交渉人 真下正義〜NEGOTIATOR MASHITA MASAYOSHI〜

 あのドラマや映画で大ヒットを記録した『踊る大捜査線』のスピンオフ。前作『踊る大捜査線 THE MOVIE 2〜レインボーブリッジを封鎖せよ』から、日本初の交渉人となった真下正義を主役に物語が展開していきます。

 物語は、あの「レインボーブリッジを封鎖せよ!」の事件から1年後のクリスマスイヴ。日本初の交渉人となってマスコミからも注目度が高くなった真下へ、謎の人物から挑戦状とも取れる脅迫状が送りつけられる。それは、地下鉄の最新鋭実験車両(通称:クモ) が一両ジャックされ、首都圏に張り巡らされた地下鉄路線を縦横無尽に走りまくり、クリスマスイヴでごった返すホームや他の地下鉄車両の乗客達200万人を恐怖に陥れるテロとも捉えられる大事件へ発展していってしまった。急遽、警視庁から呼び出された真下は、姿の見えない犯人と「声」だけの対決することになる。

 多少強引な展開もあるし、犯人が判明した時に物凄いどんでん返しがあるけど、それにフォローに説得力がなかったりと、詰めの部分で甘いところは多々ありましたが、そういう部分を吹っ飛ばすくらいの展開の良さと心地よい緊張感がありました。もともと真下が頼りない顔をしているせいか、テキパキと犯人の暗号や謎掛けを解読していって指示を出す姿に「おおっ!」と感動すら覚えてしまう痛快さがありました。
 まぁ、しょうがないことなのかもしれないけど、地下鉄パニックシーンは尼崎の脱線事故を連想させて見ていて辛いシーンでもありましたが、それ以外はまさに娯楽大作の王道を突き進んでいました。


 犯人の実の狙いは、身代金でもなければ、地下鉄に乗り合わせた200万人の命を奪う凶悪犯行でもなく、「日本初の交渉人です」とマスコミで自分を宣伝した真下自身の命だったというのがちょっと怖かった。テレビに真下が映っていたのを見て、「俺の方が彼より上だ!」と思い込んだのかね〜。実際にこういう人間が居そうだもんね。
 正直言って、犯人が実は8年前に死んでいたというオチは意外過ぎでした。でも、真下と対決していた犯人は確実に存在していたわけで、それが誰だったのかは明確にせず終わりました。その辺が消化不良というか、個人的にはハッキリさせて欲しかったというのもありますが、もともと犯人のオチというか存在が弱いのが『踊る〜』の映画シリーズの共通点でもあるので、目を瞑ってもいいかなとも思いますが…。<偉そう

 見えない犯人との交渉が物語りの軸になっていて、地下鉄が一車両ジャックされて縦横無尽に走りまくり、いつ他の車両に衝突して爆発するかもしれない…という恐怖が緊張感にも繋がっていくのですが、テンポが良いのと適度なコメディタッチもあり、ハラハラドキドキするというよりもワクワクしながら観れる雰囲気がこの作品にはありました。だから、観終わった後にドッと疲労感を覚えることもなく、「へ〜ぇ」って感じで見終われました。
 何より『踊る〜』のスピンオフでありながら、このシリーズを観ていなくても十分に面白さが堪能できるストーリー展開には恐れ入りました。もちろん、シリーズを観ていた方が色々と楽しめる小ネタも満載でしたけど、設定をシリーズに頼りきっていないところが「さすが!」と思ってしましました。

 でもさ、今の日本の警察に真下や木島のような人が居て欲しいよ。それは切に感じたなぁ。




 …で、本来だと、こっからミーハー語りというかツッコミかな?

 ハッキリ言ってユースケ演じる真下はカッコいいです。カッコつけ過ぎてもいなく、淡々と犯人と駆け引きをしていく様がカッコいい。『踊る大捜査線』シリーズでは三枚目路線というか、かなり無碍な扱いを受けてきた真下でしたが、この作品を見れば、真下が青島を抜いて出世したのは親の力だけではない!と納得できます。

 また、脇が渋い。真下の交渉のやり取りに「部外者は引っ込んでろ!」と最初は協力的でなかった國村隼さん演じる地下鉄の総合指令長の片岡さんがいいのだっ!堅物な一面、お母様(なんと八千草薫さん!)とクラシックコンサートを観に行く約束をしていたりと可愛らしいところもあったり、最終的に真下を信頼してく姿とかジーンときました。この人の存在が、物語をグッとシリアスにしていたと思います。あと、どう考えても他局のドラマ『富豪刑事』からの出張としか思えない(笑)寺島進さん演じるヤクザのような木島刑事の存在も面白かった。この人が悪態吐いている間は犯人に負けることなんてない!って思えるくらい、妙に頼りがいのある存在でした。
 あと個人的には、高杉亘さん演じるSWATの草壁中隊長もしっかり出番があって嬉しかったわ。ご贔屓のキャラなのよっ♪それに、松重豊さんが爆発処理班の班長で登場していたのも嬉しかった。この2人がこの作品のご贔屓キャラになりました。

 それから、かなり笑ったのが指揮者役で登場していた西村雅彦さん。台詞が一言もなくて、ただ「ボレロ」の指揮をしているだけなんですけど、何故かスクリーンに映るだけで笑いが込み上げてくる存在感があります。爆弾が仕掛けられている会場で演奏されているだけに、緊張感がピークに達するはずなんですけど、観ていて笑えちゃうってある意味凄いです。

 強引な展開だと先にも書きましたが、あれだけ地下鉄内がパニックになっているのに、いくら報道規制を敷いているとはいえ、テレビで「地下鉄のダイヤが乱れている」程度しか報道されないのは無理あるし、通称クモはもっと簡単に発見できそうな気がしないでもないし、クリスマスイヴで人や車がごった返しているのに、木島刑事達の車が全然渋滞に巻き込まれていなかったり、どうして犯人が真下のチケットの座席まで知っていたのか?とか、まだまだツッコミたいところはあります。でも、そういうご都合主義な展開も受け入れられちゃうくらい、ストーリーやキャラクターが魅力的なんですよね。だから、作品に「重み」というのはあまりないんですが、爽快感や痛快さはグンを抜いていると思います。

 そういえば、あの未来型の特別車両のクモ…『ガンダム』のザクに見えてしまってしょうがなかったんだけど(笑)。赤く点滅するところは『ナイトライダー』を連想させたわ。なかなかカッコよかったので、最後SWATに破壊されて残念だったわ。




 そして、エンディングのスタッフロールが終わった後に『容疑者 室井慎次』の予告が!『真下〜』では登場しなかったスリーアミーゴズまで登場しましたよ!彼らは相変わらずのテンションでしたが、室井さんの方は『真下〜』と違い、グッとシリアスな展開になりそうだ。く〜っ、この引っ張り方、ズルイよなぁ。

 


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