■STAR WARS EPISODE V REVENGE OF THE SITH 〜スター・ウォーズ・エピソード3−シスの復讐 |
1976年に公開された『スター・ウォーズ』から約30年の歳月を経て『エピソード3』の完結編が公開されました。旧3部作は「特別編」になってから観たので、昔っからの『スター・ウォーズ』ファンというわけではないんですが、「特別編」からハマってからシリーズは全部観ていたので、「何故アナキンがダース・ベイダーになってしまったのか?」という完結編は是が非でも劇場で観たいっ!と思っていまして、思わず先々行上映を観に行ってしまいました。 物語は当然のことながら『エピソード2』から続いていて、観客は旧3部作の内容も把握しているということが条件になっています。最終的にアナキンは暗黒面に堕ちてダース・ベイダーになってしまうというのを判っているからこそ、この物語の冒頭からアナキンの一挙一動に目が離せなくなってしまうのです。 分離主義者のドゥークー伯爵とグリーバース将軍に共和国の最高議長であるパルパティーンが誘拐され、二人のジェダイ…オビ=ワン・ケノービとアナキン・スカイウォーカーが救出に向かった。アナキンの活躍で無事パルパティーン最高議長を救出し、アナキンは彼から厚い信頼を得るが、同時に決して自分をジェダイ・マスターとして認めてくれないジェダイ評議会には不信を抱くようになっていた。そして、アナキンの一番の不安は、自分の子供を妊娠したパドメが出産時に死んでしまうという予知夢を見てしまったこだった。以前、母の死の予知夢を見てその通りになってしまった事実があるだけに、パドメと子供の命だけは絶対に守らなければならないと決意し、パルパティーンから「フォースの暗黒面を学べば死から救える。ただし、これはジェダイからは学べないことだ」と言われ、どんどんとパルパティーンの思惑に嵌っていくのだった。 という内容で、冒頭でのアナキンとオビ=ワンの活躍を抜くと、アナキンはどんどんとジェダイに不信を抱くようになりジェダイらしからぬ行動をするようになっていきます。でも、それは「パドメと子供を救いたい」という一途な願いからくるもので、その「失いたくない存在」があるからこそ、それがそのまま「弱み」となりパルパティーンに付け込まれしまうのです。もう、ダース・ベイダーになってしまうと判っているだけに、「違うよ!アナキン!何で判らないんだ!バカーっ!」という気持ちになってしまいます。また、ジェダイの戦士としての実力は相当なものなのに、一向に自分をマスターと認めてくれない他のジェダイ達に反発を持っていて、自分の実力を評価してくれるパルパティーンに傾いてしまうというのも皮肉。他のジェダイ達はアナキンの精神的弱さを危惧してマスターとして認めていんかったんだろうけど、パルパティーンにとってはそこが付け入る隙であったということなんだな。 なんか心の弱い人が権力を持ってしまうと怖いよな…と感じた。アナキンは「常に自分は正しいことしている!」と信じ込んでいて、そんな自分を否定してくるジェダイに耳を貸さなくなっていってしまい、最終的にはパドメまで信じられなくなってしまう哀れさ。「自分が正しいのだから、自分が銀河を支配してしまえばいい」というのは、まさに独裁政権の指導者の姿。自分しか信じられなくなると、ここまで墜ちてしまうのか…と思って悲しかったです。見た目は立派な青年になったけど、中身はクワイ=ガンと出会った頃の子供のままだったのかな…。 また、銀河系統一の為に帝国を築き上げようとするパルパティーンの存在は、まさに独裁政権の幕開けでもあるんだけど、それはジェダイ評議会が発言力及び決定権を持ち過ぎてしまった不信感から元老院の多くも帝国誕生に賛成してしまうという背景も後押ししていて、「力を持ち過ぎる存在」に対して人は疑心暗鬼にいなってしまうんだなというのを痛感させられました。共和国が崩壊して帝国が誕生する過程が、某大統領の演説を彷彿させるという批評もあるけど、「歴史は繰り返す」じゃないけど、常に権力に取り憑かれた者は似たような行動をするってことだと感じました。だから、意識的に個人政権を批判しているようなニュアンスはなかったです。 シスの復活の気付き始めたジェダイはそれぞれ必死に共和国を守ろうとするんだけど、一番最初にシスの存在を目の当たりにしたアナキンが最終的にはシスを救いジェダイを裏切ってしまうというのがなんとも…。それが「パドメと子供の命を救いたい」という個人的な理由からだというのが切ない。ジェダイから暗黒面に堕ちてしまったアナキンは、ジェダイの抹殺を遂行するのですが、「パドメと子供の命を救いたい」という理由でありながら、幼いジェダイ達まで殺していってしまう矛盾さ。それがアナキンがジェダイマスターになれなかった理由なのかもしれません。 そして、一番の見せ場でもある、アナキンVSオビ=ワンの対決。誰も信じられなくなったアナキンは、パドメと共に自分を追ってきたオビ=ワンを見て「やはりオビ=ワンとパドメは恋仲で自分を裏切った!」と思い込みキレしまう。もうそのキレっぷりといったら、あれだけ守ろうとしたパドメを怒りのあまり殺そうとしてしまうくらい。そんなかつての弟子の哀れな姿を目の当たりしたオビ=ワンは、彼を救うよりも倒すことを決断するしか道はなく、「私の指導が間違っていた」と謝る姿が痛々しかった。 戦いのラストで、オビ=ワンに両足と片腕を斬られ溶岩の川に落ちかけたアナキンが、サイボーグ化した右腕だけで必死に這い上がってこようとする姿にはオビ=ワンじゃないけど悔しくて涙が出てきてしまいました。「お前は選ばれし者だったはずなのに…!」てオビ=ワンに言われて、すっごく恨みのこもった目で睨み付けながら這っているアナキンの姿はとても哀れであるんだけど、どうしてその力を善の方へ向けることができなかったのか…ホントに悲しくて仕方がなかったです。 更に悲劇は続き、アナキンの変わり果てた姿を目の当たりにしたパドメは生きる意志を失ってしまい、緊急手術で双子の子供を取り出した後に息を引き取ってしまう。「彼にはまだ善の心が残されている」という言葉をオビ=ワンに残して。そして同時に、焼け焦げた姿になったアナキンは、パルパティーンに救われ失ったパーツをサイボーグ化し、あの真っ黒な姿…ダース・ベイダーの姿に生まれ変わったのであった。そして、ダース・ベイダーとして復活して最初に発した言葉がパドメの安否。しかし、パルパティーンから自分の怒りの力によって死なせてしまったと伝えられ、その怒りと悲しみの衝撃から暗黒面に完全に堕ちてしまったアナキン。ダース・ベイダーとは、まさにアナキンの「心の弱さ」と「大切な者を失う恐怖」から生まれた悲しい存在だった。 ラストは生まれた双子がそれぞれの道を歩まされていく様を見せられ、「エピソード4」へ続いていくんだな…と少し希望のある終わり方でしたが、あの赤ん坊のルークが大人に成長しダース・ベイダーと対決するまで、アナキンは救われないのかと思うと、やはり悲しく感じてしまいました。作りかけの「デス・スター」を目の前にして、ダース・ベイダーになってしまったアナキンは何を思っていたんだろう?「もう、自分には銀河系を制覇する道しか残っていない」って確信していたのかなぁ。そういうことを考えちゃうと、ホントに希望が残されているとはいえ辛いラストでした。 …で、こっからキャラ語り。 ヘイデン・クリステンセンが演じたアナキン及びダース・ベイダーは、情緒不安定というか常に疑心暗鬼になってしまっている暗い青年の姿を体現していました。ただ気になったのは、ジョージ・ルーカス監督の演技指導だと思うんだけど、アナキンが怒りを表現する時は決まって下から睨み付けるような表情だったこと。怒りが全て同じ表情なの。怒っている!と判り易いけど、どれだけ怒っているのかが判り難かった。この表情でゾッとしたというか悲しく感じたのは、先にも書いたけどラストの片腕になっても必死に這ってこようとしたシーン。あの表情に全てが集約されていたのかもしれない。 ユアン・マクレガーが演じたオビ=ワンはこの『エピソード3』で一番活躍した存在かもしれない。とにかく戦っていました。特に、単独でグリーバス将軍が占拠するウータパウに乗り込んで行った時はカッコよかったぁ!また、アナキンがシスの弟子になってしまったのを目の当たりにした時も「信じたくない!」と崩れながらも、ムスタファーでアナキンとの死闘を決意する様が切ない。彼と共に居るときのアナキンは立派なジェダイの騎士だっただけに、自分が目を離したばかりに、パドメと恋仲になり結婚してしまったり、暗黒面に堕ちてしまったりしたと自分を責めていそうだった。だからこそ、あの死闘の中で「指導が悪かった」とアナキンに謝ったんだろうなぁ。 ナタリー・ポートマン演じたパドメは、思っていたよりも存在が薄かったような気がしました。アナキンのことを常に心配しながら待っている妻という感じで、エピソード1,2のような「強さ」はあまり感じられなかった。それだけ、アナキンとの愛に溺れてしまっていたということなんだろうけどね。ただ、妊娠を誰にも悟られなかったというのは、かなり無理があったように感じたぞ。 イアン・マクダーミド演じたパルパティーン及びダース・しディアスは圧倒的な存在でした。特にパルパティーンの時は、アナキンに甘い言葉を囁く囁く。場合によっては正しいことも言っていたので、アナキンが傾倒してしまうのも無理ないかと。また、アナキンは父親の存在を知らなかったから、無意識に自分に父親像を重ねてくるアナキンの心理を巧みに利用していたように見えました。あと、意外と言っては失礼ですが、殺陣が凄かった! そして、CG技術の発達により(笑)どんどんリアリティを増していくヨーダ。特に今回は表情豊かだった。チューバッカを含むウーキーと仲が良いという新事実も明らかになりましたが、そのチューバッカ達とヨーダの別れのシーンが、『E..T.』のエリオットとE..T.の別れのシーンと被りました(笑)。あと、『エピソード2』に続き戦っても強い!ヨーダが見られて嬉しかった。力が及ばなかったことをすぐ認める潔さも、実力者だからこその言葉だけに重かった。表情豊かといえば、パドメが息を引き取った姿を見て、ガラス越しに悲しむ姿にはグッときてしまった。 今回は大活躍だったR2-D2でしたが、ホントに意外に強くてビックリ。あと、何気にギャグ担当でした。C-3POは(字幕では「3PO」になってたな…/汗)、常にパドメに付いていたのでR2-D2とのやり取りはほとんどなかったんだけど、パドメに付いていたことで彼女の妊娠や双子を生んだということも知ってしまい、オビ=ワン達の指示によって記憶を消されてしまったのがなんとも…。『エピソード4』以降ではパドメやアナキンのことはもちろん、ダース・ベイダーに自分は作られた…ってことも忘れちゃったんだよね。ちょっと切ないな。 …他にもキャラ語りしたいけど、こんな感じかな?ツッコミどころといえば、アナキンとパドメの仲を誰も疑わなかったというか気付かなかったって、コルサントてかなりのんびりしていたのね…とか思ってしまいました。それだけ、「ジェダイは恋をしない」というのが当たり前のことだったんだろうけどね。あと、いくら不意打ちだったとはいえ、ヨーダ、オビ=ワン、メイス以外のジェダイがアッサリ殺され過ぎだと思ってしまった。 『EP 2』を観終わった直後は、「こんなので上手く完結できるのか?」って不安にすら思ったんだけど、さすがジョージ・ルーカス監督。ダース・ベイダーがどういう存在なのかをアナキンの心理面を中心に表現していき、上手く『EP 4』に繋げていきました。この新3部作を観ることで、旧3部作の印象やダース・ベイダーのイメージが変わってしまっただんて凄いことですよっ! 正直言うと、旧3部作の特別編が当たったから新3部作を作ったんじゃないかと思っていた時もあったんですが、「おみそれしました」とジョージ・ルーカスに平伏したい気持ちです。 全6シリーズを観て、この『STAR WARS』が映画界の中で一つの作品を飛び越え、一つの文化になってしまっていることを改めて痛感しました。ツッコミ甲斐のあるシーンも多いし(笑)、なんだかんだ言ってハマッてしまっている世界です。 |