法規制その他の要求事項の明確化
規格での文面は下記のように、たったの三行である。にもかかわらず、システム構築時の作業は困難を伴う。
「組織は、その活動、製品又はサービスの環境側面に適用可能な、法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項を特定し、参照できるような手順を確立し、維持しなければならない。」
安全・衛生の規定づくりの時の体験だが、取得企業の事業所に関わる法規制を探し出すだけでも、大変な時間が必要だった。「コンビナート法」など国の法規制にはある程度の知識があるので、見つけやすい。しかし、地方自治体が独自に制定している公害防止条例などは、適用する条項を探し出すには専門家の手助けが必要だった。ISO14000の普及が進んでいる今は、インターネットや関連図書が多くあるので何とか「特定」できるだろう。このページのリンク集を使って、その目的を果たすことができるようにしているので、利用してほしい。念のためだが、法規によっては、事業の規模(たとえば、従業員数や事業所の面積)によって適用しなくてもよいものがあるので注意してほしい。
規格の文言で分かるように、適用法規を「特定」するだけでなく、たえず「維持」しなければならない。法規制は生き物であり、たえず変更されたり、追加されたりする。それらを「維持」することは、構築時の「特定」以上に困難である。たとえ大きな法規が制定、発効されたとしても単に役所で官報として張り出されるだけだからである。役人からすれば、官報が発効するまでに、法規の対象業界と十分な討議を重ねてきているのだら大がかりな広報手段を必要とはしないとする立場であろう。とすれば、一般企業は自衛するのみだが、小規模企業で法律専門家のサポートを得ることは難しい。やはり、業界の仲間からの情報が入ってくるように人脈を持つことが出来うる関係維持や役所からの広報に注目する必要がある。
当然規格は、このように法規遵守が出来るように、仕組みを作ることを要求している。環境マニュアルでの文言例は、下記のようになる。
法的及びその他の要求事項
当事業所が遵守しなければならない環境関連法規制及び行政指導を含むその他の要求事項は、下記のものである。
1.水質汚染防止法
2.廃棄物の処理及び清掃に関する法律
3.大気汚染防止法
4.公害防止協定
5.消防法
6.騒音規制法
7.労働安全衛生法
8.エネルギーの使用の合理化に関する法律
9.工場立地法
10.藤沢市騒音防止条例
原則として年一回の見直しを行うことにより、当事業所は、環境に関わるすべての法規制その他の事項を遵守する。上記の法規制およびその他の環境関連規制の本文は、当事業所内に保管し、すべての従業員がいつでも閲覧できるようにする。また、顧客や地域住民の要求がある場合には、その写しを提供する。
また、環境担当責任者は、新たに発効された法規およびその他の遵守事項が生じた場合には、速やかにその内容を経営者に報告し、「環境管理計画策定規定」(規定1−1)の手順に従って当該マニュアルに追加する。
以上でも十分であるが、上記の法規の主要な要求事項、適応側面、すなわち、設備や工程を一覧表にして明確にするなど工夫をすれば、なお完全なマニュアルになる 。 |