■FIREWALL〜ファイアーウォール |
今年で64歳を迎えるハリソン・フォードが3年ぶりに主演したサスペンス・アクション作品。しかも、演じる役柄は銀行のセキュリティーシステムのエキスパートというハイテクに強いキャラクター。あのハリソン・フォードがそんな役柄に挑戦するだなんて時代を感じてしまった。 舞台は現代のシアトル、業界最高のコンピュータのセキュリティーシステムを考案し、名実共にその銀行でもトップクラスの専門の腕を持つジャックは、ある日、見に覚えのないギャンブルの借金を負わされていることを知る。やがて、それが強盗集団の罠であると気付くが、その時は既に愛する家族を人質にとられてしまっていた時だった。強盗集団のリーダー格のコックスは、ジャックに家族の無事に返して欲しければ、自ら作ったセキュリティーシステムに忍び込みんで1億ドルをネット上で強奪しろと脅してきた。なんとか彼らから家族を取り返そうとするジャックだったが、冷酷な男コックスは家族に危害を与えることを厭わないタイプであり、ジャックは苦境に立たされるのであった。 という内容です。メガバンクのセキュリティーシステムはハッカーでもそんな簡単に不正アクセスすることなんて出来ないけど、そのセキュリティーシステムを組み上げた人間なら出来るだろう…という強盗グループの考えはさすが。しかも、本来ならとんとん拍子でジャックもハッキングできたものの、タイミング悪く他の銀行と合併することになり、管理サーバーが移動してしまって、想定した以上にハッキングが難しい状況に陥ってしまい、家族の無事とセキュリティー突破の板ばさみになってしまうジャックの立場は、観ていてハラハラしました。 インターネット用語の「ファイヤーウォール」という言葉がタイトルになっているだけに、パソコンの専門用語がたくさん出てきて物語を判り難くさせるかと思っていたけど、さすがハリソン主演の作品なだけに、難しい専門用語を使いつつも行動で「見せている」感じだったので、判り易い展開でしたね。 ハリソン演じるジャックの緊迫感溢れる状況をより鮮明に演出していたのは、ポール・ベタニー演じる強盗犯コックスの存在。パッと身と言葉遣いは紳士的でありながら、平気で使えない部下を射殺したり、アーモンドのアレルギーがあるジャックの息子に「アーモンドは入っていないよ」と嘘を吐いてアーモンド入りのクッキーを食べさせたり、その冷酷さが際立っていました。堂々とジャックの銀行に顔を出し、ジャックの行動を随時見張っている姿は、やり手の取引先の社員にしか見えないものの、いつ素性を表すか判らない緊張感もあり、ジャックや家族がどれだけ追い詰められているか、コックスの姿を見ていれば判るという感じでした。 窮地に追い詰められたジャックが思いつたハッキングの方法は、家庭用FAXのスキャナと娘のi-podを利用したものだったけど、私にはそういう専門知識が備わってないのでどれだけ凄い閃きかはピンとこなかった(笑)。でも、この方法で本当に出来たりするのかな?最高峰のセキュリティーシステムが、家庭用の機器を利用してハッキングできちゃうというのはかなり皮肉ですな。 コックスの指示通り、高額の口座を複数彼の海外口座に送金したジャックだったが、彼らが自分達を解放せずに後始末をするに決まっていると察したジャックは反撃に転じます。自分を見張っていたコックスの仲間を倒し、かつての部下に協力してもらって、コックスのネットバンキングにアクセスして彼にに送金した金を全て引き出してしまい、「金を返して欲しければ家族を返せ!」と要求。そして、家族と共に連れ去られた犬の首輪にGPS機能が付いていることを思い出したジャックは、それによってコックス達の場所を逆探知。後は、もう60歳超えのハリソンが体を張って戦いまくりました。 物語後半のジャックが反撃の糸口を掴んだ後の展開は、ハリソン・フォード作品にありがちの王道の展開でしたが、銃を乱射というものではなく、殴り合いがメインで、本当にヨレヨレになりながらも戦うハリソンの姿に思いっきり実年齢を重ねてしまいます。コックスを倒し、フラフラになりながら家族の元へ向かうジャックは、もやはハリソンの演技ではなかったかも…。ちなみに、一緒に観た友達は、あまりにも体を張っているハリソンの姿に泣けてきたとか。それぐらい頑張っていました。 観終わってみればありがちな話ではありましたが、セキュリティーシステムの盲点を突いたサスペンス調のやり取りは非常に見応えがありました。劇中でコックスが言っていたけど、重い大量の札束を盗もうとするよりも、それと同等の金額をネットから引き出してしまった方が簡単なんですよね。1億ドル単位が数秒で口座を行き来してしまう光景には、ネットバンキングの便利性と危険性を見た気がしました。 …で、こっからミーハー語り。 先にも書いたけど、あのハリソン・フォードがセキュリティーシステムの専門家というのが違和感ありまくりだったんですが(だって、ハリソン世代が一番ネットについて疎かったりするじゃないですか)、いざ観始めてしまうと違和感がないんですよね。軽やかにブライダルタッチを披露するハリソンとか、ハッキング方法をコックスに説明する姿とか、ノートパソコン持っている姿とか、意外に見慣れてしまうものです(笑)。 しかし、「ジャック」と聞くと、ハリソンの場合は「ジャック・ライアン」シリーズを思い出させますね。あのキャラクターも正義感溢れた役柄だったので、ハリソンが好んで演じるキャラというのが非常に判り易いです。だからこそ、観客に「ハリソンならこういう話になるだろう」という、安心感にも似た結末を期待して観るのかもしれない。だから、最後はありきたりの展開になっても、「まぁまぁ面白かったな」と思えるのかも。 しかし、最後のアクションシーンは本当にヨレヨレになっていた気がするんだけど。これで『インディー・ジョーンズ4』を撮影できるのかな?アクション系は若手俳優に任せて、隠居的な存在になるのかなぁ。あのハリソンがそういう立場に甘んじるとは考え難いけど…・ あと、どうでもいいことなんだけど、ハリソンは家庭を持った役柄が多いけど、どうして子供が毎回「孫じゃないかい?」と思うくらい若い子供なんだろう。ジャックがどういう年齢設定なのか知らないけど、息子の年齢は孫と勘違いしそうだったわ(笑)。 悪役コックスを演じたポール・ベタニーの存在は際立っていましたね。喋り方が紳士的で優しい分、その反動でとんでもない行為をする姿が恐い。パッと見はハリソンよりもイイ人ぽく見えるくらい(笑)。料理も得意そうだったもんなぁ。それだけに、目的遂行の為なら手段を選ばない姿には、ジャックの家族の誰かは殺されてしまんじゃないか…て危機感を覚えるくらいでした。 彼は『ダ・ヴィンチ・コード』にも出演しているし、これからの活躍が更に期待される役者さんの一人だよね。 それから、ジャックの息子役を演じたジミー・ベネット君は『ポセイドン』にも出演しているそうで、注目の子役なのかも。アーモンド入りにクッキーを食べて発作を起こしてしまった姿とか上手かったもんなぁ。 そうそう、コックスじゃないけど、娘のサラは可愛いと思います。 IT企業の発展に伴い、セキュリティーシステムというのは更に進化していくものなんだろうけど、逆に大事な財産や個人情報が簡単に流出しやすい状況になりつつあるのかな〜とも感じました。なんかネット上の高額なお金て、札束ほどの価値があるように思えないんだよね。あまりにも簡単に送金の行き来ができちゃってさ。あぶく銭のように見えてしまった。やっぱり、1円1円の重みを実感できる人間でいたいよなぁ。 あと、ジャックが最初にIDとパスワードを盗まれた原因は、個人情報が記載されている破れた書類をコックス達がゴミから見つけ出したから。セキュリティーシステムを立ち上げる人が、自分の個人情報の始末をお粗末にしちゃイカンよ。と、初っ端にツッコミ入れたくなったわ。ああいう書類は燃やすしかないね。 |