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8.2.2 内部監査 

 旧規格4.17と同じ要求事項であるが、経営陣への報告が必須となり経営者は監査結果に対し積極的に関与しなければならない。品質マネージメント・システムが規格要求事項に適合しているかどうか、並びに効果的に運営されているかを監査目的としているから、焦点を業務プロセスに当てた監査を行うとともにシステムそのものする。これだけのことを行える力量が内部監査員に必要となる。単に、手順書で求められている書類がきちんとなされているとか、記録が規定されたように作成され保管されているなど断片的で末梢事を取り上げることだけが内部監査ではない。現行のシステムやプロセスが本当に最善であるかどうかを評価する活動であるべきである。

 この点に関して言えば、お互いを信じ合うことを前提にした日本企業の体質の中では、本来の内部監査は無理な要求なのかもしれない。相手を傷つけないように悪いことが分かっていても表面化させないならば、この内部監査本来の趣旨には根本的に食い違っている。結論的に言うならば、監査員は経営者の代行をしている意識と能力が求められる。英語の「audit」とは、まさに「監査」であって審査や社内調査ではない。

 一方、経営者の意識も変える必要がある。内部監査を危機管理の一貫として認識し、真剣に取り組むべきである。企業内に内在している「もろさ」がどこにあるか、あるいは顧客視点にたてば無駄な業務が行われているところを探し出す活動ととらえる必要がある。このように内部監査をとらえると、日本企業の弱点を強化することができると考える。このような観点から、旧規格での内部監査の独立性をFDISでは「客観性並びに不偏性」と変更したことは容易に理解できる。

新規格への対応

 品質マネージメント・システムが規格要求事項に対し適合しているかどうかを内部監査の目的にし、内部監査結果を基にして継続的改善活動の策定に利用する手順を加える。すなわち、8.1項の「計画」とのリンク付けを明確にすればよい。

 経営陣(最高経営者自身もしくは経営管理者)への報告が確実に行われるように、内部監査報告書の「要約(リード・シート)」の写しを毎次回付されように報告書の改訂を行う。また、品質管理責任者は、是正処置報告書管理台帳の写しを定期的に経営陣に配布する手順を現行手順に加えれば対応できる。従来のように、年一回しか行わない経営者の見直し会議で三回行われた内部監査を一括して報告することは、新規格では不適合である。

 当然ではあるが、内部監査員の教育訓練計画は継続的改善計画の一部となりうることを忘れてはならない。

8.2.3 プロセスの測定及びモニタリング

 序文で概念を説明しているプロセス・アプローチを如実に表しているのが、この要求事項である。94年版4.9 工程管理における工程パラメーターに相応しているようだが、全く新しい要求事項である。製品の検査・試験に関しては次項の「製品の測定およびモニタリング」での要求事項となった。

 企業は、収益率、スクラップ率、再加工率のような企業の財務的影響が比較的大きいものには経営者や管理職が規格で言われるまでもなく管理している。しかし、営業部門から出荷・配送部門までの個々のプロセスの管理状況を把握するまでに発展させている企業は少ない。特に、日本では効率だけを追求する財務畑出身の経営者が「現場」を知ることなく効率のみに眼を向けている傾向が強いように見える。規格は、顧客の視点から重要な納期の厳守、間違いのない請求書のタイミングのよい発行、コストと時期を得た開発の完成など企業内でのあらゆるプロセスをモニタリングできるように、パラメーターを定めることを要求している。

 したがって、顧客要求事項の明確化から製品の引き渡しに亘る製品の具現化プロセス全般を対象とすることに留意しなくてならない。この要求内容は以下の概念を反映している。製品やサービスは、プロセスの結果であるから、プロセスが正常に運営されなくては最終的な製品やサービスのクオリティは維持・改善できないという意図が明確となった。

「数値で自社のプロセスを説明できない企業は、自社のプロセスを理解することはできない。そして自社のプロセスを理解できないならば、それらを管理することはできないのだ。その会社の根本的な経済状態に関係するプロセスをメトリックスで測定することが、品質を改善し、顧客満足を増大させる唯一の方法なのでる。」(シックスシグマ・ブレークスルー戦略)
   

 購買部門や出荷部門など間接部門のプロセスを特定した指数で測定し、それらのプロセスが顧客要求のためにいかに管理された状態で運営されているかをモニタリングすることになる。これらのモニタリング結果は、継続的改善の計画作成に利用されることになる。

 プロセスを測定するパラメーターをISO9004で例示しているから参照すること。理解を助けるためにもっと具体的な事例を挙げると以下のようになる。

 図面や発注書への誤記件数
 納期遅れ日数のような顧客苦情に直接関わること以外にも設備の日常管理の遅れ日数

 設計開発部門では予測年月と予算に対する実績との対比

 営業事務担当者の一顧客当たり応答時間、あるいは銀行や役所における待ち時間

 特に、「サイクルタイム」の概念を利用するならば、サービス業や事務部門と言えどもプロセス・パラメーターを設定することは容易である。たとえば、

 病院での書類への記入、患者の診察記録の検索、血液検査、レントゲン撮影などの総時間
 顧客の注文書の数値と財務部の作成した代金請求書での数値の差異による代金の回収遅れ

 現在、日本では企業業績への貢献度並びに顧客満足充足と観点から事務部門の不効率さが話題になっているが、新規格はこれらにも焦点があてられたと言える。


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