ISO9000の導入は製造者責任法の対策になるのか?

日本のP/L法にはそれほど役立つとはおもえないが、海外、とくに米国のP/L法には強い味方となる。裁判ざたになった場合、開発時や品質管理の記録を証拠に企業が製品の安全性などを立証しなければならない。この時に記録がなければ、立証が困難となり、裁判は不利になる可能性がたかい。品質システムはこれらの記録を重視する仕組みを取り入れているので、いざのときに証拠記録をそろえるのに役立つことは確かだ。この点、日本の企業は意識も低いし、弱点となっている。ISO9000導入の大きな動機にはならないが、付帯的なメリットではある。<戻る>

品質保証と品質管理とはどう違うのか?

この点を明確にしていないと、ISO9000を導入する際に混乱を招くので、蛇足とは思うが質問とした。品質保証は、顧客の要求項目を完璧に理解し、この要求項目を満たした製品もしくはサービスを提供できるように追及するすべての活動とみなすことが出来る。したがって、セ-ルスマンが顧客の要求する製品のスペックはもちろん、納期、納入方法などすべてを関係部門に連絡することから、製品が顧客に受け入れられるまでの全てのプロセスが品質保証活動といえる。一方、品質管理(手法)は顧客の要求事項が明確になった状況で、この要求事項を充足するために講じられる意図的な業務と言える。ちなみに、ISO9000ではこの業務を品質管理手法と定義し、品質管理と区別している。品質管理手法(Quality Control)と品質保証(Quality Assurance)の両方を包含するのが品質管理(Quality Mangement)としている。この点を正確に理解して欲しい。
この際、総合的品質管理についても述べておきたい。日本で一般的に取り入れられている全社的品質管理に近いが、顧客、企業そして社員の利益のみならず、社会全体の利益も考慮した概念になっている点が違う。上記の品質管理(Quality Mangement)の概念に、経営者の長期的かつ包括的経営戦略と企業を構成する全社員の参画をもちこんだものである。
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品質マニュアルの性格と記載内容は何か?

   ISO9000の文書体系については別に説明するが、品質マニュアルは文書体系の中では最上位に位置する文書で、監査員は、この品質マニュアルに記載されている内容にもとずいて品質保証活動が正しく実施されているかどうかを監査する。また、顧客がISO9000の認証を取得している場合、製品もしくはサービスの供給者がどんな品質システムで、どの程度実施されているかを監査することがある。この際にも、品質マニュアルに記載されている内容が対象となる。
記載内容の詳細は別にゆずるとして、典型的な構成は次のとうりである。経営者によって示された品質方針および目標が最初に記載され、組織図と品質に関わる主要な責任者の責任と業務が明確に記述される。さらに、品質に関わる全てのプロセスがどのように管理されているかの概略を、ISO9000の要求項目毎に記述する。おのおののプロセスがどの手順書で規定されているかが分かるように、手順書のリストを記載することが必要となる。したがって、手順書が完成しないと、品質マニュアルは完成できない。ただし、文書体系をまずまとめることができれば、品質マニュアルを作る事は出来る。
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マニュアル化によって仕事のやり方に柔軟性が無くならないか?

    仕事のマニュアル化が遅れている日本では、懸念されるのは理解できる。海外で仕事をしていたときに経験したことだが、マニュアルがなければ仕事をしないのが一般的になっていた。これは問題が生じたときに責任を明らかにすることが出来ないからだと分かった。日本では個人ではなく組織の責任として、処理するようだが、いつまでもこのやり方が続けられるか疑問に思う。ともあれ、マニュアル化に懸念することはいらない。なぜなら、手順書は今社員がやっている仕事のやり方を文書化したに過ぎないのだから、いちいちマニュアルを見ながら仕事をする人はいない。疑問に思った時に、手順書を見るぐらいである。また、手順書はいつでも改訂できるので、仕事のやり方に柔軟性が無くなる懸念は無用と言える。<戻る>

中小企業にとって認証取得は重荷にならないか?

   取得のデメリットのところで説明があるが、財政的負担は明らかにある。ところが、韓国の中小企業についての経験だが、取得によって社員からよかったとの反応があったとのことだった。品質システムがあることによって、曖昧さが無くなったことが一番社員にとってよくなったことらしい。また下請け企業の社員にとって、一番苦しいのはクレ-ムがついたときで、このとき記録が完全なので、原因と対策が即座に作れることは、ISO9000のお陰だと言っていた。システムにしても簡単なものですみ、その構築に多大な努力を使う必要はなかったのも経営者にとって楽だったようだ。
国際標準化機構でも中小企業にとって負担にならないように指針がつくられた。また、最近中小企業を対象にした書籍も二三出版されている。これらを読むと分かるが、”軽いシステム”をつくるように示唆している。小規模工場でもISO9000を簡単にとることもできるし、顧客の信頼感を高めることができ、経営面でも大いに意義があると考える。
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取得するISO9000ファミリ-の選択方法はなにか?

これだけでも大変な議論があるようだが、簡単にしたほうがよい。ISO9003を取るのは努力(費用でもよい)と効果を考えた場合得策ではない。すると、ISO9001かISO9002のどちらかになる。この選択は易しい。設計・開発に携わる部門(小人数の要員であっても)があればISO9001になり、なければISO9002となる。この場合、設計とはなにかが問題となる。設計とは、顧客のニ-ズに対して新しい製品あるいはサ-ビスを作り上げることと理解してよい。このような設計部署がなく、顧客から規格なり、要求事項があたえられ、そのとうりつくればよいとか、サ-ビスを提供すればすむならば、ISO9002を取得することになる。<戻る>

  


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