※この感想はblogからの転載になります。

ELIZABETH:The Golden Ageエリザベス:ゴールデン・エイジ

  “ヴァージン・クウィーン”と言われたElizabeth一世の女王即位までの物語を描いた映画作品『ELIZABETH』の続編で、約9年ぶりに同じShekhar Kapur監督と主演Cate Blanchettで製作された『ELIZABETH:The Golden Age』を観て来ました。
  Cate Blanchettは9年前にこの役柄でアカデミー賞主演女優賞にノミネートされていましたが、今回も同じくノミネートされているという快挙ぶり(しか も、今回は『I'm Not There.』でも助演女優賞にノミネートされている!)。しかし、この作品を観れば、Cate Blanchettがアカデミー賞にノミネートされるのも当然!と言いたくなるような、圧倒的な存在感を発揮していて、正に彼女の前に平伏したくなりま す。もう、劇場でトレイラーを初めて観た時から、私のハートはCate Blanchettに鷲掴みされていました(笑)。

 物語は文字通り、前作『ELIZABETH』の続き。
  1565年。スペインが「世界最強」として名を轟かせ、ヨーロッパ全土をカトリックの国にしようと目論んでいた。しかし、“ヴァージン・クウィーン”とし て英国に全てを捧げたElizabeth一世は、プロテスタントの女王として国内を統治しており、スペインの国王のPhilip二世は彼女の失脚を企てる のであった。

 …という話で、前作同様にElizabeth一世の波乱な人生を、彼女の“孤独の葛藤”を織り交ぜながら、この激動の時代の中で彼女はどうやって英国の黄金時代を築き上げたかを描いています。

  Elizabethが生きていた時代、カトリックvsプロテスタントの宗教戦争が一番激化していました。特にElizabethは、父親(Henry八 世)がプロテスタントの母親と再婚したいがために、カトリックからプロテスタントに改宗しカトリック(ヴァチカン)から反感を買ってしまい、再婚を正式に 認められなかった。その為、Elizabethは英国女王を継承した後でもカトリックからは妾の子という扱いを受けている。
 だからカトリックの スペインは、Elizabethの従姉妹であるスコットランドの女王Mary Stuartを正式な英国女王にしようと密かに動く。しかし、スペイン王Philip二世の本当の狙い別にあり、Elizabethは最大の危機を迎える ことになってしまう。

 Elizabethの境遇は前作と変わりはないものの、“ヴァージン・クウィーン”として女という立場も捨てた身である為に、心の奥底に残る「女性の自分」との葛藤もあるなど、Elizabethの苦闘は更に激しいものになっていっていたと思います。
 しかし、「黄金時代」を築く為には、それを得るだけの「代償」を払わなければならないもの。Elizabethがその「代償」を払う生き様に、「黄金時代」の到来を予感させる凄さというか逞しさを見出した気がします。

  そんな孤高の女王Elizabeth一世を演じきったCate Blanchett!もう彼女の存在に尽きます。本当にあの時代の人のような古風さと優美さを兼ね備えながら、女性とは思えない「男」のような表情や言動 も自然に垣間見せ、正にElizabeth一世そのものでした。あれだけド派手で美し過ぎる衣装を身に纏っていても、彼女自身の美しさは神々しいまでに輝 いているし、「これほどの女性なら、ここまでやってのけただろう」と思わせるほどの説得力が彼女にありました。ホントに同じ人間とは思えません。

 内容的には暗殺問題、宗教問題、愛憎劇、悲恋などなど盛りだくさんなんですが、色んな要素が詰め込み過ぎていて、それぞれの人物描写の掘り下げが物足りなくも感じたし、判り難い描写もありましたが、全てを超越したCate Blanchettは一見の価値大アリです。
 もう女性は彼女に憧れるというか惚れてたくなるような感じです。反対に、男性は「女にここまでされたら俺達立場無い」って思ってしまうでしょうけどね(笑)。





【注意】以下、ネタバレを含んだ感想になります。



 この話はスペインとの戦いが軸になっていますが、もう一つ、新大陸アメリカから帰還した男Walter Raleighに想い寄せるElizabethの儚い恋心も描かれています。
  しかし、Elizabethの存在感が圧倒的過ぎてWalter Raleighがあまり魅力的に感じなかった。Elizabethに恋をする…とみせかけておいて、彼女の待女と結ばれてしまうので、所詮二股男だったの では?と見えてしまったり(酷)。演じたClive Owenは十分カッコいいんですけど、やはり男前なCate Blanchettの前だと霞んでしまいますなぁ。前作のJoseph Fiennesもそうだったな…。

 結局、誰もがElizabethを 「女王」として見ていて、誰も「女」として見てはくれないという悲しい現実を、Elizabeth自身が改めて受け入れるという話でもあったのかも…。 Elizabethが見合い相手に「彼らと私の間には見えないガラスがあるの」と言うシーンや、Walterと待女にダンスをさせて自分がWalterと 一緒に踊っている気分やダンスを楽しんでいた少女時代に思いをは馳せているシーンや、Walterにキスをせがむシーンは切なかった。

 幽閉されていたスコットランドの女王Mary Stuartを演じたSamantha Mortonも、出番こそは少ないですが抜群の存在感でした。特に、スペインの裏切りを知った時のシーンとか、処刑される時の凛とした姿が素晴らしかった。
  Mary StuartはElizabethが暗殺されてば自分が英国女王を継承できると信じ、スペインの密偵と文書を何度も交わしますが、スペイン側が暗殺者にわ ざと空砲銃を撃たせて暗殺を未遂にしたことで、Elizabethは彼女に命を狙われていたそみなされ処刑されてしまった悲劇の女性。ただ、スペインに英 国に大戦をしかける道具として利用されたと気付きながらも、潔く死んでいく姿はもう一人の誇り高き女王そのものでした。

 つくづく、この作品は戦う女王の物語なんだな…と感じました。

 あと、Elizabethの側にずっと立ち続けていたFrancis Walsinghamが、大戦の後に病に倒れ死を迎えることで、彼女の代わりに冷酷な行動を続けていた彼の役目も終わり、穏やかな時代の幕開けになるのだとも感じました。




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