CHARLIE AND THE CHOCOLATE FACTORY 〜チャーリーとチョコレート工場

 イギリスでは『ハリー・ポッター』、『指輪物語』に次いで「子供が好きな本」にランクインされたロアルド・ダール原作『チョコレート工場の秘密』を映画化したこの作品。その上、監督が奇才ティム・バートンで主演がジョニー・デップとくれば、「面白くないわけがない!」と思ってしまう。ティムとジョニーのコンビは、『シザーハンズ』、『エド・ウッド』、『スリーピーホロウ』と既に3作品を作り上げていて、そのどれもが個性が光る素晴らしい作品。例え、今回の作品が「児童書」に分類される原作であるとしても、このコンビが「子供向き」の作品にするわけがないっ!と、妙な期待までしてしまいました。


 そして、試写会と公開後劇場でと2回鑑賞したんですが、OPから「ティム・バートン・ワールド全開!」、「奇人変人ウィリアム・ウォンカー最高!」、「うぉ!ウンパ・ルンパだっ!」と興奮しまくりで、もうホントに最高に面白かったです。さすがティム&ジョニーコンビだけに、奇抜な映像美&ブラックジョーク満載というか、シュールです。ホントに!かなり毒々しい部分もあちこちに散りばめられているんですが、そこをチャーリー演じるフレディー・ハイモアが良い感じで中和してくれていまして、非常に病みつきになる作品だと感じました。

 話は、貧しいながらも家族と幸せに暮らすチャーリーが、謎の工場長であるウィリー・ウォンカが世界に5枚だけ発行した「チョコレート工場に招待するゴールデンチケット」を幸運にも手に入れ、憧れのチョコレート工場の見学に他の4人の子供達と共に行った。しかし、工場の中は想像絶するものばかりで、次々とチャーリー達に衝撃を与えていったが、次々と子供達は姿を消し、最後に一人残ったチャーリーは、子供達を工場に招待したウォンカの真の目的を知る…

 といった感じの内容で、とにかくチャーリー以外の選ばれた子供達が「嫌な奴」ばかり。食い意地の張った少年、お金持ちの超我侭な少女、勝つことに執着する自称勝ち組少女、とにかく計算高いゲームおたくの少年。こんな子供達ばかりだから、ウォンカの忠告(?)を無視して好き勝手に行動し、自業自得状態に陥ってしまう姿は「可哀想」と思うより「ザマーミロ」な感じなので、見ていて非常に笑える。たぶん、笑ってしまっている時点でかなりブラックなんだろう。
 加えて、ウォンカの愛すべき工場の従業員達のウンパ・ルンパ。全員同じ顔でインパクトありまくりなのに、ことある毎に登場して歌を歌いその場を盛り上げていく。その様は、まるでディズニーのミュージカル作品に通じるんだけど、歌っている内容は超ブラック。このギャップがたまりません。

 そして、何と言ってもジョニー・デップ演じるウォンカさんは凄い。白塗り+パープルのカラーコンタクトにおかっぱヘアをしたジョニーは、素顔とまるで違う雰囲気なので、実年齢がサッパリ判らない外見になっていた。ジョニーといえばジョニーだし、ジョニーじゃないと言えばジョニーじゃない人に見えてきてしまう。高めの声も、不気味に微笑む表情で固まった顔も、何を考えているか判らないウォンカを見事に表現していた。ジョニー・デップじゃなければ、ここまで演じられなかっただろうと唸らされてしまいます。一歩間違えると「B級のコメディー作品」になってしまうところを、ギリギリのところで演じきっているように感じました。

 子供向けの作品のようでありながら、我がままで自分勝手な子供達へ「ザマーミロ」という教訓めいた展開になりつつも、どこか温かみのある作品になっているのは、原作には無いウォンカの過去(父親との確執)にも触れているからかもしれない。厳格な歯科医の父は「甘いお菓子は歯の敵」としていて、息子のウィリーに一切にお菓子を与えなかったけど、ウィリーはこっそり食べたチョコレートの味に感動し、それからお菓子に夢中になり、父親の反対を押し切ってお菓子作りの旅に出て、数年後に世界でも有名なチョコレート工場を設立するまでになった。だから、ウォンカさんは子供達に幼少時代のことを触れられると、一瞬だけ昔にフィードバックしてしまったり、「両親」という言葉が言えなかったりと、かなり偏った性格に育ってしまっていて、家族の愛情に包まれて育ったチャーリーとは対極の環境なのである。2人の家庭環境の違いをハッキリ演出しているだけに、ラストの展開にはジーンとくるものがあったのかもしれない。

 ウォンカさんは一人勝ち残った(?)チャーリーに、「僕の工場を君に継いでほしい」と頼むが、「家族を一緒に連れて行けないのなら行かない」と拒否され衝撃を受ける。「まさか断られるなんて思ってもいなかった」、「僕は家族がいなかったからここまで成功できた」とチャーリーに訴えたウォンカさんは、かなり寂しい人に見えました。その後、自分が何をしたらいいか判らなくなったウォンカさんは、再びチャーリーに会いに行き、「父親と仲直りすべき」と助言されれ、チャーリーと共に父親の元に行き、自分が家出をした後もずーっと心配してくれていたことを知り、ウォンカさんはチャーリーと同じく家族の温かさというものを実感してハッピーエンド…となるわけです。
 チャーリーはもともと心の優しい良い子だったし、大変な目に遭った子供達はこれといって反省しているようには見えなかったし、「家族の大切さ」を痛感したウォンカさんがこの物語で一番成長したのかしら?




 …で、こっからミーハー語り。

 ウォンカさんがチョコレート工場をオープンさせたテープカットのシーン。ジョニーがハサミを持って大袈裟にポーズを決めた姿は、正に『シザーハンズ』のエドワード・シザーハンズだっ!

 超ボロ家に暮らすチャーリーの家族。雪が降り積もる寒い季節なのに、チャーリーの部屋の屋根裏には穴が開いていて、それが窓代わりになっている。な、なんて寒さに強い子なんだっ。

 チャーリー以外の4人の子供達は超生意気な子ばかりだけど、可愛い子ばかりでもある。特に勝ち組を自称するガム噛み噛み少女のヴァイオレットは美人ちゃんだ〜っ。5年後くらいには、かなりの美人さんになってそう♪

 チャーリーくんのおじいちゃん達とおばあちゃん達が最高っ!特にチャーリーと一緒に工場見学に行ったジョーおじいちゃんが嬉しさのあまりダンスしちゃうシーンがツボ。4人合わせて約400歳なのに(つまり全員90歳台)元気元気。ブラックな発言もするけど、おじいちゃん達とおばあちゃん達は基本的に良いこと言ってくれる。特に、チャーリーが最後のゴールデンチケットを当てても、「50ドル出すって人がいた。ウチはお金がないんでしょう?だから誰かに譲るよ」て一旦は行くことを諦めてお金に変えることを優先させるんだけど、おじいちゃんが「お金なんて毎日何万枚と印刷されているんだ。だけど、このチケットは世界に5枚しか発券されていないんだぞ。どっちが価値があると思う?」と言って、説得するとこなんて好きだな。

 ウォンカさんがみんなの前に登場するシーンが最高。お出迎え人形が燃えてかなり酷い場面になっちゃっている所に、「いやーっ!最高の演出だね〜っ♪」と大ハシャギで皆の隣に居る。かなり神出鬼没な感じ。

 工場の愛すべき従業員のウンパ・ルンパは最高。とても背の小さい人達だけど、み〜んな同じ顔っ!この一族とウォンカが初対面したエピソードも最高。潰された芋虫を我慢して食べるウォンカさんがメチャツボ。もう、ウォンカさんとウンパ・ルンパのやり取りはどのシーンも面白い。しかも、ウンパ・ルンパは歌って踊れるので、いきなりミュージカルのようになるところ凄い。そんな場面になっても、ノリノリなのはウォンかさんだけだったけど(笑)。
 ウンパ・ルンパは工場内のチョコ職人やら、秘書やら、心理カウンセラーやら、美容師やら、ミュージシャンやらアナウンサーやら…いろんな職業に就いていたけど、全てインパクトありまくりだった。そうそう、ナレーションも実はウンパ・ルンパだったというラストのオチは好きよっ。

 ディスニーのアトラクションになりそうな工場内部はどこも奇抜で斬新だったけど、リスがくるみを割っているシーンは凄い。ホンモノのリスを半年かけて訓練させたそうだけど、仕草が本当に可愛いんだわ。だけど、行動はシビアで、「私もリスが欲しい!」とお金持ちの我がまま少女が勝手にフロアに降りてリスを捕まえようとしたら、逆にリス達に捕まり中身(脳)が空っぽと判断されてゴミ箱へ捨てられちゃうなんて…爽快!な展開だったね〜。<えっ?

 チョコレートをテレポーテーションさせる実験で、堂々と『2001年宇宙の旅』のテーマソングが流れて笑ったわ。こういう遊び心はさすがティム・バートンだね。

 チョコレート工場内にあるエレベーターは縦横斜と縦横無尽に移動が可能で、しまいには外に飛び出して空飛んじゃうという優れモノ。だけど、オールガラス張りなので、ドアに気付かずに何度も体当たりして倒れるウォンカさん、最高っ!いや〜、あの演技はジョニー・デップならではよんっ♪ちなみに、工場を一時閉鎖してからウォンカさんが外に出たのは、この時が初めてになる。

 ウィリー・ウォンカさんの父親役は、なんとクリストファー・リー様。こ、濃いです。数十年ぶりに再会したウィリアムをすぐに息子と気付かなかったんだけど、歯並びで気付くところが非常にツボ。しかも、お互い戸惑いながら(照れながら)抱き合うシーンは、ちょっとジーンときてしまった。奇抜な言動で暴走していたウォンカさんが、唯一「人間らしい」というか「子供らしい」仕草をしていました。
 ちなみに、感動の再会をした父子のシーンで、リー様演じる父親が「フロスはしているか?」て聞いて、「はい、毎日欠かさず」てウィリーが答えて抱きっ!てなるんですが、最初「フロス」の意味が判らなくてこのオチそのものの意味が判らなかったんだけど、別名「糸ようじ」のことだったんですね!ウォンカさんはチョコレート(お菓子)の工場長だけど、虫歯は1本もない完璧な歯さ☆というのは、父親の意見をちゃ〜んと守り続けた証拠でもあるのよね。

 …なんか、語りきれないくらいお気に入りのシーンがあるんだけど、厳選するとこんな感じかな?あと、いつも強烈な個性を発揮するヘレナ=ボトム・カーターが貧しいながらも健気な母親役を自然に演じていていて意外でした。彼女もティム作品は3作目だけど、一番フツーの役だったね。




 とにかく、一度観たらそう簡単には忘れられないインパクトありまくりの作品。原作は小学生の頃に1回読んだけど大して覚えていないんだが、この作品はかなり原作に忠実らしい。もう1回、原作を読んでみようかな?ウォンカさんとパパとのシーンが無いだけらしいからね。

 OPからEDまでチョコというかお菓子が出まくりで、甘党の人は見終わった後にチョコが食べたくなり、甘党じゃない人は「しばらく甘いモンはいい…」と思うんじゃないでしょうか?私は後者でしたが…。さすがティム・バートンは期待を裏切らない人でした。
 ティム・バートン監督作品が好きな人や、奇抜なジョニーが大好きな人は観なきゃ損しちゃう作品だねっ!



←BACK