※この感想はblogからの転載になります。

PAN'S LABYRINTHパンズ・ラビリンス

 去年の10月に『スマステ』の「月イチゴロー」で吾郎ちゃんが、「コトイチ!(今年一番!)」と大絶賛していた映画『PAN'S LABYRINTH』をやっと観に行くことができました。
  単館ロードーショー向けの作品なんですが、去年の10月に公開されたにも関わらず、口コミなどで話題や人気が広まり今でもロングラン上映が続いています。 今年の3/28にDVD発売も決まっていますが、去年のアカデミー賞で撮影賞や美術賞などを受賞しているので、やはり劇場のスクリーンで観たいという気持 ちが強く、願い叶って観に行けて良かったです。

 時代は1944年のスペイン。内戦は終結したものの、Francesの独裁政権に反旗を 翻すゲリラは山奥に潜み抵抗を続けていた。御伽噺が大好きな少女Ofeliaは、母親と共に将軍が任務に就いている山奥の駐屯基地に向かった。母親が将軍 と再婚して子供を身篭った為だったが、Ofeliaは体調を崩してしまっている母親を心配し、愛情のない将軍の言動に不安を覚えていた。しかし、基地に向 かう途中で、Ofeliaは不思議な虫に遭遇する。そして、その虫は妖精だと確信したOfeliaは、その虫の導かれるままに不思議な世界を体験してい く。

 …という内容で、妖精も出てくるし一見ファンタジー作品のように見えますが、実際はそんな幻想的なものだけではありませんでした。PG-12という指定が付いているだけに、現実世界を観るのが辛くなるくらいリアルに残酷に描写しているし、幻想的な世界の描写も『The Lord of the Rings』のようなグロテスクなものが多かったです。特に虫系が弱い人は苦手な作品かもしれません。
 鑑賞前までは「不思議の国のアリスのダーク版かな」みたいに思っていたんですが、鑑賞後はファンタジー作品ならではの不思議な世界を堪能しつつも、戦争映画を観たような重苦しさも残った感じがしました。

  この作品のラストは鑑賞した人によって印象や意見が分かれると思います。わざとそういう作りにしている節もあるし…。私はハッピーエンドだとは言い切れな いけど、綺麗なラストだったというところでしょうか。でも、本当に観て良かったと思いました。最近は映画館離れしていたので、久しぶりに心にズーンとくる 映画を観た気がします。
 別に宗教的な話ではないんですが、「何を信じるか」、「何を疑うか」ということで、その人間の心や幸福の価値観も変わってくるというということかな。吾郎ちゃんが好きそうな世界です。

 大人向けのダークファンタジー作品というか、大人に観て欲しいファンタジー作品だと思います。





【注意】以下、ネタバレを含む感想になります。



 ラストの結末の意見や印象は観る人によって分かれると先に書きましたが、それは主人公のOfeliaが経験したことをどう捉えるかによります。
  Ofeliaは妖精に導かれて、自分が地下の世界に存在する国の王女の生まれ変わりだと知らされますが、王女として国に戻る為には満月を迎えるまでに「3 つの試練」を乗り越えなくてはいけません。Ofeliaは果敢に挑戦していきますが、この言動が実際に起きていることなのか、はたまた現実に疲れきった Ofeliaが現実逃避の為に見ている妄想なのか、作品上では明確に描写していない分、鑑賞している人の想像に委ねられています。

 この 作品の中で、将軍の独裁政権に従わない医師が、従わない理由を「何も疑問も持たずに従うだなんてできません。それでは、心のない人間になってしまう」と言 います。Ofeliaも、「最後の試練」で、この言葉のをそのまま行動に表しています。結果、Ofeliaは命を落とすことになりますが、その選択は間 違っていなかったと本人は確信しました。

 Ofeliaの見た幻想世界を知らない者からすれば、Ofeliaは哀れな死を遂げた不幸な少女だったという位置付けに終わってしまいますが、Ofelia自身にとっては決して不幸な結末ではなかった。
 純粋な心を持ち続けた人間は、傍から見れば哀れな死に方をしても、本人にとっては幸せな死だったかもしれない…そういう気持ちにさせられる作品でした。だから映画を観終わった後、Ofeliaを失った喪失感みたいなものは感じなかったのかも。

 大切な存在を失った人が、その失った存在の魂が死してもなお幸せでありますように…と願いを込めた気持ちと、この作品のテーマは似ているかもしれません。




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