7.3 設計・開発
当社においては、特定された注文もしくは契約仕様に対して、現存し妥当性が確認された製品のデザインをそのまま採用できる場合がほとんどである。従って、新規市場に投入される製品、もしくは特殊な顧客要求事項を満たす必要のある製品である場合にのみ新規に設計・開発される。当該条件は、設計もしくは開発プロジェクトに適用され、現存し妥当性が確認された設計が顧客要求事項を満たすために採用されている場合の注文には適用されない。また、顧客がデザインの内容を提示している場合には、当該条項の要求事項は適用されない。
(作者注:設計・開発のプロセスは、企業の業種や複雑さにより大きく変わり、以下のプロセスは単なる一例にすぎない)
7.3.1 設計・開発の計画
設計・開発部長は、いかなる設計活動を開始する前でも設計計画を策定する責任を有する。設計計画は、設計プロセスを段階的に分解し、設計活動を明確にし、おのおのの特定された活動を実行するための責任者を任命する。また、設計計画には、設計レビューを含む設計、検証および妥当性確認のスケジュールが立てられる。
当該設計計画には、以下の事項が定められる。
・ 設計プロセスの段階
・ 環境面を含め各段階に必要となるレビュー、検証、妥当性確認の活動もしくは手段
・ 設計もしくは開発に必要なる要員、その責任と権限
・ プロジェクトに必要な設備などの経営資源
・ プロセス全般にわたって関与されるべき他部門もしくはインターフェース、および利用されるべきコミュニケーションの手段
当該設計計画は、設計・開発部長により作成され、関連部門長の出席の下でレビューされ、プロジェクトの進捗に従って更新される。レビュー時には、製品のライフサイクル、安全性、信頼性、耐久性、環境面、廃棄面およびその他のリスクが考慮される。また、製品が使用中に破損する可能性やその結果のリスクも評価される。
検証あるいは妥当性確認がすでに終了し、現存する設計に対する変更、もしくは小規模開発は、当該設計計画から除外される。除外された場合以外には、本項で使用されている用語「設計」には開発業務が含まれる。
7.3.2 設計へのインプット
設計・開発部長は、設計のスコープ、機能、性能、法的規制およびその他の情報を記述するための情報が収集され、設計活動に必要な文書類を作成できることを確認する。設計の専門職を含む関連部門長の出席の下で会議を開催し、製品要求事項に関してのインプットを明確にする。設計・開発部長は、以下のみと限定されないが、以下を含む設計インプットの文書書類並びに参照文書を収集する。
・ 製品を記述した顧客もしくは契約の仕様書、性能もしくは操作上の要求事項
・ 環境面での目標などの要求事項
・ 図面、設置条件もしくは制限事項、操作条件
・ 適用される法令・規制上の要求事項
・ 設計基準(これには環境に関する設計基準を含んでいる)、材料、プロセス要求事項
・ 検査・テストの基準および期待される結果
・ 類似の検証された設計の参照または事例
不完全で、不明瞭で、矛盾する要求事項は、設計プロセスを開始する以前に顧客あるいはその他の関係先との間で解決されるべきである。設計・開発部長は、確定された設計へのインプットを文書として記録し、管理すべき記録として保管・管理する。
7.3.3 設計からのアウトプット
完成ではないがある程度出来上がった設計は、設計インプットを満足させているかどうかを確認するためのレビューがなされる。このレビューを確実に実行できるように設計アウトプットが明確にされなくてはならない。従って、設計からのアウトプット文書には、製品をどのように検証するか、検証結果の合否判定基準は何かなどが記述される。また、安全性、適切な機能、取り扱い、保管、維持管理に対し重要な活動もしくはサービスを明確にすることもアウトプット内容の一部である。
当社の設計アウトプット文書には、該当する場合、以下の事項を含む。
・ 加工、組み立て、アウトライン、寸法、接続図面もしくは詳細図
・ 製造図面および材料仕様を含む資材明細書
・ 製品の合否判定基準
・ 場所選定図、並びに要求事項
・ 操作、試験、維持管理指示書
・ 製品の安全性と適切な使用方法に不可欠な特性
設計アウトプット文書は、設計へのインプットを定める会議で策定され、発行前に設計・開発部長によって承認され、関係部署に配布される。
7.3.4 設計のレビュー
設計の実現化に関連する部門長は、設計作業の中途で開発された結果をレビューする。レビューでは、設計がプロジェクトのスコープと設計インプットに適合していることが確認される。また、実現化が可能であることを確認し、現実的な、あるいは潜在的な問題点を明らかにし、それらの解決策を提案する。以下は、その活動のプロセスである。
a) 設計・開発部長は、設計プロセスの各段階で設計レビューを主導し、製品の要求事項が満たされ、設計は計画された通りに進捗していることを各部門長の出席の下で確認する作業を行う。
b) 顧客要求事項で特定されているか、あるいは法的規制によって要求されている場合には、設計計算もしくは図面、および設計アウトプットに対して顧客もしくは規制当局の承認が得られていることを確認する。
c) 設計レビューで使われた図面および詳細は、「予備的な」ものとして取り扱われる。管理文書としての図面は、要求事項に対し完全性、正確性、適合性がレビューされ、設計・開発部長によって承認・署名され、日付けされた時にのみ、加工および現地施行のために発行される。
d) 適切と見なされた場合、設計は施工中にレビューされる。何らかの理由により図面が現場施行のために修正されたならば、最終レビューは、是正処置を確実に行うために施行終了後に行われる。
設計・開発部長は、設計のレビューおよび事後のフォローアップ活動を文書とし、管理すべき記録として保管・管理する。
7.3.5 設計の検証
設計からのアウトプットが設計インプットとして定められた要求事項を満たしていることを確認もしくは立証するために検証活動が行われる。設計・開発部長は、プロジェクトの適切なる段階で設計を検証し、その検証結果を設計レビューのために供する責任を有する。
現実的には、設計インプットとしての要求事項に対する出来上がった設計の適合性は、設計担当者による充分なる比較計算、簡単な試験、経験によって、あるいは類似の要求事項を持つ前回の設計と比較することによって立証ないしは検証されることもあり得る。一方、高度な技術を要する設計においては実際使用や実用試験によってのみ検証され得るかもしれない。いずれにしても、最終的な設計レビューの際には、充分な関連するデータが提示されて、設計の実現化に関連する部門長によって検証結果は討議されるべきである。
設計の検証活動の結果および討議によって決定された必要な処置に関する記録は、管理すべき記録として設計・開発部長によって保管・管理される。
7.3.6 設計の妥当性確認
設計の妥当性確認は、設計プロセスの最終段階であり、製品が顧客要求事項および使用時の期待を満たし、あるいは求められている性能を有することを確認する意図を持って行われる。設計の妥当性確認は、7.3.1項の設計計画に定められた検査および試験によって実施される。設計・開発部長は、最終の設計レビューのために設計の妥当性を確認する責務を有する。
完成した設計は、適用できる場合、以下によって妥当性が確認される。
・ 顧客要求事項で特定された検査および試験、要求事項ないしは業界の基準に対して完全に合格している。
・ 規制当局の製品証明要求事項に対し適合性を立証する。
・ 現地設置、完全な実地性能試験を行う。
7.3.1項の設計計画に明示されている場合、妥当性確認には、顧客あるいはその他の利害関係者が関与する場合もあり得る。
設計・開発部長は、設計の妥当性確認の結果、およびその他の処置があれば妥当性確認報告書に記録し、管理すべき記録として保管・管理する。
7.3.7 設計の変更管理
設計の変更内容は、設計変更要望書に記載される。当該変更要望書が製造のために配布される前に設計・開発部長によってレビューされ、必要に応じて検証、妥当性確認を行い、承認される。以下は、その活動プロセスである。
a) 設計変更の内容は「設計変更要望書」に記入される。設計・開発部長は、設計計画の変更の必要性、追加的検証または妥当性確認の必要性を決定し、「設計変更要望書」を承認する。承認された「設計変更要望書」を設計者および関連する部門長に配布する。設計変更には、製品の構成部品も対象とされる。
b) 設計インプットが変更された場合には、変更がすでに承認された設計検証または妥当性確認の結果に影響を及ぼすかどうかを決定するために、7.3.4項に従って設計変更レビューが行われる。
c) 設計が完成した後に設計変更が生じた場合には、その変更の措置を決定するために7.3.4項に従って設計変更レビューが行われる。
d) 設計変更の内容が設計活動に大きく影響すると判断された場合には、新規設計として7.3項すべての手順を適用する。
設計・開発部長は、設計変更レビューの結果、およびその他の措置があれば記録し、管理すべき記録として保管・管理する。