体質改善を促したい考えだ。

策定する「危機管理システム規格」では企業活動に影響を与える事態が発生した場合、その混乱を収拾し、再発防止できる組織になっているかを評価・点検する。企業は規格に沿って危機管理体制を整備。第三者機関から認定を受けて、危機管理能力を対外的に示す。企業の品質管理体制の枠組みを規定した国際規格の「ISO9000」や環境管理・監査規格の「ISO14000」に似たような位置づけになる。

工業製品の材質や品質管理方法を定めた日本工業規格(JIS)にも新規格として98年度中に盛り込む方針だ。

海外ではカナダやオーストラリア、ニュージーランドがすでに危機管理システムの国内規格を策定し、企業のリスク管理活動に役立てている。欧米企業も独自に危機管理体制を構築しているが、国際規格はなだない。

10月8日付け朝日新聞の報道によると、通産省は、危機管理体制の国際基準づくりに動き始めた。記事の全文を下記する。

「通産省は、企業や自治体などが、地震や誘拐、不祥事といった危機(リスク)に巻き込まれた際に有効に対応するため、危機管理体制の国際基準づくりに動き始めた。企業経営の管理システムや製品も国際規格をつくる国際標準化機構(ISO、事務局・ジュネーブ)に働きかけ、11月には東京で準備委員会を開き、具体化を図る。
 企業や自治体などが独自にもつ危機管理システムの、国際的な基準を定めるのが狙い。ISO規格に適合した管理システムをもつ、と認められた企業は、危機回避の能力や、被害を最小限に食い止められる能力がある、と国際的に認知されることになる。
通産省がISOに示した原案は、危機管理システムの確立には、1.危機管理責任者の指名と権限の付与 2.常設の担当部署の設置 3.事前、発生時、事後の段階ごとの危機管理計画の策定ーなどの体制づくりが必要、としている。

規格の認証を受けるためには、企業や自治体は、災害や事故、機密露えい、誘拐、あるいは談合や性的嫌がらせ(セクシュアル・ハラスメント)、総会屋への利益供与といった不祥事など、組織に被害をもたらす可能性のある危機を特定し、事前に発生パターンや影響を分析し、情報収集など対応方法を規定しておくことが求められる。
最近の国際競争入札では、ISO規格を満たしているかが入札参加の条件とされるなど、ISO規格が、商談に影響するケースが出ている。しかし、日本の取り組みは遅れており、ISOの運営や規格づくりに、積極的に参加することが、政府の課題となっている。」

退職したエクソン社では、ほとんど完全な危機管理システムをつくり上げていた。この管理システムによる具体的な行動基準のいくつかを思い付くままに紹介する。

全世界で重要な地位にある職員(例、社長、油槽所所長など)には、事前通告も無く, ある日に医者による血液採取がある。血液は米国の検査機関に送られ、アルコールや薬物の有無が調べられる。このシステムは、エクソン・バルテージ号の原油露えい後に作られた。

社員が海外での会議に出席するために、航空機を利用することは頻繁に行われている。しかし、事故死を想定して、同じ航空機に多数の社員が一緒に乗ることは禁じられている。特に、重要職は厳格に管理されている。

治安や戦争による全世界の状態がコンピュ-ターに入力されている。危険度の高い国には、海外出張しないように警告されている。この情報によって、各人の安全を確認するシステムが作られている。

災害や製品輸送に伴う事故を想定し、情報収集、経営上級者の指示伝達方法、報道機関に対する対処、などを毎年訓練する。部長職以上は、報道機関に対する対応方法に関する訓練が行われる。当然、緊急時に利用できる情報通信器材は常備している。

米国内での重大事故(工場火災など)に迅速に対応するために、自家用ジェット機を 常備している。最高幹部(複数)が直ちに現地へ飛ぶことがいかに重要かを上記原油露えい事故で体験したからである。

エクソンの最高幹部が本社以外に旅行する際には、誘拐などの防止を目的にガードマンを配置する。日本来訪時には、全管理職が100メートル毎に通過道路に配置させられた。米国勤務の時、実際に重要職が誘拐され事件に遭遇した。会社は賞金を渡すことと新聞を通じて伝えたが、殺害されてしまった。

危機管理監査員による監査が2ー3年に一度世界の事業所を対象に行われる。現地の危機管理システムが適切かどうかが監査される。監査結果は、最上級経営者に直接報告される。

などなどまだあるが、きりが無いのでこれで終わる。朝日新聞が、日本での対応は遅れているとしているが、まったく同意見を持っている。

安全衛生に関するISO規格(ISO16000)の制定が保留されているが、この危機管理体制の規格も同時に議論されるのではないだろうか。まさに、国際規格時代が到来した感が強い。これからの経営者は、これらのISO規格への対応能力が試されることになる。<戻る>

動燃がISO9000取得に動く

10月11日正午のNHKニュースで、動燃がISO9000の取得をめざすことを決定したと報道された。ISO9000は国際規格で、内部監査制度を取り入れているので、種々の問題を防止できるとしていた。

この動燃東海再処理工場のISO9000取得に関する続報。朝日新聞に掲載された記事を下記する。

「3月にアスファルト固化処理施設で火災・爆発事故を起こした茨城県東海村の動力炉・核燃料開発事業団(動燃)東海再処理工場が、品質保証の国際規格『ISO9000』 取得をめざすことになった。実際の認定申請は、来年秋とみられる動燃の新法人移行のあとになる。

ISO9000は企業の品質保証体制を審査する目的で、国際標準化機構(ISO)が1987年につくった規格。品質管理体制や仕事の進め方などの国際標準で、商取引を結ぶ条件にする企業も増えている。国内では約五千の事業所が取得している。動燃を所管する科学技術庁は『簡単に取得できるものではないが、具体的な目標を持って品質保証活動をすることがプラスになる。』と話す。」

この動燃のような大きな組織が、一年程度の期間の準備で品質システムが構築できるのか、やや疑問が残るが、体質改善に向かう姿勢は評価できる。
最近国内で多発している種々の問題は、ISO9000の仕組みを取り入れるならば、事前に予防できるはずだと、常々考えていた。銀行の総会屋への利益供与や自治体の不正などは、外部監査と内部監査を組み合わせるとその予防に役立つことは間違いない。事実、シンガポールの政府機関の多くはISO9000を取得している。ぜひ、日本でもこの動燃のケースが発端となり、その他の政府機関も取得に向かうことを期待している。
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川崎市のISO規格認証取得支援制度

11月8日付け朝日新聞の湘南版で、川崎市のISO規格認証取得支援制度を報道した。他県では報道されていないと思われるので、転記したい。

「製品輸出の前提条件となりつつある国際標準化機構(ISO)の認証取得を支援するため、川崎市は中小企業を対象にした新たな事業補助制度を立ち上げる。これまで県や県内他自治体のISOへの取り組みは、既存の融資制度活用を促すなどが主体になっており、一歩踏み込んだ格好になる。『ものつくりの町』として、地元産業の活性化により強く力をいれていく。
ISO9000シリーズは1987年に制定された品質管理と品質保証に関する包括的な規格。具体的な生産工程、マニュアルなどを文書で示し、将来的にその工程の水準を維持することを、第三者機関に認めてもらう手続きだ。欧州を中心とした各国の政府が導入を進めており、取引や入札参加の条件として認証取得を求められる場面が内外で増えつつある。ISO14000シリーズは生産活動の環境への影響について、企業の姿勢を問う内容の規格で、こちらは今後、本格的に普及していくものとみられている。
川崎市の新制度は、ISO9000シリーズと、ISO14000シリーズの認証取得を進める業者に対し、百万円を限度に、経費の二分の一までのを補助する。月内に制度を配付し、説明会を開催する予定だ。申し込みを審査委員会にはかり、交付を決める。
ISOをめぐる最近の動きでは、県商工部が十月半ばに、取得経費に対して既存の融資制度の積極的な活用を促すパンフレットを作成するなどしているが、新たな補助制度まで打ち出すのは、めずらしい。
新制度に対して川崎市経済局の林光昭・産業新興課長は『これからはISO規格がないと、どんどん輸出が難しくなる。直接海外取引のない中小企業でも、親企業がそうなれば事情は同様に厳しくなる。ものつくりの町として生き残っていくためにも、行政の支援を積極的に利用してほしい。』と話している。

神奈川県は、先月「能力開発スタッフバンク」という新しい制度を設立したのも、このような川崎市の動きを支援するためだったのかも知れない。なにはともあれ、川崎市の中小企業は、わたしのような人的資源を利用できることは確かだ。また、行政がこのような制度まで設立しなければならないことを考えると、ISO規格に関連した環境は、中小企業にとって相当厳しいことを再認識させられた。諦めないで、積極的に前進されることを願っている。 <戻る>

通産部会の答申で国際標準化推進「官民で計画を」

いまさらの感が強いが、11月13日付けの朝日新聞の記事を転載する。

通産省の詰問機関「日本工業標準調査会・国際部会」はこのほど、モノや生産システムの国際規格づくりで日本は情報通信や環境・安全などに重点を置くべきだ、とする答申をまとめた。国際規格をつくる国際標準化機構(ISO、事務局・ジュネーブ)に、どの技術をいつ提案するか、といった「戦略」を通産省と各業界団体が検討し、業界ごとに「国際標準化推進計画」を策定するとともに、ISOの活動に日本企業が積極的に参加していくべきだ、と提言している。
今年度中に、各分野ごとに「国際標準化推進計画」を通産省と各業界団体が策定し、日本企業を国際規格としてISOに積極的に提案していく。
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