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東海林先生と菅原洋一

東海林修先生が菅原洋一さんのために最初になさったお仕事は
1972年10月の菅原洋一第6回リサイタルでした。







レコードのライナー 小西 良太郎


いつも、新しいものを生み出すのは、
人と人との"出逢い"なのだと思います。
ビジネスもそうでしょうし、男と女のこともそう。
まして音楽の世界なら、なおさらのことでしょう。
このライブで、新しい魅力を生み出したのは、
間違いなく、菅原洋一と東海林修の出逢いだったと思います。
片や"おとなの別れ"専売の実力派歌手、
片や"ロックのショージ"などと呼ばれる作・編曲家。
一見、ぴったりとはこないような意外な組み合わせが、
はっきりと、菅原の世界を一歩、前へすすめたと思います。

冬のある日、このレコードがプレスに回るちょいと前のことですが、
菅原はしみじみいったものです。

そりゃあ、最初はちょっと驚いたんですよ。
東海林さんは、若い歌手たちのものを
ガンガン書いている人でしょ。
そんなハードなアレンジで、
僕は歌ったことがありませんからねえ。
でも、よく考えてみれば、初めてのことだから、
やってみるべきだって気がしたんです。
何かこう、ワクワクするような気分になれそうで……。
リサイタルが終わった時、やっぱりこれだったんだな、
こわがらずにやって、やっぱりよかったな、
そう思いましたねえ


逆に考えれば、東海林の方も似たような気分があったと思います。
菅原といえば、ストリングスがきれいに鳴って、
少し古風なくらいきっちりとした姿のアレンジで歌ってきた人。
それもタンゴを歌っていたころからですから、
すっかり身についています。
そんな歌い方で歌い込んだ手応えが、
歌唱力バツグンという評価につながっているのを
飾り直す作業なのですから……。

一つ間違えると、手に負えなくなりそうな二人の"出逢い"は、
結果、うまく融合して新しいサウンドになりました。
二人の、もともとの肌合いと、
それがとけあって一つになった妙味は、
たとえば「命果てる日まで」「愛しいものへの歌」に、
はっきりと聞き取ることができるでしょう。
総体に、菅原の歌は少々男っぽくなって
"泣き"の部分が後退しました。
東海林の、躍動的な若々しいサウンドに包まれたせいです。
菅原の古いファンの方には、
多少もの足りなさが残る曲もありそうですが、
それは録音がリサイタルの初日に行われたことと、
ここを出発点に、菅原が新しい冒険に手をのばしはじめた気配が、
そう感じさせることと思うのです。

一つの世界を作り、保ち続けるということは、
同時にカラにこもり続けることにも通じます。
歌手という商売は因果なもので、
自分の世界をはっきりと作りあげ、それを堅持しながら、
同時にこわし続け、新しい魅力の手探りをしなければなりません。
立ち止まれないのです。

(後略)

小西 良太郎



はつよメモ:

貴重なレコードの入手により 「愛しいものへの歌」と「幸せのかたみ」が
東海林修先生の、菅原洋一さんとの初めてのお仕事となったステージで
先生ご自身によるピアノで初演されたことがわかりました。
このアルバムは、初日の録音とのことですので、正真正銘、名曲の初演。
なおのこと貴重な音源でした。

アレンジは、アルバム「人生」に収録されているバージョンとほぼ同じですが
歌詞もセリフもかなり違いました。
 
 愛しい人よ 遠く長い旅はつらいか
 星の下で 星のように ほゝえみながら 
 おぼえておいて 私といたことを

テーマは全く同じ、別バージョン同様、胸を打つ岩谷時子さんの詩の世界でした。


第一部は山本直純さんの指揮/編曲による童謡のステージでしたが、
第二部の始まり、「ゴッド・ファーザーの愛のテーマ」から
文字通り全く別の世界となります。

1972年に日本で公開された、マーロン・ブランド主演の
このマフィアの物語は、大変なヒット&話題作でした。
http://www.thegodfather.jp/
同時にこの「愛のテーマ」も大ヒット、日本中、どこを歩いていても、
この曲がが聞こえて来ない日はないというほどではなかったかと思います。
ステージ101関係のアルバムでも皆が歌っていましたし
長谷川一夫丈が東宝の舞台でこの曲で踊ったこともあったほどです。

東海林修先生のアレンジの「愛のテーマ」だけでもいくつあるかわかりませんが、
さすがにステージの生演奏、それも先生のピアノのバージョン、
今まで聴いた中で最高の「愛のテーマ」、
「これぞショウ・ビズ」。感動の幕開けだったと思います。

「愛の讃歌」「ラ・クンパルシータ」
おなじみのこの曲たちの、最高の「色」をご想像ください。
きっと音源は、さらにその100倍すばらしいものではないかと思います。
文字で表せないのは本当に残念です。

残念ながら、菅原洋一さんやオムニバス、数多くのベストアルバムCDに
「愛しいものへの歌」は収録されておりません。とてももったいないことです。
旧ポリドールの沢田研二さん、野口五郎さんの実況録音盤と合わせ、
すべての東海林修先生の作品、ステージが復刻されることを、心から願います。


このアルバムは、ちーこさんが見つけ、譲ってくださいました。
心からお礼を申し上げます。ありがとうございました。