※この感想はblogからの転載になります。

投名状〜ウォー・ロード/男たちの誓い

 久しぶりに映画館まで足を運び、香港/中国映画『ウォーロード/男たちの誓い(原題:投名状)』を観て来ました。

 私はアジア映画て苦手でほとんど観ないんですが、THE ALFEEがエンディングテーマを担当していることもあり、せっかくだから映画館で観てみたいな〜と邪な理由で鑑賞(笑)。まぁ、こういう理由でも付かなくちゃ観ないジャンルなんですよね。

  しかし、ALFEEが担当するのだから吹替版だと思い込んでいたので字幕版だったのにはビックリ。字幕なら作品の雰囲気を活かして『風の詩』のインスト ver.の方が良かったような気がしなくもない。ずーっと中国語だったので、最後でいきなり日本語が聴こえてくるとビックリしますな。でも、冒頭などの説 明文は英語だったしなぁ…。なんか不思議な感じ。映画『孔雀王』の時は英語歌詞の楽曲を提供していたよね。
 ていうか、その映画館では映画上映の前後にALFEEの別の季節外れの楽曲が客席に流れていて、どのCDで掛けているのが直ぐ判ったんだけど、そっちの楽曲も耳に残ってしまった気がする…(笑)

 映画の話題に戻って。

 舞台は19世紀の中国。
  戦いにより仲間の兵士が全滅したパン(ジェット・リー)は、街の外れの村で盗賊のリーダーのアルフ(アンディ・ラウ)と彼の養子のウーヤン(金城武)に出 会い、2人に生き延び安住の地を得たいのなら軍に入べきだと薦める。そこで、赤の他人であるバンと結束力を固める為に義兄弟の契り「投名状」を交わそうと ウーヤンが提案し、3人は義兄弟の契りを交わす。そして固い友情で結ばれた3人は過酷な戦に挑んでいくが、勝利を収めていくことで悲劇を生むことになって いく…。

 という話で、「死ぬのも地獄。生き抜くのは更に地獄。」とでも言うような戦乱の時代に翻弄された熱き男たちの物語です。
 戦争モノなので残酷な痛い描写も多いんですが、私はリドリー・スコット監督作品で見慣れているせいか、見るに耐えられる範囲だった気がします。でも、最初から最後まで力を抜くことはできませんでしたが。

  正直言って作品の舞台背景は冒頭の説明文を読んでもよく判らず(笑)、「なんでこっちの軍とあっちの軍が戦って、こっちの軍が勝つと…こうなるわけ?」と 混乱しそうになりましたが、メインの3人の友情や生き様が物凄くドラマチックだったので、見応え十分で最後まで飽きずに観てしまいました。

  主役を演じたジェット・リーは得意のマーシャルアーツを極力封印し、演技派に徹して渋みのある存在感を発揮!それでいながら戦闘シーンは自身の身体能力を 十分に活かした殺陣を披露し迫力満点。アンディ・ラウや金城武も役柄にピッタリで、それぞれに見せ場があって良かったです。
 特に、3人が同じ場面でそれぞれ違った想いで涙を流すシーンはグッときましたね。3人の想いは間違っていないからこそ、なんとも遣る瀬無い。

 あと3人とも眼差しの強さが印象に残りました。威圧感のある鋭い眼光のジェット・リー、正義感が強く熱く燃え滾るような眼差しのアンディ・ラウ、好奇心旺盛で情熱的に潤んだ瞳が多かった金城武、それぞれキャラクターに合った個性が目に出ていたように感じました。

 ただ後半から急に展開が早く進み、観ながら重要なシーンを見逃したんじゃないか?と思うほど、ブツ切り状態になっていたような印象を受けました。CGに頼らないリアルな戦闘や3人の心に迫るような緊迫した関係が良かっただけに、後半の物語端折り過ぎの急展開ぶりは残念。

 でも、エンターテイメント性は極力排除しリアルさが増していた分、3人の男たちの悲劇や戦争の虚しさ醜い権力争いが際立ち、かなり「重い」作品になっていたと思います。気軽に「面白かった」とコメントしたら不謹慎に感じてしまう程の重さでしたね。


 とにかくアクションを極力抑えたジェット・リーが素晴らしくて、後半のパンが宴の席で語らうシーンが切な過ぎて堪りませんでした。ジェット・リーも円熟した演技を全面に出すようになったというか、アクション派から演技派に良い感じに移行しつつあるな…とも感じた作品でした。





 これより、ネタバレを含んだ感想になります。


  パン昇進式の時にウーヤンがアルフを暗殺された仇として忍び込んで来るという展開は読めましたが、いざ一対一の対決になって圧倒的にパンが強いにも関わら ず、決してウーヤンにトドメを刺さなかったパン。投名状を破り義兄を暗殺したパンを憎んでいるにも関わらず、彼から貰った靴を履き続けていたウーヤン。双 方の"想い"が切なかった。

 別に3人は戦い続けることを望んでいたわけじゃなかった。その気持ちは同じはずなのに、最終的に求めるもの が少し違っているだけに、誤解や疑惑や裏切りを生み、取り返しのつかない悲劇を生んでしまうというのが…救いが無かったですよね。でも、望んだ死を得られ たバンには救いがあったのかな…。

 昔も今も、戦争を起こして良い思いをするのは上の人間だけで、その人間の駒になってしまえば生きていても死んでも何の救いが無いのが変わらないんですよね。
 投名状を結んだ熱き3人の男たちの物語でしたが、そんな彼らの人生を弄ぶ上官の3悪人3狸の存在も印象に残りました。


 しかし、金城武演じるウーヤンは弟分的な存在だったせいか、驚いたり悲しんだりした時に見せる捨てられた仔犬のような目が妙に合ってました(笑)


 


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