WAR OF THE WORLDS 〜宇宙戦争

 火星人の侵略を描いたH.G.ウェルズの作品を1953年に映画化し、そのれをリメイクしたのが今回の作品なんだそうです。私はこの原作を読んでいないし、1953年版の作品も観ていませんでした。ただ、スティーヴン・スピルバーグ監督とトム・クルーズの黄金コンビがSFパニック作品に挑んだ話題の作品という印象がある程度でした。あと、同時期に『STAR WARS ep 3』の公開があったので、どうしても比較対象になってしまうということもありました。私は、『宇宙戦争』を観る前に、先々行上映で『EP 3』を観ていたので、余計に比較してしまったということがあるかもしれません。そういうことが前提の感想だとご理解下さい。

 しかし、この映画が始まる前にピーター・ジャクソン監督の最新作『キングコング』のトレイラーが公開されたのですが、その作品の内容よりも、激痩せしたピーター・ジャクソンにビックリしました。雑誌とかに既に痩せた写真は載ってましたけど、動画で見ると全然違いますよね。「日本の皆さん、こんにちは。ピーター・ジャクソンです」て挨拶してくれなかったら、すぐに気付くことはありませんでしたよ。いや〜、キングコングvs恐竜の映像よりビックリでした。


 『宇宙戦争』の感想書きます。
 内容は、世界のあちこちで異常気象が頻繁に起きていたが、レイが住む街にも雷が28回も連続して落ちるという異様な現象が起きる。気になったレイは、落雷を見ていた息子のロビーに場所を聞き妹の傍にいるように言うと、その落雷現場に向かってみると街の多くの人々がそこに集まっていた。訳も分からずに戸惑っていると、その地面の下から奇妙な物音がし突然得体の知れないモノが現れ、建物を破壊し人々を殺戮しはじめたのだった。異常な事態を目の当たりにしたレイは、とにかく2人の子供を連れて別れた妻がいるボストンへ目指すが、この恐怖の現象は序章に過ぎなかった…。

 というエイリアンの来襲を描いたパニック大作です。100万年前に地球に目を付けていたエイリアンは、トライポッド(エイリアンの操縦する戦闘機)を地球に地中のあちこちに埋め込み侵略する機を待っていたらしく、世界のあちこちにテトラポットが現れ街や人々を破壊しまくっていくのです。圧倒的な強さを誇るトライポッドの攻撃に対して人間は成す術がなく、人々はパニック状態になって逃げ惑います。もうその映像は「さすがスピルバーグ!」と思うくらいド迫力もので圧倒されるんですが、それだけの盛り上がりを表現しておきながらラストのオチが思いっきりアッサリしています。新しいパターンだと言えばそうなんですが、観ている方としては「へっ?ここまで引っ張っておいてそういう終わり方?」とガックリきてしまいます。

 ラストを先に言うと、無敵の強さを誇っていたトライポッドですが、地球上の微生物がエイリアンの身体に合わずに自滅していってしまうのです。原作も火星人が地球上のウィルスに感染して全滅してしまうらしいですけど、リメイク作品だからということでオチを変える必要は無いと思いますが、表現方法というのはいくらでもあると思います。特に前半はCG満載の大迫力シーンを連発していたのに、最後は「何であれは倒れているんだ?」、「判らない。突然クルクル回って倒れた」と、人々は何故急に攻撃が止んで倒れていっているのか理解しないままエイリアンを倒していくのです。レイとレイチェルも妻のいる場所まで辿り着き、「あ〜、良かったね」ってなって、ナレーションが「微生物が身体に合わなかった」と説明して終わり。はいっ?肝心なオチをナレーションに説明させて終わり?こんなのアリ?って気分になりました。まぁ、『インディペンデンス・デイ』みたいに、人間がエイリアンの弱点を見つけてやっつけるというオチより斬新だし、人間は勝てなかったのだからリアリティはあるのかもしれないけど、「時間が無かったわけ?」と思うくらいな急展開で終わりました。

 この物語は一般庶民のレイの視点で描いているから、エイリアンがどうして微生物が合わなかったのかなんて表現は必要ないけど、あまりにもご都合主義なラストに、「イマイチな作品」という印象しか残りませんでした。「人間よりも遥かに知能の優れた生命体が存在」なんて冒頭のナレーションで言っているのに、数億年前から地球上に存在する微生物が自分達に合うか合わないかが調べられなかったなんてさ…。
 要は逃げていればエイリアンは地球上の摂理に適合できなくて自滅していく…てことなんでしょうけど、前半をあれだけ「見せた」んだから後半もそれなりの「見せ方」があったと思うんですけどね。あまりの惨状を目の当たりにして「どうなるのか見届けたい」と言って、レイの制止を振り切って軍隊と共にトライポッドに向かって行ったロビーが、レイ達よりも先にボストンに辿り着いて無事というのものね〜。しかも、妻のいたボストンは車こそは破壊されていたっぽいけど他は無傷で電気も点いていた。妻もその家族も疲労困憊した様子はなく無事で、レイ達は悪夢を見ていただけなの?とすら思ってしまいます。

 ただ、前半のエイリアンの奇襲攻撃は劇場で観るだけの価値がある映像です。その後の展開も、パニック状態に陥った人々が車の奪い合いで殺人を犯したり、レイも狂ってしまった仲間を殺してしまったり、極限状態に追い込まれた人間の心理を上手く表現しているシーンもあります。あのオチの表現の仕方に納得できるか出来ないかで、この作品の感想は随分違ってくると思います。ただ、前フリはあったんですよね。話の冒頭で、娘のレイチェルが手にトゲが刺さってしまった時に、「抜かなくちゃ」と言うレイに対して、「放っておけばいいのよ。身体に合わない物だから自然と身体がトゲを外に追い出していってくれるわ」って言うんだけど、これって手の平が地球でトゲがエイリアンということなんだよね。その辺は面白いな〜と思ったけど、重要な部分を全てナレーション任せにされるとね〜。ちょっと興ざめ。

 スピルバーグ監督は、「この作品は観終わった後に家族の大切さを痛感すると思う」みたいなことをインタビューで語っていたけど、そういうのはほとんど感じなかった。むしろ、「地球て地上に棲み付く存在をしっかり選んでいるんだな」と感じたけどね。




 …で、こっからツッコミ語り(笑)。

 トム・クルーズ演じるレイは、その自分勝手ぶりを妻に見限られ離婚されてしまう。たまに息子と娘たちに会わせてくれるけど、子供達も妻同様にレイには冷たいというか父親として認めてくれていない。そほどのダメ父親な男なんだけど、コンテナを1時間で40個も運べるほどの技術を持っていたり、機械には強い一面を持っているんだけど…ストーリー上大して活かされていなかった。
 でも、目の前で人々がエイリアンの攻撃を受け破壊され、その灰をかぶりまくって、「どうしたの?真っ白よ?」と子供達に指摘され、恐怖に駆られながら人間の灰を洗い落とす姿とか、緊急事態の最中なんとか子供達とコミュニケーションを取ろうとするが上手くいかないところとか、非常に人間味が溢れていて良かったです。

 ダコタ・ファニング演じるレイチェルは、10歳の幼い娘だけあって「信じられない光景」にパニック状態になってしまう様はリアリティがありました。どんなに親に「大人しくしろ」って言われても、目の前で訳のわからいモノが人間を殺していたり、死体がいっぱい川から流れてきたらパニックなるよね。それに、トライポッドに捕まってしまった以降は放心状態になってしまっていたのもリアリティあったし、そんな状態でもパパのトムを離さないようにしていた姿は印象的でした。

 ジェスティン・チャットウィンが演じた息子のロビーは、前半こそは妹のレイチェルを守ろうと必死な姿を見せるけど、「どうなるのか見届けたい」と行ってトライポッドに向かって行ってしまってから物語からフェードアウト。そして、最後の最後になって母親の実家に先に着いていて無事な姿で再び登場するというウルトラDぶり。お前はエイリアンに向かったんではなく、ボストンに向かっていたんかい!とツッコミたい。しかも、群衆に車奪われた時は殴られてボロボロになっていたのに、この時は無傷というのリアリティ無し。むしろ、最初から息子の存在は無い設定でも良かったんじゃないか?とすら思ってしまった。

 ティム・ロビンスが演じた謎の男は家族をエイリアンに殺されてしまって狂気がかっていて良かったんだけど、「もうエイリアンを殺すしかない!」と思い込んでいるだけに、「レイチェルは死なせたくない!」と思っているレイと価値観が合わず、最終的にはレイに殺されてしまう悲しい存在だった。彼が「世界最強の国ですら、あのトライポッド相手にこのザマだ」って台詞は、今のアメリカ政権への皮肉が利いていたし、印象深い台詞でした。
 ただ、この小屋でのシーンて妙に長くて間延びした感じがした。エイリアンが偵察機(?)みたいなので小屋の中を偵察しに来たり、エイリアンそのものが偵察しに来たりと度々ピンチに陥るんだけど、見つけられずに隠れていられるというのは都合良過ぎるように感じた。人間より高い知能を持っているんなら、見た目じゃなくて体温測定器みたいなのを搭載してもおかしくないんじゃない?真横の古びた木の壁に身を潜めて見つからないっていうのもなぁ。あの小屋でのシーン全部カットしても、何の支障もないようにも感じたしね。

 「エイリアンの姿は劇場で観てのお楽しみ」になっていたけど、脚というか手がトータルで3本というのが奇抜くらいで、顔とかは『インディペンデンス・デイ』のエイリアンに似ていたように感じた。そんな「お楽しみ」にするほどの存在でもないような。むしろトライボッドが出現するシーンはどれも印象深かったけどね。でも、小屋の偵察に来た時に、人間の写真に興味示したりしていて好奇心は旺盛らしくて、ちょっと可愛く見えてしまった。あと、人間の血を吸い出して肥料として地上にばら撒いて独特の植物を育てるというのは、非常にグロテスクで恐ろしいんだけど、自分達の住みやすい土地にしようと開拓する気満々って姿に見えたわ。
 あと、「大阪では何体が倒したと聞いていいる。日本人ができるんだから、俺達にも何かできるはずだ」て台詞があって驚いた。ティム演じる謎の男の台詞だったので、本当のことなのか狂言だったのかは判らないけど、「何故に大阪?」と思ってしまった。ラストでエイリアンは地球の微生物が身体に合わなかったと判明したから、「たこ焼きとか食べちゃって食中毒でも起こしたのかな?」とまで思ってしまったよ(笑)。

 何よりツッコミどころは、「ほとんど無事なボストン」と「いつ来てたんだ?ロビー!」でしょう。エイリアンは局地的にトライポッドを埋め込んでいたみたいだね。レイはレイチェルを母親に再会させることができるだろうとは思っていたけど、あんななんともない姿で母親が登場するとは思っていなかったよ。しかも息子まで無事な姿で登場するし、あのシーンで今まで築き上げてきたエイリアンによる攻撃の恐怖や惨劇が一気にリアリティを無くしました。もったいないよぅ。

 そういえば、ナレーションを担当していたのがモーガン・フリーマンだったよ。エンドロール見て気付きましたけど、『ミリオンダラー・ベイベー』に、『バットマンビギンズ』、『ダニー・ザ・ドック』そして『宇宙戦争』と、出まくりだねっ。




 たぶん、先に『STAR WARS ep 3』を観ていなければ、ここまでラストに落胆しなかったかもしれないなぁ。『EP 3』の対抗馬のような存在で登場しなければ、そこそこ楽しめた作品だったかと思います。そういう意味では、色々と損しちゃっているかもね。ま、「イマイチだった」ということには変わりないんだけど…。


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