1994年版で取得している企業の経営者はもちろん担当者でさえもISO9004を読むこともなく品質システムを運営していたことだろう。それほど1994年版ISO9004は、疎遠な規格であった。がしかし、2000年版ISO9004は全く違う。企業の競争力を高め業績を向上させるための国際規格である。今回だけはISO9004から何かを学ぶことが必要と思いここに掲載した。 　

序文　　

0.1　一般

本国際規格は、ISO9001:2000と同じ品質マネージメント・システムの原則の下に組織が業績を向上させるための指針を提供する。

本国際規格は、品質マネージメントの活用に関する包括的指針を示し、品質マネージメント・システムはいかなるシステムを描きながら包括していくべきかを記述している。本国際規格は、組織が品質マネージメント・システムを構築し、改善していく上で支援できるかもしれない。

本国際規格は、組織が業績を強化するためのプロセスを向上させる点に焦点が置かれている。ある期間において品質マネージメント・システムの成熟度を評価することに本国際規格を利用することも可能であろう。

組織独自の品質マネージメント・システムの設計および実行は、変化するニーズ、独自に特定する目標、組織が提供する製品、組織が採用しているプロセスおよび独自の業務内容によって決まってくる。品質マネージメント・システムの画一化を意図することが本国際規格の目的ではない。

本国際規格に記述されている品質に関わるプロセスの選択、またそのプロセスを組織がどこまで採用し適用するかは、組織が製品を提供している市場、運営プロセス、経営資源のような要因に依存している。

組織の役割とは以下を行うことである。

　a)競争力をつけるために組織の顧客およびその他の利害関係者（例えば、従業員、供給者、所有者、社会）のニーズと期待を明らかとし、それを満たすこと。そのためには効果的かつ効率的な運営が求められる。
　b)組織全体の業績および能力を得て、維持し、そして向上させること。 　

　品質マネージメントの原理を適用することは、直接的に利益をもたらすだけではなく、コストやリスク管理においても大きく貢献する。利益、コスト及びリスクを考慮すること は、組織、その組織の顧客、そしてその他の利害関係者にとっても重要なことである。この考慮によって全般的な業績に与える影響には以下のようなものがある。

　c)売上高、利益及び市場占有率。これらは、リーダーシップの発揮、効率の向上、従業 員の成果の向上、および従業員と顧客の満足度によって増大できる。
　d)事業に必要とされる経営資源によるコスト。経営のための資金が適切でないと、損失につながり、ひいては欠陥のある製品を販売することにより市場での競争力の低下につながりやすい。市場占有率の低下、イメージもしくは評判の低下、顧客のクレーム、責任負担の増加、そして人材および財務上の資源の無駄によって、さらに損失を引き起こしかねない。

0.2　プロセス・モデル

本国際規格は、組織おおびプロセスを運営するにあたってはプロセス指向のアプローチを採用することを推奨するものである。また、改善の機会をたやすく見つけだし、管理する手段としてもその採用は推奨される。

本国際規格に規定される包括的な品質マネージメント・システムの要求事項を一つの「プロセスモデル」として表す概念図を図1に示す。このモデルには、本国際規格中の条項5,6,7および8の四つの重要な表題が図式的にどのように統合されているかを反映している。