標準化作業について日欧連合で米に対抗

 電気・通信関連の日本企業が欧州に研究拠点を設け、研究プロジェクトに積極的に加わっている。その背景には標準化作業で優位を保つためらしい。

 「欧州は国際品質規格「ISO9000」や環境規格「ISO14000」作りで強いリーダーシップを発揮しているが、情報・通信分野でも欧州標準が南米やアジア、アフリカなどを席巻している。

 その代表例が世界標になった欧州のデジタル携帯電話規格(GSM)。同規格の製品で出遅れた日本企業は足下のアジア市場でさえ欧米勢に独占されてしまった。「欧州の研究開発設計に参加して標準化に貢献していかないと新製品の開発で遅れを取る」と指摘されている。

 欧州側にも日本企業の参加を歓迎する事情がある。米企業が市場シェアにものを言わせデファクトスタンダード(事実上の標準)で市場を押さえるのに対抗する形で、欧州諸国は国際機関での標準化作業のイニシアチブを握る戦略に出ている。国際標準化機構(ISO)や国際電気標準会議(IEC)の規格作成のための専門委員会977(97年時点)のうち、ドイツが171,英国が140,フランスが126の委員会で幹事役を引き受けている。日欧連合は米国を牽制する意味合いで重要だ」

 日本の金融界は国際標準に合わせるのに遅れた。それが大きな原因でいまや日本を「日の落ちる」国にさせてしまう瀬戸際に立たせてしまった。これと同じ次元のことがISO規格でも起こっているようだ。いつも後から気づき、キャッチアップのために大忙しとなる。経営者がお粗末だからだ。世界の動きに目を向けることもできないで、現代の経営ができると思っているのだろうか。

中小企業へのエール

   土曜日の朝日新聞夕刊には「ぜみなーる」というコラムがある。いつも興味のもてる記事があるので、読んでいる。いつも思っていることを記事とされていたので、商工中金調査部長、長 和俊氏の記事の一部を紹介したい。

 「日本がバブル経済に酔いしれていたころ、冷戦が終わり、世界の枠組みは大きく変わった。勝利を見越した米国は、幕が開く大競争時代の覇権を狙い、軍事予算の大幅削減、平和の配当をテコに政治、軍事面のみならず、情報通信や金融などの戦略的産業分野での布石を打った。
 課題は絞られてきている。まず企業に求められるのは、横並び経営からの脱却とリスクテイク型への移行である。
 そのためには、企業自身が抜本的リストラをし、赤字や低収益部門、資産などをそぎ落とし、経営資源を中核事業に集中することが必要だ。競争力が劣る部門や枝葉の業務はアウトソーシングし、自社の得意分野を軸にすることである。」

(途中略)

 「過度に悲観することはやめたい。日本の製造業の国際競争力の強さに世界が畏怖を覚えるからこそたたかれたのだ。島国の人間同士で足を引っ張り合っている場合ではあるまい。国と国のぶつかり合い、岩盤がゴツゴツとむき出しになった資本主義の大きなうねりの中で、日本の存在をいかにアピールするかに力を注いでいくべきではないか。リスクを恐れず、チャレンジする真の起業家の台頭、元気な中小企業の出現が望まれる。」

バブル経済の華やかなときの日本人の行動に危惧をいだいたこともこのページのどこかに記載しているはずである。フォード自動車の副社長の講演を聞いたときに、日本の品質管理の良い点だけを見出し取り込んでいたことを知った。しかもその弱点も承知していた。彼はまさかこんなところに日本人がいるとは知らなかったであろう。「経営の品質」のページには、「コア・コンピダンスとは?」と題して企業は得意分野に特化することの必要性を述べている。また、製造業、特に中小企業の競争力は世界的に強みを持っていることを社員教育の時に話をしている。日本人の教育の高さ、誠意や忠誠心も残っているなどがその根拠である。どうか元気を出してくださいとエールを送りたい。

「品質規格 義務に」ーISO 9000 2000年度から

   7月7日の朝日朝刊に、建設省が大規模工事で品質規格が入札条件とする方針を決めたようだ。以下、記事の内容を全文転載した。

 「建設省は2000年度から、一定規模以上の公共工事の入札業者を対象に、国際標準化機構(ISO)による品質管理の規格を義務付ける方針を固めた。同省は入札の透明性を高めるため、一般競争入札の範囲拡大を進めており、規格の義務化で工事の質を担保する。さらに、建設会社の競争力を高める誘導策にもする狙いだ。

 義務づけられるのは、『ISO 9000シリーズ』と呼ばれる規格。商品の設計や製造、メンテナンスなど、様々な分野について、標準的な管理体制を第三者機関が審査市、承認する仕組み。

 同省は1996年度から、一部の公共事業について、ISO規格を適用したモデル事業を実施しており、今年度は約30件を予定している。これらの結果を踏まえて、ISO規格を義務化する工事の内容や規模、具体的な適用方法などを決める。ただ、『取得に費用がかかることなどから、中小企業の場合は対応が難しい』(同省)として、まず大手が参加する大規模工事から適用する方針だ。

 また、建設業者の規模や経営状況などをランク付けし、受注できる公共工事の規模を分けている『経営事項審査』の中でも、ISO規格の要素を加える方針だ。こうした動きは、技術力向上を促し、『合併などの再編にもつながる可能性がある』(中堅ゼネコン)という。

 ISO 9000シリーズについては、国内では製造業のほか、総合建設会社(ゼネコン)などでも、取得の動きが広がっている。日本適合性認定協会のまとめでは、建設関連の取得企業は98年2月で352社と、昨年6月の106社から三倍になった。海外の工事でISO規格の義務付けが増えていることも影響しているとみられる。」

 以上であるが、この動きはすでに知られていることである。しかし、建設省自身が品質システムを取り入れ範を垂れるべきではなかろうか。政府機関の取得が普及している国はシンガポールである。やはり「清く正しく」入札をするためと、サービスの向上を目指した結果である。

環境考慮設計

  「日経メカニカル」は、最初にこのホームページを紙面で紹介していただいた。有り難いことだと今も感謝している。そこで7月6日の日経新聞で記載された日経メカニカル編集 藤堂安人氏の記事を紹介したい。環境システムを理解する上でだけでなく、品質システムを解釈するためにも役立つ内容である。

 「製品を開発・設計する際に技術者が留意するのは、『品質』『コスト』『納期』の三点だ。しかし、最近はこれに『環境』を加えることが多くなってきた。

 環境考慮設計で先行しているのは欧州だ。例えば独BMWは、『リサイクル解体研究センター』という専門施設を持っており、実際に自動車を解体して有効な方法を研究している。

 こうした研究を通じて、設計段階からいかにリサイクル性を盛り込むかの検討を進めている。構想設計の段階で、経済性を重視した詳しい解体分析を実施し、社内基準を設定して設計に組み込んでいるわけだ。

 日本でも環境考慮を設計技術に盛り込もうという機運が出ている。

 例えば、横河電機は製品の構想設計段階から環境を考慮する体制を採り始めた。同社は98年4月から、製品設計段階で環境配慮を評価する『環境アセスメント』の基準を、同社の最上位の設計基準であるDS(デザインスタンダード)としている。

 アセスメント基準は、再資源化・処理の容易性や省エネルギーなど八項目について、設計中の製品がどの程度環境に配慮しているかを五段階に点数化し、総合評価する。評価は『概念設計段階』『設計試作品の完了段階』『製品設計の完了段階』の三回実施。問題があれば、出荷を停止するほどの重要性を持たせているという。

 一方、環境考慮設計を支援する手段として、『LCA(ライフサイクルアセスメント』という、環境負荷を定量化する手法の開発と導入も進んでいる。

 LCAは製品の原材料採取から製造、使用、処分に至る生涯、つまり『揺りかごから墓場まで』を通じて、環境に与える影響を分析、評価する手法だ。ある一つの項目に着目して、改善しても、全体で見ると本当に環境負荷を低減できるかどうかわからないケースで有用な手段になる。

 LCAの手順は、ISO 14040(JIS Q14040)ですでに規定されている。『目的と範囲の設計』『インベントリ分析』(工程ごとに投入物と排出物のデータを集積)、『インパクト評価』(環境への影響の評価)、『結果の解釈』ーーという四つの段階に分かれる。さらに報告書を作成して、外部機関に報告書を審査してもらう『クリティカルレビュー』を実施して完了となる。

 NECが今春、初めてISO 14040に準拠したLCAをパソコンの設計に適用したと発表したほか、各社ともLCAに取り組み始めた。現状では設計後の製品に適応するケースが多いが、松下電器産業エアコン社のように、設計段階からLCAを適用する企業も登場してきている。

 また、NEC,東芝、日立製作所など先行企業は、自社で開発したLCAソフトを外販しており、これを使えばだれでも容易にLCAを実施できるようになってきた。」

 以上であるが、ISO 14040の概念図も掲載されているので、下に示す。

製粉大手、相次ぎISO 9002取得

   「製粉大手三社が相次いで品質管理の国際規格「ISO 9002」の認証取得に乗り出している。日精製粉は四工場で、昭和産業は主力一工場で来春までに取得する。日本製粉は四工場で取得した。製粉業界は2001年度以降に小麦・粉輸入の完全自由化を控えている。品質管理体制を強化してユーザーや流通業界の信頼度を高める。

 日新製粉は群馬・館林市と名古屋市の食品二工場と、パスタ生産子会社の神戸工場で年内に、また来年五月をめどに神戸の製粉工場でそれぞれISO 9002認証を取得する。

 日本製粉は今年四月から六月にかけて千葉市の主力製粉工場と、茨城・竜ヶ崎市にある小麦粉に調味料などを加えたプレミックスの工場で同認証を取得した。昨年、パスタ生産子会社の二工場でも取得している。2002年までに全九工場に拡大する。

 昭和産業は茨城・鹿島市の主力工場で来年三月をめどに、ブドウ糖の製造工場で同認証を取得する。」

 今日(7月8日)の日経新聞記事だが、「横並び思考」の日本型経営がまだ脈々と生きずいていることを感じた。「隣の人が取ればわたしも」も時には必要だが、認証以外で品質を強調できないのだろうか。いや、これらの企業の商品開発は活発で、人工的な食料を押しつける商品が次から次と市場に放出されている。これらが引き起こしている健康上の問題をどうのように解決したかの方が重要と思うがいかがなものだろうか。

賠償責任保険料、最大3割下げーISO規格達成企業向け

   「住友海上火災保険は、10日から、損害賠償を求められた企業の損失を補填する賠償責任保険の保険料を最大3割引き下げる。品質管理や環境対策が国際標準化機構(IS0)などの規格を満たしている企業に限って保険料を割り引く仕組みで、損保業界では初の試み。住友海上はこれらの規格達成が遅れている中小企業の環境対策などを後押しすることで、保険料自由化で競争が激化する法人分野の取引拡大を図る。」

 このように、今日(7月9日)の日経新聞が大きく報道した。以下に、詳細を転載するが、これでISO規格による品質システムがP/L法の対策にもなることが実証されたことは、喜ばしいことである。このページには、「ISO9000の導入は製造者責任法の対策になるのか?」の質問に答えているので、それも参照されたい。

 「保険料を優遇するのは品質管理の国際規格のISO 9000系と環境管理規格のISO 14001、食品などの衛生管理手法であるHACCP(危険度分析による衛生管理)のいずれかを満たした企業。

 ISO9000系や HACCPを取得している企業に対しては、製造物責任(PL)を問われた際に保険金を払うPL保険や同保険の保証範囲を拡張した総合賠償責任保険の保険料を安くする。ISO14001の取得企業は、環境汚染賠償責任保険の保険料の割引対象となる。割引率は規格の達成状況によって異なり、すべての事業所が規格認証を取得していれば保険料を30%割り引く。

 具体的には、保険料の支払限度額5億円のPL保険の加入している自動車部品メーカー(売上高50億円、製造労務費5億円)が全事業所でISO9000の認証を取得した場合、年間の保険料負担は従来の182万円が127万円と大幅に軽くなる。」

(途中略)

 「7月から保険料が自由化されたことを受け、法人、個人分野を問わず損保の顧客争奪戦が激しくなっている。住友海上はすでに、事業活動に伴う環境汚染リスクの診断や、ISOの認証取得のノウハウなどを企業に提供するサービスを実施している。業界大手の同社が大胆な値下げを打ち出したことで、企業保険分野の価格競争は一段と過熱しそうだ。」

 このような報道があるかと思うと、同じ新聞には「米、統一PL法 審議へー訴訟社会に一定の歯止め」と題した記事が掲載された。また、ダウ・コーニング社が約二千億円の和解金で訴訟を避ける決定がされたと報道された。確かに、米国のPL法は、厳しい。消費者保護を優先しているからだ。幸い日本のPL法はそれほど厳格ではないが、ダイオキシンによる土壌汚染問題など企業の対応によっては命取りとなりうる。保険による防備は不可欠となろう。

品質向上、米国「マルコム・ボルドリッジ賞」を見直え

 「社会経済生産性本部は長野県軽井沢町で開いた軽井沢トップマネージメントセミナー最終日の十日、特別の時間枠を設け、米国国家品質賞である「マルコム・ボルドリッジ賞」について議論した。土屋元彦富士ゼロックス専務らが、レーガン政権時代の87年に創設した「マルコム・ボルドリッジ賞」を軸に政府と産業界が一体となって経営改善を進める米国の実態を報告した。

 同氏らは、日本も顧客満足(CS)を柱にした米国流の創造性重視、競争重視の経営を目指すべきだと提言。品質管理は日本のお家芸だったが、最近は欧州をはじめ、世界38カ国が「マルコム・ボルドリッジ賞」にならった品質賞を設け、経営の質向上に取り組んでいる。

 「マルコム・ボルドリッジ賞」は米国が日本のデミング賞を徹底分析し、米国流に手直した賞。「マルコム・ボルドリッジ賞」を頂点に、全米43州が「マルコム・ボルドリッジ賞」の基準にのっとった州ごとの賞を制定。夏の甲子園野球大会のような地方予選を経て、全国大会を目指す仕組みだ。

 以上は、日経新聞の報道である。このホームページは、ISO規格の品質システムの向こうにそびえ立つ経営の質を向上するための「日本経営品質賞」の解説を掲載している。中小企業は、八つのモジュールをすべてを満たすことがなくとも、自社の必要なところ、たとえば情報技術の利用を広め、情報の共用化を進めるだけでも効果が現れるばず。  

品質国際規格ISO9000の取得活動広がる

   最近の新聞報道から思うに、取得活動は広い分野に浸透し始めている。農薬メーカーや引っ越し専業などである。また、ペルーの産業人育成に松下電器内に「企業内学院」を開設した。病院給食会社がISO 9001を取得した。以下に、これらの報道内容を転載した。

 「農業専業メーカーの間で品質管理、環境管理などの国際規格であるISOシリーズの認証を取得する動きが広がってきた。海外メーカーからの製剤受託業務になってきたことに加え、環境に配慮した企業姿勢を打ち出す狙いがある。

 認証取得で先行する北興化学工業は、すでに北海道工場、新潟工場、岡山工場で品質管理規格であるISO9000を取得。12月には新潟工場で環境管理規格のISO 14001を取得する計画だ。ISO14001シリーズの取得は国内の農薬工場では初めてとなる見込みで、他の二工場でも来年には取得する計画だ。

 クミアイ化学工業は昨年の清水工場(静岡県)に続き8月に小牛田工場(宮崎県)、竜野工場(兵庫県)でISO9002を取得する。日本農薬も昨年取得した鹿島工場(茨城県)に次ぎ、福島工場、佐賀工場で今秋をめどにISO9002の認証を申請する。」

「引っ越し専業大手のアートコーポレーション(大阪府大東市)は千葉支店で、品質管理・品質保証の国際規格「ISO9002」の取得が内定した。同規格の取得は国内引っ越し業界では初めてとなる。」

「松下電器産業はペルーの産業人のため、ペルーの松下電器内に『企業内学院』をこのほど開設した。96年にペルーを訪問した橋本龍太郎首相の提案を受け、通産省の外郭団体、海外技術者研修協会(A0TS)と協力して実現した。

 研修は『品質管理』と『環境管理』の2コースがある。それぞれ国際規格であるISO9000、ISO14001の各シリーズの取得を目指す。講師は現地の専門家で、40人の受講者のうち、松下の従業員は4分の一程度。順次コースを拡充していく。」

「三菱商事と仏給食会社のソデクスが出資する病院給食会社、ソデックスヘルスケア(東京都)は、品質保証の国際規格ISO 9001を取得した。認定範囲は、京都で大原記念病院(約2百床)や老人保健施設などを経営する医療法人行陵会の調理場。」

 ここまで普及が進むと多くの人たちが何らの形でISO規格に関わることになります。世の中は不況で多くの失業者が出ていますが、コンサルタントがそのよい例で、この分野が急速に成長することは間違いないでしょう。まさに「サッチャーの失業対策」が日本にも貢献したと言える。この現象は、日本もサービス経済社会への移行が急速に進むことをも意味する。個人の能力が問われる新しい労働形態が起りつつあることも明白である。じっくりそれを外から眺めることにしたい。


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