審査への疑問
まったく同じ目的を達成するために現在のこの制度の運用は合理的、効率的なのだろうか。たとえば審査日数はいまのままでよいのだろうか。外部品質保証の能力を審査するために、現在の審査日数で本当にいいのだろうか。それぞれの企業は内部で総合的な品質管理体制を構築しているとの前提の話だが、そのときに、外部品質保証の体制を調べるのに、似たようなことについて詳細に調べる必要があるのだろうか。現在では審査対象の組織を構成する人数に応じて審査日数と審査員数を決めているようだが、実はそうすべきでなく、その組織が果たすべき機能の数、部門数、外部とのインターフェース数など、機能上の複雑さに応じて審査工数の計画をたてるべきではなかろうか。
審査準備にかかる工数は合理的であろうか。品質マニュアルの本質的でない部分に多くの時間を使っているように思うが、どうだろうか。形式が重要な場合があるのはわかる。だが、たかが品質マニュアルで、法律のような形式的完全性を求めてどうしようとというのだろう。外部品質保証の能力を審査するという観点から、品質マニュアルは、どのような記述の方法、詳細さで書くべきか、検討しなければならない。(出典:飯塚悦功著「ISO9000と TQC再構築」)
飯塚先生が疑問に思われている審査の内容と少し異なるが、以下に示す審査の実例は、審査員の「質」の低さを如実に表している。このような審査員の言語がISO 規格を性格をゆがめ、被監査側の不信感を高めている。まことにゆゆしきことではある。審査員の自己研鑽を強く望む。
実例1.審査員「ホテル代立て替えると、決済に時間がかかるのでそちらで払っ ておくのが普通だよ!」
事例2.審査員:「マークはななに使ってるの?」
被監査者:「名刺だけです。」
審査員:「スケールッ」
被監査者の独り言 (スケール貸してくださいくらい言え!)
実例3.審査員:「部品置場は?」
被監査者:「ここです。客先名と部品名を表示してます」
審査員:「部品置場と書いてない!私がわからないから不適合!」
実例4.審査員:「発注書は?」
審査員:「最新版管理してるの?」
被監査:「記録として管理してます」
審査員::「発注伝票は品質文書ですよ。やってないとメジャーだ
よ!」
被監査者:「伝票がですか?オーダーは記録として管理してます。」
審査員:「あんた!勘違いしてんじゃない?」
被監査者(ココロのなかで:「うるせーな、じじー」)
審査員:「今は議論してる時間がない」
クロージングにて
審査員:「あの人が納得しないようなので 注文書の最新版管理が
されてない と書いておきます。」
被監査者の工場長:「ハイ!」
被監査者審査機関に問い合わせ:「記録の最新版管理ってどうやる
の?」
監査機関:「審査員と話し合ってくれ」
実例5.審査員 :「***の文書を見せて下さい。」
被監査者 :「これです。」といって、***手順書を審査員に渡す。
審査員 :文書を手にとって
「ふむふむふ・・・・・。 ここの”と”が一文字多いです
ね。」
被監査者 :「え!」
審査員 :何食わぬ顔でページをめくる。しばらくして、
「実作業と文書はあっていますね。」
「では、次に・・・・・」
実例6.審査員:「文書を記録としてるんだからMajorにするぞ!」とおどさ
れました。
審査機関に問い合わせした。
審査機関:「審査機関は審査員と話し合ってください」
被監査者 は 正式に文書での異議申し立てをするか悩んでいる。
ISO 9000規格の基本的な目的
「ISO9000」規格は、すでに品質プログラムを持っている企業とっては使いやすいものである。ISOの品質用語と概念は、基礎的なものであり、品質の分野において広く受け入れられているものである。またこの規格は簡素化されている。たとえば、ISO9001品質規格は、ほんの7ページである。しかしながら、これは基本的に「万能型(one size fits all)」の問題を抱えている。この規格は、包括的でほとんどの産業セクターに属する企業で適用できるよう開発されている。その結果として、この規格を、ある特定のプロセス、システムまたは産業に導入または適用しようとした場合に困難をともなう場合がしばしば生ずる。しかしながら、努力と工夫によって、「ISO9000」品質規格は広範囲にわたって適用することが可能であり、固有のアプリケーション、工程または製品向けに調整することができる。この規格の基本的な目的は、会社が品質システムを確立し、製品の安全性を維持し、顧客を満足させることができるようになることにある。(出典:Greg Hutchin著「企業戦略としてのISO9000」)